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IFRS第16号「リース」の測定を徹底解説!借手の会計処理とは?

2024-11-26
目次

IFRS第16号「リース」では、原則としてすべてのリースを貸借対照表に計上することが求められ、特に借手の会計処理が大きく変更されました。本稿では、IFRS第16号における「測定(Measurement)」に焦点を当て、基準の要求事項、その背景、具体的な設例を交えながら、借手の会計処理を詳細に解説します。

借手による当初測定(Initial Measurement)

借手は、リースの開始日(原資産を借手が使用できるようになった日)において、使用権資産リース負債を財務諸表に認識し、それぞれを測定する必要があります。この当初測定が、その後の会計処理の基礎となります。

リース負債の当初測定

リース負債は、リースの開始日において、その日までに支払われていないリース料の現在価値で測定します(第26項)。この現在価値の計算に使用する割引率は、原則として「リースの計算利子率」です。しかし、この利率が容易に算定できない場合には、「借手の追加借入利子率」を使用することが求められます(第26項)。

リース負債の測定に含まれる「リース料」は、以下の支払額で構成されます(第27項)。

リース料の構成要素 内容
固定リース料 実質的な固定リース料を含み、受領するリース・インセンティブを控除した後の金額です(第27項(a))。
指数・レートに応じた変動リース料 消費者物価指数(CPI)や市場金利などに連動する支払額です。当初測定では、開始日時点の指数やレートを用いて計算します(第27項(b))。
残価保証に係る支払見込額 借手が保証した残存価額に基づき、支払うと見込まれる金額です(第27項(c))。
購入オプションの行使価格 借手がそのオプションを行使することが合理的に確実である場合にのみ含めます(第27項(d))。
解約ペナルティ 設定したリース期間が、借手による解約オプションの行使を反映している場合に、その支払額を含めます(第27項(e))。

なお、企業の業績や資産の使用量に応じて変動するリース料(例:売上高の5%)は、将来のキャッシュ・フローの予測が困難であるため、リース負債の当初測定には含めず、発生した期間の費用として処理します(第38項(b))。

使用権資産の当初測定

使用権資産は、リース負債とは異なり、取得原価で測定します(第23項)。この取得原価は、単にリース負債の金額だけではなく、リース契約を締結するために付随して発生したコストも含まれます(第24項)。

使用権資産の取得原価の構成要素 内容
リース負債の当初測定額 上記で算定した、リース料総額の現在価値です(第24項(a))。
前払リース料 リースの開始日以前に支払ったリース料から、受領したリース・インセンティブを差し引いた金額です(第24項(b))。
当初直接コスト 弁護士費用など、リース契約の締結のために直接発生した増分コストです(第24項(c))。
原状回復コスト等の見積り 原資産の解体・除去費用や、設置場所の原状回復義務に関連するコストの見積額です(第24項(d))。

借手による事後測定(Subsequent Measurement)

リースの開始日後、借手は認識した使用権資産とリース負債を、それぞれの性質に応じて事後的に測定し、会計帳簿に反映させていく必要があります。

使用権資産の事後測定

開始日後、借手は原則として原価モデルを適用します(第29項)。具体的には、使用権資産の取得原価から、減価償却累計額および減損損失累計額を控除した金額で測定します(第30項)。また、後述するリース負債の再測定が行われた場合には、その修正額を使用権資産の帳簿価額に反映させます。

減価償却は、リース期間の終了時に原資産の所有権が借手に移転する場合や、購入オプションの行使が合理的に確実な場合は、その原資産の耐用年数にわたって行います。それ以外の場合は、リース期間と使用権資産の耐用年数のいずれか短い方の期間で償却します(第32項)。

リース負債の事後測定

リース負債は、開始日以降、利息の発生とリース料の支払いを反映して帳簿価額を調整していきます(第36項)。

  1. 金利費用の計上:リース負債の残高に当初の割引率を乗じて計算された金利費用を認識し、負債の帳簿価額を増額させます(第36項(a))。
  2. リース料の支払:支払ったリース料の分だけ、負債の帳簿価額を減額します(第36項(b))。
  3. 再測定による修正:リース期間の変更など、特定の事象が発生した場合には、リース負債を再測定し、その帳簿価額を修正します(第36項(c))。

リース負債の再測定(Remeasurement)

リース契約の条件変更や見積りの変更があった場合、借手はリース負債を再計算(再測定)し、その変動額を原則として使用権資産の帳簿価額に加減算して調整します(第39項)。再測定が必要となる主なケースと、その際に用いる割引率は以下の通りです。

再測定のケース 使用する割引率
リース期間の変更、または購入オプションの行使評価の変更があった場合(第40項) 改訂後の割引率(再測定日時点の借手の追加借入利子率など)を使用します。
残価保証の支払見込額の変動、または指数・レートの変動により将来のリース料が変動した場合(第42項) 割引率は変更せず、当初の割引率をそのまま使用します(第43項)。

測定方法の背景(結論の根拠)

IFRS第16号で規定されている測定方法は、どのような議論を経て決定されたのでしょうか。IASB(国際会計基準審議会)が公表している「結論の根拠(Basis for Conclusions)」から、その背景を探ります。

原価モデルの採用理由

IASBは、使用権資産とリース負債の測定について、公正価値ではなく原価測定基礎を採用しました。これは、有形固定資産(IAS第16号)などの他の非金融資産や、金融負債の測定アプローチとの整合性を保つためです。また、公正価値を毎期算定するよりも、作成者にとっての報告コストが低いという実務的な側面も考慮されています(BC145項)。

変動リース料の取扱い

売上高や使用量に連動する変動リース料をリース負債に含めるべきかについては、大きな議論がありました。これらの支払も負債の定義を満たすという意見もありましたが、IASBは、将来の業績などに依存する支払額は測定の不確実性が高く、その算定コストが財務諸表から得られる便益を上回ると判断し、リース負債の測定から除外することを決定しました(BC169項)。

一方で、消費者物価指数(CPI)などの指数や市場金利に連動する変動リース料は、借手の将来の活動とは無関係に変動するため、回避不可能な支払とみなされ、リース負債に含めることとされました(BC165項)。ただし、将来の指数やレートの変動を予測することは煩雑であるため、当初測定時は開始日現在のレートを使用し、実際にキャッシュ・フローが変動した時点で再測定するという簡便なアプローチが採用されています(BC166項、BC190項)。

ケーススタディで見る具体的な測定

IFRS第16号の設例(Illustrative Examples)を基に、具体的な測定の適用例を見ていきましょう。

ケース1:リース期間の変更に伴う再測定(設例13)

状況:

  • 借手は建物を10年間、年間リース料50,000通貨単位でリース契約を締結。5年間の延長オプションが付帯。
  • 当初、延長オプションの行使は「合理的に確実ではない」と判断し、リース期間を10年として会計処理を開始(割引率5%)。
  • 第6年度末、事業上の重要な変化により、延長オプションを行使することが「合理的に確実」であると判断を変更。

会計処理:

  1. 当初測定:リース期間10年、年間リース料50,000の現在価値をリース負債として計上。
  2. 再測定(第6年度末):リース期間の見積りが変更されたため、リース負債を再測定します。
    • 改訂後のリース期間:残存4年+延長5年=9年
    • 改訂後の割引率:第6年度末時点の新たな割引率(例:6%)を使用します(第40項、第41項)。
    • 改訂後のリース料:残存期間の50,000と延長期間のリース料(例:55,000)に基づき再計算。
  3. 調整:再計算によって生じたリース負債の増加額を、使用権資産の帳簿価額の増加として認識します(第39項)。

ケース2:指数に連動する変動リース料(設例14A)

状況:

  • 10年間の不動産リースで、当初の年間リース料は50,000。
  • リース料は2年ごとに消費者物価指数(CPI)の変動に応じて調整される。
  • 開始日現在のCPIは125。

会計処理:

  1. 当初測定:将来のCPIの変動は予測せず、開始日現在のリース料50,000が10年間続くと仮定してリース負債を測定します(第27項(b))。
  2. 再測定(第3年度首):CPIが135に上昇し、リース料が54,000(50,000 × 135 ÷ 125)に改訂。
    • リース料のキャッシュ・フローが変動したため、リース負債を再測定します(第42項(b))。
    • この際、割引率は変更せず、当初の割引率を使用して、残存期間の改訂後リース料(54,000)の現在価値を再計算します(第43項)。
  3. 調整:リース負債の増加額を、使用権資産の帳簿価額の増加として処理します(第39項)。

まとめ

IFRS第16号における借手のリース測定は、当初測定でリースを資産・負債として正確に認識することから始まります。さらに、リース期間やリース料の見積りに変更が生じた場合には、事後的な再測定を通じて財務諸表にその影響を適切に反映させることが不可欠です。特に、再測定のトリガーとなる事象の識別や、その際に適用する割引率の判断は実務上の重要なポイントとなります。本基準の背景にある考え方を理解し、具体的な設例を参考にすることで、複雑なリース会計への的確な対応が可能となるでしょう。

IFRS第16号「リース」の測定に関するよくある質問まとめ

Q. IFRS第16号でリース負債の測定に使う割引率は何ですか?

A. 原則として「リースの計算利子率」を使用します。これが容易に算定できない場合は、「借手の追加借入利子率」を使用しなければなりません(第26項)。

Q. 売上に応じて変動するリース料はリース負債に含めますか?

A. いいえ、含めません。売上高や使用量に連動する変動リース料は、測定の不確実性が高いためリース負債には含めず、発生した期間の費用として処理します(第38項(b))。

Q. リース負債を再測定するのはどのような場合ですか?

A. 主に、リース期間の見積りが変更された場合、購入オプションの行使に関する評価が変更された場合、残価保証の支払見込額が変動した場合、または指数やレートの変動によりリース料が変更された場合などに再測定が必要です。

Q. リース負債の再測定で割引率を見直すのはいつですか?

A. リース期間が変更された場合や、購入オプションの行使評価が変更された場合には、再測定日時点の「改訂後の割引率」を使用します。指数・レートの変動など、その他の再測定では「当初の割引率」を継続して使用します(第43項)。

Q. 使用権資産の当初測定(取得原価)には何が含まれますか?

A. 取得原価には、①リース負債の当初測定額、②前払リース料、③当初直接コスト、④原状回復コスト等の見積り、の4つが含まれます(第24項)。

Q. リース期間の延長オプションはどのように会計処理に影響しますか?

A. 延長オプションを行使することが「合理的に確実」であると判断される場合、その延長期間もリース期間に含めてリース負債と使用権資産を測定します。当初の判断が事後的に変更された場合は、リース負債の再測定が必要となります。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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