IFRS第11号「共同支配の取決め」において、企業が適切な財務報告を行うための原則である「目的の達成」について詳細に解説いたします。本基準書が企業に対して何を要求しているのか、その背景にある旧基準の課題から具体的なケーススタディまで、実務に直結する内容を整理しております。
「目的の達成」の規定詳細
本セクションでは、共同支配の取決めに対する持分を有する企業の財務報告に関する原則を定めるという目的を満たすために、本基準書が企業に要求している具体的なアプローチについて解説いたします。
共同支配の取決めの種類の決定
本基準書は目的を達成するために、まず「共同支配」を定義したうえで、関与している共同支配の取決めの種類を決定する際、単なる法的形式や構造に依存するのではなく、自らの権利及び義務を評価することにより決定することを強く要求しています。参考:IFRS11.2
種類に基づく会計処理の適用
権利及び義務の評価の結果として取決めの種類が決定された後、企業は当該権利及び義務を、その共同支配の取決めの種類に従って会計処理することが求められます。これにより、経済的実質を忠実に反映した財務諸表の作成が可能となります。参考:IFRS11.2, IFRS11.14-19
| IFRS第11号の要求事項 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 種類の決定 | 自らの権利及び義務を評価し、取決めの種類を決定する |
| 会計処理の適用 | 決定した種類に従い、実質的な権利及び義務を会計処理する |
基準設定の背景と旧基準の課題
本基準書において、形式ではなく権利及び義務の評価が要求されるようになった背景には、旧基準に存在した実務上の大きな課題が存在します。
旧基準(IAS第31号)における実務の不統一
旧基準では、取決めが別個のビークル(企業)を通じて組成されているかという構造上の法的形態のみを基礎として会計処理が決定されていました。さらに、企業を通じて組成された共同支配企業に対しては、比例連結又は代替処理としての持分法のいずれかを企業の会計方針として選択することが認められており、実質が同じでも異なる処理が行われるという比較可能性の欠如が生じていました。参考:IFRS11.BC7, IFRS11.BC8
実質的な権利と義務の反映への転換
上記の課題に対処するため、当審議会は、会計処理は取決めの構造に関係なく、各当事者が有する権利及び義務を反映すべきであるという原則を確立しました。企業の恣意的な会計方針の選択を排除し、本基準書の原則を適用して生じた実質的な権利及び義務を認識することで、会計処理が決定されるべきであると結論付けられています。参考:IFRS11.BC9, IFRS11.BC10, IFRS11.BC11
| 基準の比較 | 会計処理の決定要素 |
|---|---|
| 旧基準(IAS第31号) | 法的形態による分類と、比例連結・持分法の選択肢が存在 |
| 新基準(IFRS第11号) | 実質的な権利及び義務の評価に基づく分類と、単一の会計処理 |
具体的なケーススタディ(別個の法人を通じた取決め)
本基準書の規定が実務でどのように適用されるか、別個の法人を通じて組成された取決めのケースを用いて具体的に説明いたします。
ケース設定:共同製造のための法人設立
企業Aと企業Bが、自社の製品製造に必要な専用材料を共同製造するため、別個の法人である企業Cを設立し、株式を50%ずつ保有して共同支配している状況を想定します。参考:IFRS11.IE34, IFRS11.IE37
実質的な権利及び義務の評価と会計処理
旧基準下では別個の法人という構造だけで共同支配企業に分類されていましたが、本基準書では契約を通じた自らの権利及び義務の評価が要求されます。例えば、企業AとBが企業Cの製造した材料をすべて50%ずつ購入する義務があり、企業Cの資金繰りが両社からのキャッシュ・フローに完全に依存している場合、両社は実質的に資産に対する権利と負債に対する義務を有していると判断されます。その結果、この取決めは共同支配事業と決定され、自らの権利と義務に相当する資産及び負債を直接認識する会計処理を行わなければなりません。参考:IFRS11.IE40, IFRS11.IE41, IFRS11.IE42, IFRS11.IE43
| 評価のポイント | ケーススタディにおける判断内容 |
|---|---|
| 契約上の義務 | 企業AとBは製造された全材料を50%ずつ購入する義務を負う |
| 資金の依存性 | 企業Cの製造コスト等はすべて企業AとBの資金に依存している |
まとめ
IFRS第11号における「目的の達成」は、共同支配の取決めに対する会計処理を、法的形式や会計方針の選択から、経済的実質に基づく権利及び義務の評価へと転換させる重要な規定です。企業は、関与する取決めごとに契約内容を精査し、実質的な権利及び義務を正確に把握したうえで、適切な分類と会計処理を適用することが求められます。
IFRS第11号「共同支配の取決め」のよくある質問まとめ
Q.IFRS第11号における「目的の達成」とは何を意味しますか?
A.共同支配の取決めに対する持分を有する企業の財務報告の原則を定めるという目的を満たすため、権利及び義務の評価とそれに基づく会計処理を要求することです。(IFRS11.2)
Q.共同支配の取決めの種類はどのように決定すべきですか?
A.取決めの法的形式に依存するのではなく、関与する当事者が自らの権利及び義務を評価することによって決定しなければなりません。(IFRS11.2)
Q.旧基準(IAS第31号)における会計処理の主な問題点は何でしたか?
A.取決めが別個のビークルを通じて組成されているかという構造のみで分類され、比例連結か持分法かを会計方針として自由に選択できたため、比較可能性が損なわれていました。(IFRS11.BC7, IFRS11.BC8)
Q.新基準では会計方針の選択肢は認められていますか?
A.認められていません。取決めの種類に適用される原則に従い、実質的な権利及び義務を反映した単一の会計処理を行う必要があります。(IFRS11.BC10, IFRS11.BC11)
Q.別個の法人を通じて組成された取決めは常に共同支配企業になりますか?
A.なりません。契約上、当事者が法人の資産に対する権利と負債に対する義務を有していると評価される場合は、共同支配事業に分類されます。(IFRS11.IE42, IFRS11.IE43)
Q.共同支配事業と判断された場合、どのような会計処理が求められますか?
A.共同支配事業の当事者は、自らの権利と義務の実質に相当する資産及び負債を、自らの財務諸表に直接認識する会計処理を行わなければなりません。(IFRS11.2, IFRS11.14-19)