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IAS第33号「1株当たり利益」の適用範囲と実務対応

2025-03-14
目次

国際財務報告基準(IFRS)におけるIAS第33号「1株当たり利益」は、企業の収益性を一株当たりで評価するための重要な指標です。本記事では、IAS第33号の適用範囲(第2項〜第4A項)について、対象となる企業や財務諸表の要件、連結と個別の表示ルール、および具体的な実務ケーススタディを詳しく解説いたします。

IAS第33号の適用対象となる企業と財務諸表

公開市場で取引される企業の義務

IAS第33号は、主に公開市場で株式が取引されている企業を対象としています。具体的には、普通株式または潜在的普通株式が、国内または外国の証券取引所、あるいは店頭市場(ローカルかつ地域的な市場を含む)で取引されている企業の個別財務諸表および連結財務諸表に適用しなければなりません(第2項)。

適用対象となる財務諸表 適用要件(第2項)
個別財務諸表 公開市場で株式が取引されている、または発行目的で規制当局へ提出過程にある
連結財務諸表 親会社の株式が公開市場で取引されている、または発行目的で規制当局へ提出過程にある

上場準備中(IPO)の企業の取り扱い

現在非上場であっても、将来的な新規株式公開(IPO)に向けて準備を進めている企業は注意が必要です。公開市場で普通株式を発行する目的で、証券取引委員会などの規制当局に財務諸表を提出している、あるいは提出する過程にある企業も、本基準書の適用対象となります(第2項)。例えば、非上場企業が証券取引所への上場申請のために有価証券届出書を提出する準備を進めている場合、株式が未公開であっても、提出する個別財務諸表および連結財務諸表においてIAS第33号に準拠した1株当たり利益の計算と表示が義務付けられます。

非上場企業による自発的な開示要件

IAS第33号の義務的な適用範囲に該当しない非上場企業であっても、経営陣の判断により自発的に1株当たり利益を開示するケースがあります。債権者や親会社への業績報告目的などで開示を選択した場合、独自の計算方法を用いることは認められず、本基準書の定めに完全に準拠して計算および開示を行わなければなりません(第3項)。

企業の状況 1株当たり利益の開示要件
義務的適用対象(上場・IPO準備) IAS第33号に準拠した開示が必須(第2項)
自発的開示を行う非上場企業 IAS第33号に準拠した開示が必須(第3項)

連結財務諸表と個別財務諸表における表示の厳格なルール

連結情報と個別情報の混在禁止

企業がIFRS第10号およびIAS第27号に従って、連結財務諸表と個別財務諸表の両方を作成・表示している場合、IAS第33号で要求される開示は連結情報のみに基づいて表示しなければなりません(第4項)。親会社単体の業績に基づく1株当たり利益を開示したい場合、その情報は親会社単体の個別財務諸表の包括利益計算書にのみ記載することが求められます。連結財務諸表内に親会社単体の数値を併記することは、情報利用者の混乱を招くため明確に禁止されています。

分離した計算書を採用した場合の表示方法

IAS第1号「財務諸表の表示」に基づき、純損益とその他の包括利益を1つの「包括利益計算書」ではなく、「分離した計算書(純損益計算書など)」とそこから始まる「包括利益計算書」の2つに分けて表示する方式を採用している企業もあります。この場合、1株当たり利益の数値は、純損益を示す分離した計算書においてのみ表示しなければならないと厳格に規定されています(第4A項)。包括利益計算書側に記載することは認められません。

適用範囲に関する規定の背景とIASBの意図

財務諸表利用者の誤解を防ぐためのルール策定

第4項における「連結情報と個別情報の取り扱い」の背景には、投資家などの財務諸表利用者の誤解を防止するという国際会計基準審議会(IASB)の強い意図があります。2002年の公開草案では、親会社単体の1株当たり利益の表示を完全に削除することが提案されていました(結論の根拠BC4項)。これは、2種類の1株当たり利益が同時に表示されることによる混乱を懸念したためです(結論の根拠BC5項)。しかし、議論の結果、親会社単体の情報も特定の利用者には有用であると判断され、選択肢として残されました。その代わり、利用者の誤解を避けるための明確なルールとして、連結財務諸表の中に親会社単体の数値を混在させることを禁止する現在の規定が設けられました(結論の根拠BC6項)。

まとめ

IAS第33号「1株当たり利益」の適用範囲は、すでに公開市場で取引されている上場企業だけでなく、上場申請に向けて準備を進めているIPO準備企業にも及びます。また、非上場企業が自発的に開示する場合も基準への完全な準拠が求められます。特に、連結財務諸表と個別財務諸表の両方を作成する企業や、分離した計算書を採用する企業においては、表示場所に関する厳格なルール(第4項および第4A項)が存在するため、実務においてはこれらの規定を正確に理解し、財務諸表利用者に誤解を与えない適切な開示を行うことが重要です。

IAS第33号の適用範囲に関するよくある質問まとめ

Q.IAS第33号はどのような企業に適用されますか?

A.普通株式または潜在的普通株式が公開市場で取引されている企業、および公開市場で普通株式を発行する目的で規制当局に財務諸表を提出する過程にある企業に適用されます(第2項)。

Q.非上場企業が自発的に1株当たり利益を開示する場合、独自の計算方法を使用できますか?

A.いいえ、使用できません。非上場企業が自発的に開示を選択した場合でも、IAS第33号の定めに完全に準拠して1株当たり利益を計算し、開示する必要があります(第3項)。

Q.連結財務諸表と個別財務諸表を作成している場合、1株当たり利益はどのように表示すべきですか?

A.本基準書で要求される開示は、連結情報のみに基づいて表示しなければなりません。個別財務諸表に基づく1株当たり利益は、個別財務諸表の包括利益計算書にのみ表示できます(第4項)。

Q.連結財務諸表の中に、参考として親会社単体の1株当たり利益を併記することは可能ですか?

A.いいえ、認められていません。利用者の混乱や誤解を避けるため、連結財務諸表の中に親会社単体の1株当たり利益の数値を混在させて表示することは厳格に禁止されています(第4項)。

Q.純損益計算書と包括利益計算書を分離して表示している場合、1株当たり利益はどこに記載しますか?

A.純損益の項目を分離した計算書(純損益計算書など)に表示することを選択した場合、1株当たり利益もその分離した計算書においてのみ表示しなければなりません(第4A項)。

Q.なぜ連結財務諸表と個別財務諸表での1株当たり利益の表示が厳格に分けられているのですか?

A.親会社の個別財務諸表に基づく数値と、連結財務諸表に基づく数値が同時に表示されることで、財務諸表利用者に誤解や混乱を与えるのを防ぐためです(結論の根拠BC5項・BC6項)。

事務所概要
社名
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住所
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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