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IAS24号「関連当事者についての開示」の目的と実例解説

2025-06-30
目次

IFRSを適用する企業にとって、関連当事者との取引や関係性の開示は極めて重要な実務テーマです。本記事では、IAS第24号「関連当事者についての開示」の第1項に定められた目的の詳細から、その背景、さらには具体的なケーススタディまでを網羅的に解説いたします。財務諸表の透明性を確保し、投資家の適切な意思決定を支援するための必須知識をご確認ください。

IAS24号における開示の目的と重要性

関連当事者開示の基本目的

IAS第24号の最大の目的は、企業の財務諸表に対して、関連当事者の存在や取引が与える影響を明示することです。具体的には、関連当事者との取引や、コミットメントを含む未決済残高が、企業の財政状態および純損益に影響を及ぼしている可能性について、財務諸表利用者の注意を喚起するための開示を求めています(IAS24.1)。

項目 内容(IAS24.1)
開示の対象 関連当事者の存在、関連当事者との取引、未決済残高(コミットメント含む)
影響を受ける財務項目 企業の財政状態、純損益

なぜ関連当事者の開示が必要なのか

企業が子会社や関連会社を通じて事業を展開することは、一般的な商取引の形態です(IAS24.5)。しかし、関連当事者間では、独立した第三者間では成立しないような条件で取引が行われるリスクが潜んでいます。例えば、親会社に対して製造原価10,000円の製品を利益ゼロの10,000円で販売するといった取引が実行される可能性があります(IAS24.6)。こうした特殊な取引は企業の業績を歪める要因となるため、厳格な開示が求められます。

関連当事者との関係性がもたらす財務への影響

独立第三者間とは異なる取引価格のリスク

関連当事者との取引においては、市場価格とは異なる価格設定が行われることが少なくありません。例えば、市場金利が年利3%であるにもかかわらず、子会社に対して年利0.1%で1億円を貸し付けるようなケースです。このような取引は、企業の純損益財政状態に直接的な影響を与えるため、その事実を正確に把握することが不可欠です(IAS24.6)。

実際の取引が存在しなくても生じる影響

金銭のやり取りなど、実際の取引が発生していなくても、「関係性が存在するだけ」で企業に影響が及ぶ場合があります。例えば、親会社が持つ重要な影響力によって、子会社が将来の収益源となる5,000万円規模の新規研究開発プロジェクトを強制的に中止させられるケースなどです(IAS24.7)。関係性の存在自体が企業の機会損失を生む可能性があるため、投資家にとって重要な情報となります。

影響の要因 具体例(IAS24.7)
取引による影響 市場価格と乖離した条件での物品販売や資金貸付
関係性による影響 親会社の指示による特定事業からの撤退や開発中止

具体的なケーススタディで学ぶ関連当事者開示

不利な条件での貸付による財政状態への影響

企業Aの社長が、自身が100%出資する別会社Bに対して、市場金利(例:年利5%)よりも著しく低い無利息(年利0%)で1億円の事業資金を貸し付けるケースを想定します。もしこの関連当事者との取引が隠蔽された場合、投資家は企業Aの資金1億円が不当に流出している事実に気づくことができません。しかし、この取引事実と未決済残高が財務諸表に開示されることで、投資家は企業Aの財政状態への影響に適切に注意を払うことが可能となります(IAS24.1)。

親会社からの指示による事業機会の喪失

製造業の企業Cが、親会社Dからの強い指示により、年間1億円の利益が見込める新製品の開発を差し控えるケースです。これは親会社Dの主力事業との競合を避けるための措置ですが、企業Cと親会社Dの間で直接的な資金移動(取引)は発生していません。しかし、親会社Dとの関係性が存在すること自体が、企業Cの将来の成長機会を奪い、純損益に悪影響を及ぼしています(IAS24.7)。この関係性が開示されることで、投資家は企業Cの事業リスクを正確に評価できるようになります(IAS24.1、IAS24.8)。

ケーススタディ 財務諸表利用者への開示効果
社長関係会社への無利息貸付 資金流出リスクの把握と財政状態の正確な評価(IAS24.1)
親会社指示による開発中止 潜在的な機会損失と事業リスクの認知(IAS24.7、IAS24.8)

まとめ

IAS第24号「関連当事者についての開示」は、企業の財務諸表が関連当事者との関係性や取引によってどのような影響を受けているかを透明化するために不可欠な基準です。取引の有無にかかわらず、重要な影響力がもたらすリスクや機会の喪失を適切に開示することは、投資家の信頼を獲得し、適正な企業評価を促進する上で極めて重要です。実務においては、関連当事者の範囲を正確に特定し、網羅的な情報開示に努めることが求められます。

IAS24号「関連当事者についての開示」のよくある質問まとめ

Q.IAS第24号の主な目的は何ですか?

A.関連当事者の存在や取引が、企業の財政状態および純損益に影響を与えている可能性について、財務諸表利用者の注意を喚起する開示を行うことです(IAS24.1)。

Q.関連当事者との取引はなぜ注意が必要なのですか?

A.独立した第三者間では行われないような原価での販売や、市場価格と異なる価格設定が行われ、企業の業績が歪められるリスクがあるためです(IAS24.6)。

Q.実際の取引がなくても開示が必要なのはなぜですか?

A.親会社からの指示で子会社が特定の事業活動を制限されるなど、関係性が存在するだけで企業の純損益や財政状態に影響を及ぼすことがあるためです(IAS24.7)。

Q.関連当事者との未決済残高に関する開示要件は何ですか?

A.コミットメントを含む未決済残高は、企業の財政状態への影響を評価するために開示が求められます(IAS24.1)。

Q.関連当事者情報の開示は投資家にどのようなメリットをもたらしますか?

A.企業が直面しているリスクや機会を正確に把握できるようになり、適正な企業評価や意思決定が可能となります(IAS24.8)。

Q.社長が自身の別会社に無利息で貸付を行った場合、どのような影響がありますか?

A.企業の資金が不当に流出し財政状態に影響を与えるため、その事実を開示することで投資家に対する情報の透明性が確保されます(IAS24.1)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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