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IFRS第15号「認識」を条項別に徹底解説!収益認識5ステップの要点

2024-10-14
目次

国際財務報告基準(IFRS)第15号「顧客との契約から生じる収益」は、収益認識に関する包括的なフレームワークを提供するものです。その中心となる原則は、「約束した財又はサービスの顧客への移転を、企業が権利を得ると見込んでいる対価を反映する金額で描写する」ことにあります。本記事では、この原則を具現化する5ステップモデルの中核をなす「認識」セクションについて、該当する条項番号を網羅しながら、実務に役立つ形で詳細に解説いたします。

契約の識別(ステップ1)

収益認識の第一歩は、会計処理の対象となる「契約」を正しく識別することから始まります。IFRS第15号では、第9項に定められた5つの要件をすべて満たす契約のみが会計処理の対象となります。これらの要件は、契約の有効性と対価の回収可能性を評価するための重要な基準です。

契約識別の5要件

企業は、顧客との契約が以下のすべての要件を満たす場合に限り、本基準書に沿った会計処理を行う必要があります。

要件 詳細(第9項)
契約の承認と確約 契約の当事者が契約を承認し、それぞれの義務の履行を確約していること(書面、口頭、取引慣行による)。
権利の識別 移転される財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できること。
支払条件の識別 移転される財又はサービスに関する支払条件を識別できること。
経済的実質 契約に経済的実質があり、企業の将来キャッシュ・フローが変動すると見込まれること。
回収可能性 顧客に移転する財又はサービスと交換に権利を得る対価を回収する可能性が高いこと。

契約の再判定

一度、契約開始時に上記の5要件を満たすと判断された契約は、原則として再判定は行われません。ただし、第13項に基づき、事実及び状況に重大な変化の兆候がある場合、特に顧客の対価を支払う能力が著しく低下した場合には、回収可能性の要件を再評価する必要があります。

要件を満たさない場合の会計処理

契約が5要件を満たさないものの、顧客から対価を受け取った場合、その対価はすぐには収益として認識できません。第15項では、以下のいずれかの事象が発生した場合にのみ、受け取った対価を収益として認識できると定めています。

  • 企業に残りの義務がなく、受け取った対価のほとんどすべてが返金不要である場合。
  • 契約が解約されており、受け取った対価が返金不要である場合。

これらの条件が満たされるまで、あるいは契約が後に5要件を満たすようになるまで、受け取った対価は負債として認識しなければなりません(第16項)。

契約の結合

企業が同一の顧客と同時またはほぼ同時に複数の契約を締結した場合、それらを個別に処理するのではなく、単一の契約として結合して会計処理すべきケースがあります。第17項では、以下のいずれかの要件に該当する場合に契約を結合するよう求めています。

結合の要件 内容
単一の商業的目的 複数の契約が、単一の商業的目的を持つパッケージとして交渉されている。
対価の相互依存性 ある契約で支払われる対価の金額が、他の契約の価格や履行に左右される。
単一の履行義務 複数の契約で約束された財又はサービス全体が、単一の履行義務を構成する。

契約変更の会計処理

契約変更とは、契約当事者の承認により、契約の範囲や価格が変更される場合を指します(第18項)。その会計処理は、変更内容によって異なります。

独立した契約として会計処理する場合

第20項によれば、契約変更が以下の両方の条件を満たす場合、それは独立した別個の契約として扱われます。

  1. 契約の範囲が、別個のものである財又はサービスの追加によって拡大する。
  2. 契約価格が、追加された財又はサービスの独立販売価格を反映した金額だけ増額される。

既存契約の一部として会計処理する場合

上記の条件を満たさない契約変更は、既存の契約の一部として会計処理されます(第21項)。

状況 会計処理
残りの財又はサービスが別個のものである場合 既存の契約を解約し、新しい契約を創出したかのように会計処理します。
残りの財又はサービスが別個のものではない場合 既存の契約の一部として会計処理し、取引価格の修正額は累積的キャッチアップ(過年度の修正)として認識します。

履行義務の識別(ステップ2)

契約を識別した後、企業は契約内で顧客に提供を約束した財又はサービスを評価し、それらを「履行義務」として識別します(第22項)。履行義務は収益を認識する単位となるため、この識別は極めて重要です。

「別個の財又はサービス」の要件

約束した財又はサービスが「別個のもの」であると判断されるためには、第27項に定められた以下の両方の要件を満たす必要があります。

  • 便益の享受可能性: 顧客がその財又はサービス単独で、または容易に利用可能な他の資源と組み合わせて便益を得ることができる。
  • 契約上の区分可能性: 財又はサービスを移転する約束が、契約内の他の約束と区分して識別可能である。

区分して識別可能ではない場合

契約内の他の約束と「区分して識別可能ではない」ことを示す要因として、第29項では以下のような例が挙げられています。これらに該当する場合、複数の財又はサービスは結合され、単一の履行義務として扱われる可能性が高まります。

  • 企業が、複数の財又はサービスを結合後のアウトプットに統合するための重要なサービスを提供している。
  • 財又はサービスが、相互に大幅に修正またはカスタマイズされる。
  • 財又はサービスが、相互に高い依存性または関連性を持っている。

履行義務の充足(ステップ5)

収益は、企業が履行義務を充足した時、すなわち約束した財又はサービスを顧客に移転した時に認識されます(第31項)。この「移転」は、顧客が資産に対する「支配」を獲得した時点で発生します。

一定の期間にわたり充足される履行義務

第35項では、以下のいずれかの要件を満たす場合、履行義務は「一定の期間にわたり」充足されると判断され、進捗度に応じて収益を認識します。

要件 詳細
便益の同時享受・消費 顧客が、企業の履行(例:清掃サービス)によって提供される便益を、履行と同時に受け取り、消費する。
顧客による資産支配 企業の履行によって、顧客が支配する資産(例:顧客の土地での建設工事)が創出または増価される。
他に転用できず、支払を受ける権利がある 企業の履行によって、企業が他に転用できない資産(例:特注品)が創出され、かつ、企業は現在までに完了した履行に対する支払を受ける強制可能な権利を有している。

一時点で充足される履行義務

上記の「一定の期間」の要件をいずれも満たさない履行義務は、「一時点」で充足されるものとして扱われます(第38項)。この場合、収益は顧客が資産に対する支配を獲得した特定の時点で一括して認識されます。企業は、支配が移転した時点を判断するために、法的所有権の移転、物理的占有、重要なリスクと経済価値の移転といった支配の指標を考慮する必要があります。

進捗度の測定

一定の期間にわたり充足される履行義務については、その履行の進捗度を合理的に測定し、収益を認識する必要があります(第39項)。

  • 測定方法(第41項): 進捗度は、アウトプット法(完了した作業の価値を直接測定)またはインプット法(履行義務を充足するために投入した工数を測定)のいずれか適切な方法で測定します。
  • 合理的な測定が不能な場合(第45項): 進捗度を合理的に測定できないものの、発生したコストは回収できると見込まれる場合、企業は合理的に測定できるようになるまで、発生したコストの範囲でのみ収益を認識します(コスト・リカバリー法)。

まとめ

IFRS第15号の「認識」に関する規定は、収益認識のタイミングと金額を決定するための体系的なアプローチを提供します。契約の識別(ステップ1)から始まり、履行義務の識別(ステップ2)を経て、最終的に履行義務の充足(ステップ5)に至るまで、各ステップには詳細な要件が定められています。特に、契約の結合や変更、そして履行義務が「一時点」で充足されるか「一定の期間にわたり」充足されるかの判断は、実務上、慎重な検討を要する重要な論点です。本基準を正しく適用し、透明性の高い財務報告を実現することが求められます。

IFRS第15号「収益認識」に関するよくある質問

Q. IFRS第15号における収益認識の最初のステップ「契約の識別」で満たすべき要件は何ですか?

A. 顧客との契約を会計処理するには、5つの要件(第9項)をすべて満たす必要があります。具体的には、(1)当事者が契約を承認し義務を確約している、(2)各当事者の権利を識別できる、(3)支払条件を識別できる、(4)契約に経済的実質がある、(5)対価を回収する可能性が高い、という点です。

Q. 契約の途中で内容が変更(契約変更)された場合、会計処理はどうなりますか?

A. 契約変更の会計処理は2つに分かれます。追加の財やサービスが別個のもので、その対価が独立販売価格を反映している場合、新しい「独立した契約」として処理します(第20項)。そうでない場合は、既存の契約の修正として、残りの履行義務について会計処理を見直します(第21項)。

Q. 複数の財やサービスをセットで提供する場合、収益はどのように分けるのですか?

A. まず、契約に含まれる約束した財やサービスを評価し、「履行義務」として識別します(ステップ2)。財やサービスが「別個のもの」である場合(第27項)、それぞれを独立した履行義務として識別し、取引価格を配分します。「別個のもの」とは、顧客が単独で便益を得られ、かつ契約内で他の約束と区分して識別できるものを指します。

Q. 収益を認識するタイミングは、いつになりますか?「一時点」ですか、それとも「一定の期間」ですか?

A. 履行義務が「一定の期間」にわたり充足される3つの要件(第35項)のいずれかに該当する場合、進捗度に応じて収益を認識します。例えば、顧客が履行と同時に便益を受け取る場合などが該当します。これらの要件を満たさない場合は、資産に対する支配が顧客に移転した「一時点」で収益を認識します(第38項)。

Q. 「一定の期間」にわたって収益を認識する場合、進捗度はどのように測定しますか?

A. 履行義務の充足に向けた進捗度は、企業の履行を忠実に描写する方法で測定します(第39項)。具体的な方法として、完成した製品の数や達成したマイルストーンなどで測定する「アウトプット法」と、投入したコストや労働時間などで測定する「インプット法」があります(第41項)。

Q. 顧客から代金を受け取ったものの、契約の5つの要件を満たさない場合、そのお金はどう処理しますか?

A. 契約の要件(第9項)を満たさない場合、受け取った対価はすぐに収益として認識できません。原則として、要件が満たされるか、あるいは企業の残りの義務がなくなり対価が返金不要になる等の特定の事象が発生するまで、受け取った対価を「負債」として処理します(第16項)。

事務所概要
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公認会計士 島本 雅史

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