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IFRS対応!IAS第36号「資産の減損」を徹底解説【実務ガイド】

2024-10-30
目次

国際会計基準(IFRS)の中でも特に実務上の判断が求められるIAS第36号「資産の減損」は、企業が保有する資産の価値を適切に財務諸表へ反映させるための重要な基準です。本基準は、資産の帳簿価額がその資産の使用または売却によって回収できる金額(回収可能価額)を上回らないようにするための手続きを定めています。本記事では、IAS第36号の各セクションの要点を、実務担当者の皆様に向けて網羅的かつ詳細に解説いたします。

IAS第36号「資産の減損」の目的と適用範囲

本基準の核心は、資産価値の過大計上を防ぎ、財務諸表の信頼性を確保することにあります。その目的と、どの資産に適用されるのか、あるいは適用されないのかを正確に理解することが第一歩となります。

基準の目的

IAS第36号の主な目的は、企業が資産をその回収可能価額を超える帳簿価額で計上しないことを確実にするための手続きを定めることです。資産の帳簿価額が回収可能価額を上回る場合、その資産は「減損している」と判断され、企業は差額を減損損失として認識することが要求されます。また、一度認識した減損損失を将来戻し入れるべき状況や、関連する開示事項についても規定しています。

適用範囲と主な適用除外

本基準は原則としてすべての資産の減損処理に適用されますが、他の特定の基準で会計処理が定められている資産は適用範囲から除外されます。主な適用除外項目は以下の通りです。

適用除外項目 関連する会計基準
棚卸資産 IAS第2号
契約資産及び契約の獲得・履行コストから生じる資産 IFRS第15号
繰延税金資産 IAS第12号
従業員給付から生じる資産 IAS第19号
金融資産 IFRS第9号
公正価値で測定される投資不動産 IAS第40号
保険契約から生じる資産 IFRS第17号
売却目的保有に分類された非流動資産 IFRS第5号

適用される金融資産と再評価資産

IFRS第9号の範囲に含まれない、子会社、関連会社、共同支配企業への投資については、本基準が適用されます。また、IAS第16号(有形固定資産)やIAS第38号(無形資産)の再評価モデルにより再評価額を帳簿価額としている資産も、本基準の減損規定の対象となります。

減損の識別と回収可能価額の測定

減損会計プロセスの中心は、減損の可能性を識別し、必要に応じて資産の回収可能価額を正確に測定することです。このステップは、客観的な証拠に基づいた慎重な判断を要します。

減損の兆候の識別

企業は、各報告期間の末日において、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを評価しなければなりません。兆候が存在する場合に限り、回収可能価額の見積りが必要となります。考慮すべき兆候には、外部情報源と内部情報源の両方が含まれます。

情報源 兆候の例
外部の情報源 ・資産価値の予期せぬ著しい低下
・市場金利やその他の投資収益率の上昇
・企業の市場価値(株価総額)が純資産の帳簿価額を下回っている状態
内部の情報源 ・資産の陳腐化や物理的な損傷の証拠
・資産の使用方法に関する不利な変化(遊休化、処分計画など)
・資産から生じる経済的成果が悪化している、または悪化が見込まれることを示す内部報告

年次減損テストが必須の資産

減損の兆候の有無にかかわらず、以下の資産については少なくとも年に1回、減損テストを実施することが義務付けられています。

  • 耐用年数を確定できない無形資産、またはまだ使用可能ではない無形資産
  • 企業結合で取得したのれん

回収可能価額の算定方法

回収可能価額は、「処分コスト控除後の公正価値(FVLCD)」と「使用価値(VIU)」のいずれか高い方の金額と定義されます。どちらか一方の金額が資産の帳簿価額を上回っていれば、資産は減損しておらず、もう一方の金額を算定する必要はありません。

使用価値算定の要点

使用価値は、資産から生じると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値です。その算定には、以下の要素を正確に反映させる必要があります。

  • 見積りの基礎: 将来キャッシュ・フローの予測は、経営者が承認した直近の財務予算・予測に基づき、合理的で裏付け可能な仮定を使用しなければなりません。
  • 予測期間: 予算等に基づくキャッシュ・フロー予測の期間は、正当な理由がない限り最長5年間とします。5年を超える期間については、一定または逓減する成長率を用いてキャッシュ・フローを見積もります。
  • 除外事項: 将来キャッシュ・フローの見積りには、未コミットのリストラクチャリングや資産の性能向上投資から生じるキャッシュ・フロー、財務活動や法人所得税に関連するキャッシュ・フローを含めてはなりません。
  • 割引率: 割引率は、貨幣の時間価値と、将来キャッシュ・フローの見積りでは調整されていない資産固有のリスクを反映した、税引前の利率を使用しなければなりません。

減損損失の認識・測定と戻入れ

減損テストの結果、減損が識別された場合の会計処理と、その後の経済状況の変化により価値が回復した場合の戻入れ処理について、厳格なルールが定められています。

減損損失の会計処理

資産の回収可能価額が帳簿価額を下回る場合、その差額を減損損失として認識し、帳簿価額を回収可能価額まで減額します。この減損損失は、原則として直ちに純損益に認識されます。ただし、再評価モデルを適用している資産の場合、減損損失はまず当該資産に係る再評価剰余金を取り崩すためにその他の包括利益(OCI)に認識され、それを超える部分が純損益に認識されます。減損損失の認識後は、減価償却(償却)費が調整されます。

減損損失の戻入れの要件

のれん以外の資産について、過去に認識した減損損失がもはや存在しない、または減少した可能性を示す兆候があるか、各報告期間の末日に評価します。戻入れが認められるのは、回収可能価額の算定に用いた見積りに変更があった場合に限られます。単なる時間の経過による割引価値の増加(アンwinding)だけでは、戻入れの理由にはなりません。

戻入れの限度額と会計処理

減損損失の戻入れによって増加した資産の帳簿価額は、過去に減損損失を認識しなかったと仮定した場合の(減価償却または償却を控除した後の)帳簿価額を上限とします。戻入れ額は、原則として直ちに純損益に認識されますが、再評価資産の場合は、以前に純損益で認識した減損損失の戻入れ部分を除き、その他の包括利益(OCI)に認識されます。

資金生成単位(CGU)とのれんの減損

個々の資産が独立してキャッシュ・フローを生み出さない場合、より大きな単位で減損を評価する必要があります。特に、のれんの減損テストは、この「資金生成単位」という概念を用いて行われます。

資金生成単位(CGU)の識別と評価

資金生成単位(Cash-Generating Unit, CGU)とは、他の資産または資産グループからのキャッシュ・インフローとは概ね独立したキャッシュ・インフローを生成する、識別可能な最小の資産グループを指します。個別資産の回収可能価額を見積もることができない場合、その資産が属するCGU単位で回収可能価額を算定し、減損テストを実施します。

のれんの配分と年次減損テスト

企業結合で取得したのれんは、取得日から便益を享受すると見込まれる各CGUまたはCGUグループに配分しなければなりません。この配分は、取得日以後最初に開始する事業年度の末日までに完了する必要があります。のれんが配分されたCGUは、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年1回、減損テストを行わなければなりません。

資金生成単位の減損損失の配分順序

CGUの減損損失は、以下の順序でCGUを構成する資産の帳簿価額を減額するために配分されます。

配分順序 内容
第1順位 まず、そのCGUに配分されたのれんの帳簿価額を減額します。
第2順位 次に、残りの減損損失を、CGU内の他の各資産の帳簿価額に比例して配分します。

ただし、個々の資産の帳簿価額は、処分コスト控除後の公正価値、使用価値、ゼロのうち最も高い金額を下回るまで減額することはできません。

のれんの減損損失の戻入れ禁止

最も重要な規定の一つとして、一度認識されたのれんに係る減損損失は、その後の期間において戻入れすることは固く禁止されています。これは、のれんの価値の回復は、内部で創出された自己創設のれんの増加によるものである可能性が高く、その認識はIAS第38号で禁止されているためです。

開示要求事項

IAS第36号は、財務諸表利用者が企業の減損に関する判断を理解できるよう、詳細な開示を要求しています。透明性の確保は、本基準の重要な側面です。

全般的な開示

企業は、資産のクラスごとに、当期中に純損益またはその他の包括利益に認識した減損損失および戻入れ額と、それらが計上されている包括利益計算書上の項目を開示する必要があります。

個別の重要な減損に関する詳細開示

当期中に認識または戻入れを行った減損損失が、個別の資産またはCGUにとって重要である場合、以下のような追加情報が開示されます。

  • 減損損失の認識または戻入れに至った事象および状況
  • 認識または戻入れをした減損損失の金額
  • 回収可能価額が「処分コスト控除後の公正価値」か「使用価値」かの別
  • 回収可能価額の算定に用いられた主要な仮定(割引率、成長率など)

のれん・耐用年数を確定できない無形資産に関する追加開示

のれんまたは耐用年数を確定できない無形資産が配分されたCGUのうち、帳簿価額が重要なものについては、さらに詳細な情報開示が求められます。これには、回収可能価額の算定方法、将来キャッシュ・フロー予測に用いられた主要な仮定、割引率、および主要な仮定が合理的に変化した場合に帳簿価額が回収可能価額を上回る可能性(感応度分析)などが含まれます。

まとめ

IAS第36号「資産の減損」は、資産の実質的な価値を財務諸表に反映させるための不可欠な基準です。実務においては、減損の兆候を適時に識別し、回収可能価額を合理的な仮定に基づいて慎重に算定するプロセスが極めて重要となります。特に、資金生成単位(CGU)の識別、のれんの減損テスト、そして詳細な開示要求事項への対応は、IFRS適用企業にとって主要な課題です。本基準の要求事項を正確に理解し、適切な社内プロセスを構築することが、財務報告の信頼性を高める鍵となります。

IAS第36号「資産の減損」に関するよくある質問まとめ

Q. IAS第36号における「資産の減損」とは、具体的にどのような状態を指しますか?

A. 資産の帳簿価額が、その資産の使用または売却によって回収できると見込まれる金額(回収可能価額)を上回っている状態を指します。この場合、帳簿価額を回収可能価額まで引き下げ、「減損損失」として認識する必要があります。

Q. 減損テストは、どのようなタイミングで実施する必要がありますか?

A. 原則として、毎期末に資産が減損している可能性を示す「兆候」があるかどうかを判定し、兆候があれば減損テストを実施します。ただし、「のれん」や「耐用年数を確定できない無形資産」については、兆候の有無にかかわらず、少なくとも年に1回、定期的に減損テストを実施しなければなりません。

Q. 減損の判定で使う「回収可能価額」はどのように計算しますか?

A. 「処分コスト控除後の公正価値」と「使用価値(将来キャッシュ・フローの現在価値)」を計算し、いずれか高い方の金額を回収可能価額とします。どちらか一方が帳簿価額を上回っていれば、資産は減損していないと判断されます。

Q. 「のれん」の減損はどのように考えればよいですか?

A. のれんは単独でキャッシュ・フローを生まないため、のれんが生み出す便益を享受する最小の資産グループである「資金生成単位(CGU)」に配分します。減損テストは、このCGU単位で、のれんを含めた帳簿価額とCGU全体の回収可能価額を比較して行います。

Q. 一度計上した減損損失は、将来回復したら元に戻せますか?

A. のれん以外の資産については、減損の要因となった事象が解消され、回収可能価額が回復したことを示す兆候がある場合に、減損損失の「戻入れ」が認められます。ただし、戻入れ後の帳簿価額は、過去に減損を認識しなかった場合の帳簿価額が上限となります。一方で、「のれん」について認識した減損損失は、その後の戻入れが禁止されています。

Q. 「使用価値」を算定する際の将来キャッシュ・フローを見積もる上での注意点は何ですか?

A. 将来キャッシュ・フローは、経営者が承認した直近の事業計画など、合理的で裏付けのある仮定に基づいて見積もる必要があります。予測期間は原則として最長5年とし、まだ確定していない将来のリストラクチャリングや設備投資の効果、財務活動や法人税に関連するキャッシュ・フローは含めてはいけません。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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