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IAS第36号「資産の減損」の基本!第6項の定義を徹底解説

2024-11-02
目次

国際会計基準(IFRS)の中でも、特に実務上の判断が求められるIAS第36号「資産の減損」。この基準を正しく適用するためには、まずその土台となる用語の定義を正確に理解することが不可欠です。本記事では、IAS第36号の第6項で定められている主要な用語について、その定義と実務上の意味合いを網羅的かつ詳細に解説します。

IAS第36号「資産の減損」における主要な用語の定義

IAS第36号は、資産の帳簿価額がその回収可能価額を上回らないことを確実にするための会計処理を定めています。その一貫した適用を担保するため、第6項では基準書全体で用いられる基本的な用語が明確に定義されています。これらの定義は、減損の兆候の識別から損失の測定・認識に至るまで、すべてのプロセスの基礎となります。

資産の価値評価に関する用語

資産の減損を判断する上で、その資産の価値をどのように評価するかが最も重要です。IAS第36号では、会計上の価値と経済的な価値を示す複数の指標が定義されています。

用語 定義
帳簿価額 資産が減価償却(償却)累計額及び減損損失累計額を控除した後に、財務諸表上で認識されている金額を指します。いわば、会計上の簿価です。
回収可能価額 資産の経済的な価値を示すもので、「処分コスト控除後の公正価値」と「使用価値」のいずれか高い方の金額で測定されます。減損テストにおいて、この金額と帳簿価額を比較します。
公正価値 測定日時点で、市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取るであろう価格(出口価格)を指します。詳細はIFRS第13号「公正価値測定」で規定されています。
使用価値 資産または資金生成単位を継続的に使用することによって生じると見込まれる、将来キャッシュ・フローの現在価値を指します。企業固有の価値を反映した測定値です。

減損の認識と測定に関する用語

資産の価値を評価した結果、減損が必要と判断された場合に、その損失額をどのように計算し、会計処理に反映させるかに関連する用語です。

用語 定義
減損損失 資産または資金生成単位の帳簿価額が、その回収可能価額を超過する金額を指します。この超過額が、費用として認識されることになります。
処分コスト 資産の処分に直接起因する増分コストを指します。例えば、仲介手数料や印紙税などが該当しますが、金融コストや法人所得税費用は含まれません。
減価償却(償却) 資産の償却可能額(取得原価等から残存価額を控除した額)を、その耐用年数にわたって規則的に費用配分する手続きです。
耐用年数 企業が資産を利用可能であると予想される期間、またはその資産から得られると予想される生産高や単位数を指します。

資産のグルーピングに関する用語

個々の資産レベルで減損の評価ができない場合、資産をグループ化して評価する必要があります。その際の単位に関する定義です。

用語 定義
資金生成単位(CGU) 他の資産又は資産グループからのキャッシュ・インフローとはおおむね独立したキャッシュ・インフローを生成する、最小の識別可能な資産グループを指します。例えば、個別の店舗や工場などが該当し得ます。
全社資産 のれん以外の資産で、特定の資金生成単位だけでなく、複数の資金生成単位の将来キャッシュ・フローに寄与する資産を指します。本社ビルや共通のITシステムなどが典型例です。

各定義の詳細解説と実務上のポイント

定義を理解するだけでなく、その背景にある考え方や実務でどのように適用されるかを知ることが重要です。ここでは特に重要な用語を深掘りします。

回収可能価額 – 合理的な経営判断の反映

回収可能価額が「処分コスト控除後の公正価値」と「使用価値」のいずれか高い方とされているのは、企業(経営者)の合理的な行動を反映するためです。企業は、資産を売却する方が有利(公正価値が高い)であれば売却を選択し、継続して使用する方が有利(使用価値が高い)であれば使用を継続するはずです。減損テストは、この経済的に最も合理的な選択肢を前提として資産価値を評価するという考え方に基づいています。

資金生成単位(CGU) – 識別の重要性と判断基準

CGUの識別は、減損テストの結果に大きな影響を与えるため、慎重な判断が求められます。ポイントは「おおむね独立したキャッシュ・インフロー」を生成するかどうかです。例えば、複数の店舗が共通の配送センターやマーケティング部門を利用している場合でも、各店舗が生み出す売上(キャッシュ・インフロー)が他の店舗から独立して識別できるのであれば、各店舗を個別のCGUとすることができます。共有インフラなどのコスト(キャッシュ・アウトフロー)は、CGU識別の直接的な基準にはなりません。

公正価値 – IFRS第13号に基づく出口価格

公正価値は、IFRS第13号で詳細に定義されており、単なる市場価格とは異なります。これは「出口価格」、すなわち資産を売却して手にするであろう金額を意味します。活発な市場が存在する場合はその市場価格が基礎となりますが、そうでない場合は、類似資産の取引価格や、評価技法(インカム・アプローチなど)を用いて算定する必要があります。あくまで市場参加者の視点から測定される客観的な価値です。

使用価値 – 将来キャッシュ・フローの現在価値

使用価値は、企業がその資産を使い続けることで将来どれだけのキャッシュを生み出すかという、企業固有の価値を測定するものです。この算定には、将来キャッシュ・フローの合理的な見積もりと、そのキャッシュ・フローの時間的価値を反映させるための適切な割引率の選定という、2つの重要な見積もり要素が伴います。これらの見積もりは、経営者の予測や判断に大きく依存するため、その客観性や妥当性を確保することが実務上の大きな課題となります。

まとめ

IAS第36号「資産の減損」を正しく適用する上で、第6項で定義されている用語の正確な理解は避けて通れません。帳簿価額回収可能価額資金生成単位(CGU)といった基本的な概念は、減損会計のすべてのプロセスの根幹をなします。特に、回収可能価額の算定における「処分コスト控除後の公正価値」と「使用価値」の比較や、実務上の判断が求められるCGUの識別は、減損テストの結論を左右する重要な要素です。これらの定義とその背景にある考え方をマスターすることが、適切な減損会計処理に向けた第一歩となるでしょう。

IAS第36号「資産の減損」の定義に関するよくある質問まとめ

Q. IAS第36号における「減損損失」とは何ですか?

A. 資産や資金生成単位の帳簿価額が、その資産から回収できる見込み額(回収可能価額)を超えてしまった場合の、その超過額のことです。つまり、帳簿に載っている価値よりも実際の価値が低くなった差額を損失として認識します。

Q. 資産の「回収可能価額」はどのように計算するのですか?

A. 「処分コスト控除後の公正価値」と「使用価値」の2つを計算し、どちらか高い方の金額を回収可能価額とします。これは、企業が資産を売却するか、使い続けるかのうち、より有利な方を選択するという合理的な行動を反映しています。

Q. 「資金生成単位(CGU)」とは、具体的にどのようなものですか?

A. 他の資産から独立してキャッシュ・インフローを生み出すことができる、最も小さな資産グループのことです。例えば、個別の店舗や工場などが該当することがあります。重要なのは、キャッシュ・インフローが独立しているかどうかであり、共有コスト(アウトフロー)は考慮されません。

Q. 「公正価値」と「使用価値」の主な違いは何ですか?

A. 「公正価値」は、資産を今すぐ市場で売却した場合に得られる価格を指します。一方、「使用価値」は、その資産を将来にわたって使い続けた場合に得られると予測されるキャッシュ・フローの現在の価値を指します。回収可能価額は、この2つのうち高い方で評価されます。

Q. 減損会計における「処分コスト」には、どのような費用が含まれますか?

A. 資産の処分に直接関連して発生する追加的なコストを指します。例えば、法務費用、印紙税、資産の撤去費用などが含まれます。ただし、金融コストや法人所得税費用は含まれない点に注意が必要です。

Q. 減損を判断する際の「帳簿価額」とは何ですか?

A. 資産が財務諸表に記載されている金額のことで、取得原価から減価償却(または償却)の累計額と、過去に認識した減損損失の累計額を差し引いた後の金額を指します。この帳簿価額と回収可能価額を比較して減損の要否を判断します。

事務所概要
社名
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対応責任者
公認会計士 島本 雅史

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