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IFRS第13号「公正価値測定」の目的と適用実務を徹底解説

2025-12-25
目次

IFRS(国際財務報告基準)第13号「公正価値測定」は、財務諸表における公正価値の測定方法と開示に関する単一のフレームワークを提供する重要な基準書です。本記事では、IFRS第13号の目的、基準設定の背景、そして実務における具体的な適用ケースについて、関連する条項番号を交えながら詳細に解説いたします。

IFRS第13号「公正価値測定」の目的と基本原則

本基準書が掲げる3つの主要な目的

IFRS第13号は、公正価値に関する実務の統一と透明性の向上を目指して設定されました。本基準書の目的は、大きく以下の3点に集約されると明確に規定されています(IFRS13.1)。

目的の項目 詳細な内容
(a) 公正価値の定義 測定の基礎となる「公正価値」の客観的な概念を明確化すること。
(b) 単一フレームワークの提供 単一のIFRS基準内で、公正価値の測定に関する一貫したフレームワークを示すこと。
(c) 開示要求の規定 財務諸表利用者に対して、公正価値測定に関する十分な情報の開示を求めること。

これにより、過去に複数の基準書に分散していた公正価値に関する規定が統合され、適用実務の首尾一貫性が確保されることになります(IFRS13.1)。

公正価値測定の目的と出口価格の概念

公正価値は、企業固有の状況に基づく測定ではなく、「市場を基礎とした測定」であることが大原則として定められています(IFRS13.2)。対象となる資産や負債について、活発な市場における観察可能な取引価格が存在する場合もあれば、そうでない場合もありますが、測定の目的は常に一定です。その目的とは、現在の市場の状況下において、測定日時点で市場参加者の間に資産の売却又は負債の移転の秩序ある取引が生じるであろう価格を見積ることです(IFRS13.2)。これは、資産を保有する者、あるいは負債を負う市場参加者の視点に立った、測定日現在の「出口価格」を意味しています(IFRS13.2)。

企業固有の意図の排除と評価技法の適用

同一の資産又は負債に関する価格が市場で直接観察できない場合、企業は適切な評価技法を用いて公正価値を算定しなければなりません(IFRS13.3)。この際、関連性のある観察可能なインプットの使用を最大限に高め、観察可能でないインプットの使用を最小限に抑えることが厳格に求められます(IFRS13.3)。公正価値はあくまで客観的な市場ベースの測定であるため、市場参加者が価格付けを行う際に考慮するであろうリスクなどの仮定を反映させる必要があります(IFRS13.3)。したがって、資産を将来にわたって保持し続ける意図や、負債を自ら決済するという「企業自身の意図」は、公正価値の測定プロセスにおいて一切関連しないと厳格に規定されています(IFRS13.3)。

適用対象となる資産・負債と自己資本性金融商品

公正価値の定義は、会計上の測定の主要な対象である「資産」および「負債」に焦点を当てて構築されています。しかし、本基準書の適用範囲はそれらに留まらず、企業が公正価値で測定する「企業自身の資本性金融商品」に対しても、同様の原則を適用しなければならないと定められています(IFRS13.4)。

基準設定の背景とコンバージェンスの必要性

従来のIFRSにおける実務上の課題

IFRS第13号が開発される以前のIFRSでは、公正価値の測定や開示に関する要求事項が多数の基準書に散在していました。多くの場合、測定や開示の根本的な目的が明確にされておらず、基準書間でガイダンスの詳細さやアプローチにばらつきが存在していました(IFRS13.BC4)。このような状況は、実務における解釈の不統一を引き起こし、結果として財務諸表で報告される情報の比較可能性を著しく低下させるという重大な問題を生じさせていました(IFRS13.BC5)。

単一フレームワークの構築と米国基準との統合

前述の課題を解決するため、国際会計基準審議会(IASB)は、IFRSで要求または許容されるすべての公正価値測定に関する「単一の要求事項のセット」を構築し、適用の複雑性を軽減して首尾一貫性を高めることを目指しました(IFRS13.BC6(a))。同時に、公正価値の定義を明確にして測定目的を伝達し(IFRS13.BC6(b))、開示を拡充すること(IFRS13.BC6(c))も重要な目標とされました。さらに、米国会計基準(US GAAP)のSFAS第157号(現在のTopic 820)とのコンバージェンスを推進し、公正価値がIFRSとUS GAAPの双方で完全に同一の意味を持ち、測定および開示の要求事項が一致することが、本基準書開発の強力な推進力となりました(IFRS13.BC6(d)、IFRS13.BC7)。

測定の「How」を定め「When」は定めない原則

本基準書を適用する上で極めて重要な点は、IFRS第13号が企業に「どのような場合(when)」に資産や負債を公正価値で測定すべきかを指示するものではなく、「どのように(how)」測定するかを定めるものであるという事実です(IFRS13.BC8)。本基準書自体が新たな公正価値測定の対象項目を導入するわけではありません。他のIFRS基準において公正価値による測定が要求または許容されている場合に、その具体的な測定方法の拠り所として機能することが意図されています(IFRS13.BC8)。

実務適用に向けた具体的なケーススタディ

自社利用を意図する特殊機械の評価事例

本基準書の「目的」で規定されている「企業固有の意図の排除」や「出口価格に基づく市場ベースの測定」が、実務においてどのように適用されるのかを具体的なケースで確認します。ある製造企業が、自社工場で特殊なカスタマイズを施した機械(帳簿価額5,000万円)を保有しており、将来にわたって売却することなく自社で保持し続ける強い意図を持っていると仮定します。

他のIFRS基準によりこの機械を公正価値で評価する必要が生じた場合、企業の「自社で使い続ける」という意図や、自社の製造プロセスにおける企業固有の使用価値は、公正価値の測定には一切考慮されません(IFRS13.3)。企業は、本基準書の原則に従い、現在の市場状況下で、測定日においてその機械を市場参加者に売却したとしたらいくらで売れるかという「出口価格」を見積もる必要があります(IFRS13.2)。

機械が特殊であり活発な市場価格が直接観察できない場合でも、企業は評価技法を用いなければなりません。その際、特殊な機械を他者が使用するための改修コスト(例:見積改修費1,000万円)や、経年劣化などのリスク要因について、市場参加者が価格付けに用いるであろう客観的な仮定を反映させる必要があります(IFRS13.3)。結果として、企業がその機械を手放す意思が全くなかったとしても、財務諸表上の公正価値は「市場参加者間での仮想的な売却価格」として算定され、主観を排した首尾一貫した客観的な価値が報告されることになります。

まとめ

IFRS第13号「公正価値測定」は、財務報告における公正価値の定義を統一し、測定と開示に関する単一のフレームワークを提供する画期的な基準書です。企業固有の意図を排除し、市場参加者の視点に基づく「出口価格」を算定するという大原則は、財務諸表の客観性と国際的な比較可能性を担保する上で不可欠です。実務担当者は、本基準書が測定の「How」を提供するものであることを正しく理解し、適切な評価技法と市場ベースの仮定を用いて公正価値を算定することが求められます。

IFRS第13号「公正価値測定」のよくある質問まとめ

Q.IFRS第13号の主な目的は何ですか?

A.公正価値を定義すること、公正価値測定に関する単一のフレームワークを示すこと、そして公正価値測定に関する開示を求めることの3点です(IFRS13.1)。

Q.公正価値測定における「出口価格」とは何ですか?

A.現在の市場の状況下で、測定日時点において市場参加者の間で資産の売却又は負債の移転の秩序ある取引が生じるであろう価格のことです(IFRS13.2)。

Q.企業が資産を保持し続ける意図は公正価値に影響しますか?

A.影響しません。公正価値は市場ベースの客観的な測定であるため、資産を保持し続けるという企業自身の意図は測定に関連しないと規定されています(IFRS13.3)。

Q.IFRS第13号はどのような項目に適用されますか?

A.主に資産および負債に適用されますが、企業が公正価値で測定する企業自身の資本性金融商品にも適用しなければならないと定められています(IFRS13.4)。

Q.なぜIFRS第13号が新たに開発されたのですか?

A.従来のIFRSでは公正価値の規定が複数基準に散在し実務の不統一が生じていたため、単一のフレームワークを構築し、さらに米国会計基準(US GAAP)とのコンバージェンスを図るためです(IFRS13.BC4, IFRS13.BC5)。

Q.IFRS第13号はいつ公正価値評価を行うべきかを定めていますか?

A.定めていません。本基準書は「どのように(how)」測定するかを定めるものであり、「どのような場合(when)」に測定すべきかは他のIFRS基準の規定に従います(IFRS13.BC8)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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