公認会計士事務所プライムパートナーズ
お問い合わせ

IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産」の適用範囲を徹底解説

2025-05-10
目次

IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」は、企業が売却や所有者への分配を予定している資産の会計処理を定めた重要な基準です。本記事では、IFRS第5号の「2. 範囲(Scope)」に焦点を当て、適用対象となる資産の原則、流動資産への分類変更の禁止ルール、測定の適用除外項目、そして具体的なケーススタディを交えて詳細に解説いたします。

適用範囲の基本原則と対象

IFRS第5号の分類および表示の要求事項は、企業が認識したすべての非流動資産及び処分グループに適用されます。測定に関する要求事項についても原則として同様ですが、後述する特定の資産は測定の対象外となります(IFRS5.2)。

処分グループとは

企業は、複数の資産を直接関連する負債とともに、単一の取引で同時に処分することがあり、これを処分グループと呼びます。処分グループは、資金生成単位のグループ、単一の資金生成単位、または資金生成単位の一部で構成されます。このグループには、流動資産や流動負債、さらには本基準書の測定対象外となる資産も含め、企業のあらゆる資産および負債が含まれる可能性があります(IFRS5.4)。

本基準書の範囲に含まれる非流動資産が処分グループの一部である場合、測定の要求事項は当該グループ全体に対して適用され、グループ全体の帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定されます(IFRS5.4)。

所有者への分配目的保有

本基準書の分類、表示および測定の要求事項は、企業が所有者としての立場で行動する所有者に対して分配するために保有する非流動資産または処分グループ(所有者分配目的保有)にも適用されます(IFRS5.5A)。

流動資産への分類変更の禁止

IAS第1号「財務諸表の表示」に従って非流動に分類された資産は、IFRS第5号が定める売却目的保有に分類される厳格な要件を満たすまでは、流動資産として分類変更してはなりません。また、通常であれば非流動とみなされるクラスの資産で、転売のみを目的に取得したものについても、要件を満たさない限り流動資産への分類は禁止されています(IFRS5.3)。

なお、流動性表示に従って資産を分類する場合、非流動資産には報告期間後12か月を超える期間に回収が予想される金額が含まれており、本規定はそのような資産の分類について適用されます(IFRS5.2)。

分類変更制限の具体例(ケーススタディ)

企業が現在事業で使用している製造設備(非流動資産)を将来的に他社へ売却して処分しようと計画しているケースを想定します。現在はまだ設備を稼働させており、具体的な買手を探す積極的な活動に着手していないため、IFRS第5号の売却目的保有の要件を満たしていません。

この場合、経営者が「12か月以内に売却して現金化したい」という意図を持っていたとしても、この設備を貸借対照表上で流動資産に分類変更することは禁止されています。企業は要件を満たすその日まで、引き続き非流動資産として表示し、通常の減価償却を継続しなければなりません(IFRS5.3)。

測定に関する適用除外項目

IFRS第5号の分類や表示の規定はすべての非流動資産に適用されますが、測定規定については以下の資産には適用されません。これらは、個々の資産としても処分グループの一部としても、記載している各基準書に従った測定を継続する必要があります(IFRS5.5)。

適用される国際財務報告基準(IFRS) 測定の適用除外となる資産
IAS第12号「法人所得税」 繰延税金資産
IAS第19号「従業員給付」 従業員給付により生じる資産
IFRS第9号「金融商品」 範囲に含まれる金融資産
IAS第40号「投資不動産」 公正価値モデルに従って会計処理される投資不動産
IAS第41号「農業」 売却コスト控除後の公正価値で測定される農業関連の非流動資産
IFRS第17号「保険契約」 範囲に含まれる保険契約グループ

処分グループと測定除外の具体例(ケーススタディ)

企業がある不採算の事業部門(処分グループ)全体を他社に売却する確定契約を結び、売却目的保有の要件を満たしたとします。この処分グループには、事業用の建物(非流動資産)、棚卸資産(流動資産)、および得意先への売掛金(IFRS第9号の対象となる金融資産)が含まれています。

企業は、この処分グループ全体の帳簿価額と、売却コスト控除後の公正価値を比較し、低い方の金額で測定します(IFRS5.4)。しかし、処分グループ内の売掛金については、IFRS第5号の測定ルールの対象外です(IFRS5.5)。したがって、処分グループ全体の低価法による測定を行う前に、企業はまずIFRS第9号に従ってこの売掛金の評価(予想信用損失に基づく貸倒引当金の計上など)を事前に行っておく必要があります。

開示要求に関する範囲

IFRS第5号は、売却目的保有に分類された非流動資産(または処分グループ)や非継続事業について要求される開示を特定しています。他のIFRSにおける開示規定は、そのIFRSが売却目的保有資産や非継続事業に関する具体的な開示を求めている場合、またはIFRS第5号の測定範囲外となる処分グループ内の資産・負債の測定に関する開示(他の注記にない場合)を除き、適用されません(IFRS5.5B)。

ただし、IAS第1号の全般的要求に従って、財務諸表の適正表示のために追加的な開示が必要となる場合があります(IFRS5.5B)。

IFRS第5号が制定された背景

適用範囲を定めるにあたり、国際会計基準審議会(IASB)は非流動という用語の使用に関連する実務上の問題に留意しました。例えば、転売目的で取得した資産が流動資産の定義に該当してしまい本基準書の範囲から漏れる懸念や、単に12か月以内に売却したいという経営者の意図だけで流動資産に再分類されてしまう懸念がありました(IFRS5.BC9)。そのため、売却目的保有の厳格な要件を満たすまでは非流動資産を流動資産に再分類してはならないことを明確にし、通常非流動とみなされるすべての資産が確実に取り込まれるようにしました(IFRS5.BC10、IFRS5.BC12)。

測定の要求事項からの除外については、すでに公正価値で計上されその変動が純損益に認識されている資産や、公正価値の算定が本質的に困難な資産のみを測定の対象外としました(IFRS5.BC13)。また、開示要求に関しても、開示の重複や不要な負担を避ける目的で、原則としてIFRS第5号等で具体的に明記された開示に限定する旨が明確化されました(IFRS5.BC14A-BC14E)。

まとめ

IFRS第5号の適用範囲は、企業が売却や分配を目的として保有するすべての非流動資産および処分グループに及びます。安易な流動資産への分類変更を禁止することで財務諸表の比較可能性を担保しつつ、他の基準書で適切に測定される資産については測定規定を除外することで、実務上の負担軽減と会計処理の整合性を図っています。実務においては、処分グループに含まれる各資産の性質を正確に把握し、適用される基準を適切に判断することが求められます。

IFRS第5号の適用範囲に関するよくある質問まとめ

Q.IFRS第5号の適用範囲はどのような資産ですか?

A.企業が認識したすべての非流動資産および処分グループに適用されます。また、所有者への分配目的で保有する非流動資産にも適用されます(IFRS5.2、IFRS5.5A)。

Q.処分グループとは何ですか?

A.複数の資産を直接関連する負債とともに、単一の取引において同時に処分する資産および負債のグループのことです(IFRS5.4)。

Q.売却予定の非流動資産をすぐに流動資産に変更できますか?

A.いいえ。IFRS第5号が定める売却目的保有の厳格な要件を満たすまでは、経営者に売却の意図があっても流動資産へ分類変更することは禁止されています(IFRS5.3)。

Q.IFRS第5号の測定規定が適用されない資産はありますか?

A.はい。繰延税金資産(IAS第12号)、金融資産(IFRS第9号)、公正価値モデルを適用する投資不動産(IAS第40号)などは測定の適用除外となります(IFRS5.5)。

Q.処分グループ内に測定除外の資産が含まれる場合どう処理しますか?

A.処分グループ全体を測定する前に、まず除外対象の資産(例:売掛金)について、それぞれの適用基準(例:IFRS第9号)に従って測定を行う必要があります(IFRS5.5)。

Q.売却目的保有資産に関する開示は他のIFRSの規定もすべて適用されますか?

A.原則として適用されません。開示の重複を避けるため、他のIFRSで具体的に売却目的保有資産への開示を求めている場合などを除き、IFRS第5号の開示要求が優先されます(IFRS5.5B)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

士業の先生向け専門家AI
士業AI【会計】
▼▼▼ まずは専門家に相談 ▼▼▼