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IFRS第11号:共同支配の取決めの会計処理と実務ケース解説

2025-12-22
目次

本記事では、国際財務報告基準(IFRS)第11号「共同支配の取決め」に基づき、当事者が自らの財務諸表及び個別財務諸表においてどのように会計処理を行うべきかを詳細に解説いたします。共同支配事業と共同支配企業という分類に応じた会計処理の原則、基準設定の背景、および具体的な数値を用いたケーススタディを通じて、実務への適用方法を明確にします。

共同支配事業の会計処理の基本原則

共同支配事業に分類される取決めにおいて、共同支配事業者は、契約上の取決めで定められた自らの権利及び義務に基づいて会計処理を行う必要があります(IFRS11.20)。

資産・負債・収益・費用の認識

共同支配事業者は、共同支配事業に対する自らの持分に関して、以下の項目を認識しなければなりません(IFRS11.20)。これらの認識および測定は、特定の資産や負債、収益、費用に適用される他の関連するIFRSの規定に従って行われます(IFRS11.21)。

認識すべき項目 具体的な処理内容(IFRS11.20)
資産(IFRS11.20(a)(b)) 自らの資産、および共同で保有する資産に対する自らの持分を認識します。
負債(IFRS11.20(c)) 自らの負債、および共同で負う負債に対する自らの持分を認識します。
収益(IFRS11.20(d)(e)) 共同支配事業からの産出物に対する持分の売却による収益、および共同支配事業による産出物の売却による収益に対する自らの持分を認識します。
費用(IFRS11.20(f)) 自らの費用、および共同で負う費用に対する自らの持分を認識します。

活動が事業を構成する場合の取得

共同支配事業の活動がIFRS第3号「企業結合」で定義される事業を構成する場合、その持分を取得する企業は、IFRS11.20に従った持分の範囲において、IFRS第3号及び他のIFRSにおける企業結合の会計処理に関する原則を適用しなければなりません(IFRS11.21A、IFRS11.B33A)。この原則の適用により、取得者はのれんの認識や、取得関連コストの発生時における費用化を行うことになります(IFRS11.B33A)。ただし、この規定は、事業を構成しない単なる資産の拠出(IFRS11.B33B)や、共通支配下の取引(IFRS11.B33D)には適用されません。また、追加的な持分を取得して共同支配を維持または獲得する場合には、従来保有していた持分を再測定してはならないと規定されています(IFRS11.B33C、IFRS11.B33CA)。

内部取引に関する会計処理

共同支配事業者と共同支配事業との間の取引については、未実現損益の認識に関する厳格なルールが存在します。企業が自ら関与する共同支配事業へ資産を売却又は拠出する「下流取引」の場合、当該取引から生じる利得及び損失の認識は、当該共同支配事業に対する他の当事者の持分の範囲でのみ行わなければなりません(IFRS11.22、IFRS11.B34)。逆に、企業が共同支配事業から資産を購入する「上流取引」の場合、企業は当該資産を独立した第三者に再販売する時点まで、利得及び損失に対する自らの持分を認識してはなりません(IFRS11.B36)。ただし、拠出や購入の対象となる資産の正味実現可能価額の低下や減損損失の証拠がある場合には、当該損失を直ちに全額(または自らの持分に応じて)認識する必要があります(IFRS11.B35、IFRS11.B37)。

共同支配を有さない当事者の処理

共同支配の取決めに参加しているものの、共同支配を有していない当事者に対する会計処理も明確化されています。当該当事者が、共同支配事業の資産に対する権利及び負債に対する義務を実質的に有している場合には、共同支配事業者と同様にIFRS11.20からIFRS11.22の規定に従って自らの資産・負債等を認識しなければなりません(IFRS11.23)。一方で、そのような権利義務を有していない場合には、IFRS第9号「金融商品」など、関連する他のIFRSに従って会計処理を行います(IFRS11.23)。

共同支配企業の会計処理

共同支配企業に分類される取決めの場合、当事者は個別の資産や負債に対する権利義務ではなく、取決めの純資産に対する権利を有しているとみなされます。

共同支配投資者の会計処理(持分法)

共同支配企業に対する共同支配を有する投資者(共同支配投資者)は、当該共同支配企業に対する自らの持分を単一の投資として認識し、IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」の規定に従って持分法を用いて会計処理しなければなりません(IFRS11.24)。ただし、投資企業等、IAS第28号において持分法の適用が免除されている特定のケースに該当する場合は除かれます(IFRS11.24)。

共同支配を有さない当事者の会計処理

共同支配企業に参加しているものの、共同支配を有していない当事者については、原則としてIFRS第9号「金融商品」に従って当該持分を金融資産として会計処理します(IFRS11.25)。ただし、当該当事者が共同支配企業に対して重要な影響力を有していると判定される場合には、IAS第28号に従って持分法を適用しなければなりません(IFRS11.25)。

個別財務諸表における会計処理

企業が作成する個別財務諸表においても、共同支配の取決めの分類に応じた適切な会計処理が求められます。

共同支配事業の個別財務諸表での処理

共同支配事業者は、自らの個別財務諸表において、連結財務諸表における処理と同様に、IFRS11.20からIFRS11.22の規定に従い、共同支配事業に関する自らの資産、負債、収益、及び費用を直接認識して会計処理しなければなりません(IFRS11.26(a))。共同支配を有さないが権利義務を有する当事者についても同様に直接認識を行います(IFRS11.27(a))。

共同支配企業の個別財務諸表での処理

共同支配企業に対する持分を有する共同支配投資者は、自らの個別財務諸表においては、IAS第27号「個別財務諸表」の第10項に従って会計処理を行わなければなりません(IFRS11.26(b))。具体的には、取得原価、IFRS第9号に基づく公正価値、または持分法のいずれかの方法を選択して投資を測定します。共同支配を有さない当事者についても、原則としてIFRS第9号に従って処理しますが、重要な影響力を有する場合はIAS第27号第10項に従います(IFRS11.27(b))。

基準設定の背景と比例連結の廃止

IFRS第11号においてこれらの会計処理が規定された背景には、旧基準(IAS第31号)における会計実務の不統一を解消し、経済的実質をより忠実に表現するという国際会計基準審議会(IASB)の意図があります。

比例連結の廃止と実質的権利の反映

旧基準における比例連結では、単に出資比率や所有持分に基づいて一律に資産や負債の合算が行われていました。しかし、IFRS11.20が求める共同支配事業の会計処理は、契約上の取決めで定められた権利及び義務の持分相当額に基づくという決定的な違いがあります(IFRS11.BC38)。これにより、所有持分に関わらず、企業が実際には権利を有しない資産や、義務を負わない負債を誤って自らの財務諸表に認識してしまう事態を防ぐことができます。また、個別財務諸表と連結財務諸表の双方で同一の会計処理(資産・負債の直接認識)が行われることで、実態に即した一貫性のある報告が可能となりました(IFRS11.BC38、IFRS11.BC40)。

持分法への一本化

共同支配企業については、当事者が個別の資産・負債ではなく純資産(残余持分)に対する権利を有するという経済的実質を忠実に反映させるため、旧基準で認められていた比例連結の選択肢を廃止し、持分法に一本化しました(IFRS11.BC41、IFRS11.BC43、IFRS11.BC44)。比例連結の廃止によって詳細な財務情報が失われるのではないかという懸念に対しては、IFRS第12号「他の企業に対する持分の開示」における開示要求を大幅に拡充することで、財務諸表利用者に十分な情報が提供されると結論付けています(IFRS11.BC45)。

事業を構成する取得の明確化

過去の会計実務においては、事業を構成する共同支配事業の持分を取得した際の処理として、IFRS第3号アプローチ、原価アプローチ、混合アプローチという全く異なる会計処理が混在し、のれんや繰延税金の認識に著しい不統一が生じていました(IFRS11.BC45A-BC45C)。この問題を解決するため、審議会はIFRS第3号等の企業結合の原則を適用することが最も適切であると判断し、IFRS11.21Aの規定を追加しました(IFRS11.BC45D-BC45F)。さらに、企業が追加取得によって共同支配を維持または獲得する段階的な取引において、従来保有していた持分を公正価値で再測定してしまうと、IFRS11.20が求める「自らの権利義務の認識」という原則と矛盾が生じるため、再測定を明示的に禁止しました(IFRS11.BC45L、IFRS11.BC45P、IFRS11.BC45Q)。

共同支配の取決めのケーススタディ

本基準書の会計処理要求が実務においてどのように適用されるかを、具体的な数値を用いた2つのケーススタディで解説します。

ケース1:事業を構成する共同支配事業の取得

会社Eが、活動が「事業(IFRS第3号で定義)」を構成する共同支配事業Dに対する40%の所有持分を取得しました。移転した対価はCU300であり、これとは別に取得関連コストCU50が発生しました(IFRS11.IE53、IFRS11.IE54)。契約上の取決めにより、会社Eの持分は、有形固定資産については48%、買掛金については40%など、単なる所有持分(40%)とは異なる個別の割合が定められています(IFRS11.IE55)。

会計処理のステップ 具体的な適用内容と金額(IFRS11.21A、IFRS11.B33A)
原則の適用 共同支配事業Dの活動が「事業」を構成するため、会社EはIFRS第3号の企業結合の原則を適用します(IFRS11.IE57)。
資産及び負債の測定 純資産の取得日公正価値を算定しますが、対象は契約で定められた自らの持分(有形固定資産48%、買掛金40%等)のみであり、他者の持分を含めた100%ではありません(IFRS11.20、IFRS11.IE58、IFRS11.IE59)。
のれんと費用の認識 移転対価CU300と、自らの持分に基づく識別可能純資産の公正価値(例:CU228)との差額CU72をのれんとして認識します(IFRS11.B33A(d)、IFRS11.IE61)。取得関連コストCU50は対価に含めず、発生時に費用処理します(IFRS11.B33A(b)、IFRS11.IE62)。

ケース2:共同支配企業に対する投資

不動産会社2社が、新たなショッピング・センターを取得・運営するために別個の法人(企業X)を設立しました。契約上、両社は当該法人の個別の資産・負債ではなく、純資産に対する権利を有しているため、この取決めは共同支配企業と判定されます(IFRS11.IE9、IFRS11.IE12)。

財務諸表の種類 具体的な会計処理(IFRS11.24、IFRS11.26)
連結財務諸表 当該ショッピング・センターの個別の資産(建物等)や負債(借入金等)を比例連結することはできません(IFRS11.BC41)。両社はそれぞれ企業Xの純資産に対する権利を単一の「投資」として認識し、IAS第28号に従って持分法を適用し、企業Xの利益を持分に応じて取り込みます(IFRS11.24、IFRS11.IE13)。
個別財務諸表 自らの個別財務諸表を作成する際には、IAS第27号第10項に従い、当該投資を取得原価等で測定して表示します(IFRS11.26(b))。

まとめ

IFRS第11号「共同支配の取決め」に基づく会計処理は、単なる法形式や出資比率ではなく、契約上の取決めに基づく実質的な権利と義務を財務諸表に忠実に反映することを目的としています。共同支配事業においては個別の資産・負債の直接認識が求められ、共同支配企業においては持分法による単一の投資勘定としての認識が求められます。特に、事業を構成する共同支配事業の取得時にはIFRS第3号の原則が適用され、のれんの認識や取得関連費用の処理において厳密な実務対応が必要となります。企業は、各取決めの契約内容を詳細に分析し、適切な分類と正確な会計処理を実施することが不可欠です。

共同支配の取決めの会計処理に関するよくある質問まとめ

Q.共同支配事業における資産と負債はどのように認識しますか?

A.共同支配事業者は、契約上の取決めで定められた自らの権利及び義務に基づき、自らの資産・負債、および共同で保有・負担する資産・負債に対する自らの持分を直接認識します(IFRS11.20)。

Q.共同支配事業の活動が事業を構成する場合の会計処理は?

A.活動がIFRS第3号の「事業」を構成する場合、取得者は自らの持分の範囲内でIFRS第3号の企業結合の原則を適用し、のれんの認識や取得関連コストの費用化を行います(IFRS11.21A)。

Q.共同支配企業に対する投資はどのように会計処理しますか?

A.共同支配企業に対する持分は、純資産に対する権利であるため、比例連結は行わず、IAS第28号に従って「持分法」を用いて単一の投資として会計処理します(IFRS11.24)。

Q.個別財務諸表における共同支配企業の会計処理はどうなりますか?

A.共同支配投資者の個別財務諸表においては、持分法ではなく、IAS第27号第10項に従って当該投資を取得原価等で測定して表示しなければなりません(IFRS11.26(b))。

Q.なぜ旧基準の比例連結は廃止されたのですか?

A.比例連結では所有持分に基づく一律の合算が行われ、企業が実質的に権利を有しない資産や義務を負わない負債を誤って認識する恐れがあったため、契約上の権利義務に基づく処理へ変更されました(IFRS11.BC38)。

Q.共同支配を有さない当事者はどのように会計処理すべきですか?

A.共同支配事業で実質的な権利義務を有していれば共同支配事業者と同様に資産・負債を認識し(IFRS11.23)、共同支配企業で重要な影響力を有していれば持分法を適用します(IFRS11.25)。それ以外はIFRS第9号等に従います。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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