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IAS第28号「重要な影響力」の判定基準と実務対応を徹底解説

2025-08-12
目次

IFRSにおける持分法適用の前提となる重要な影響力の判定は、企業会計において極めて重要なプロセスです。本記事では、IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」の第5項から第9項に基づき、議決権割合による推定、潜在的議決権の取扱い、重要な影響力の喪失要件について、具体的なケーススタディや結論の根拠を交えながら詳細に解説します。

重要な影響力の推定と割合基準

企業が投資先に対して重要な影響力を有しているかどうかの第一段階として、保有する議決権の割合に基づく客観的な推定が行われます。この基準を正しく理解することが、関連会社としての会計処理を決定する基礎となります。

議決権割合に基づく推定の原則

企業が投資先の議決権の20%以上を、直接的又は子会社を通じて間接的に保有している場合、重要な影響力がないことが明確に証明できない限り、企業は重要な影響力を有していると推定されます(参考:IAS28.5)。一方で、保有割合が20%未満の場合は、反対の推定が働きます。

議決権の保有割合 重要な影響力の推定
20%以上 原則として重要な影響力を有すると推定される
20%未満 原則として重要な影響力を有していないと推定される

この20%という基準は絶対的なものではなく、あくまで推定を働かせるための出発点として機能します(参考:IAS28.5)。

他の投資者による支配の影響

実務上、他の特定の投資者が投資先の議決権の大部分(例えば60%など)を所有し、投資先を支配しているケースがあります。しかし、他の投資者が支配しているという事実自体は、自社が重要な影響力を有することを必ずしも妨げるものではありません(参考:IAS28.5)。自社が方針決定プロセスに参加するパワーを有していれば、関連会社として持分法を適用する必要があります。

重要な影響力の具体的な証明方法

議決権割合が20%未満であっても、実質的な関係性から重要な影響力が明確に証明できる場合があります。IAS第28号では、これを証明するための具体的な事実関係を列挙しています。

重要な影響力を裏付ける5つの事実

企業による投資先に対する重要な影響力は、通常、以下のいずれかの方法や事実によって証明されます(参考:IAS28.6)。これらの要素が複数組み合わさることで、より強力な証明となります。

証明方法(事実) 具体例および詳細
取締役会等への参加 投資先の取締役会又は同等の経営機関へ役員を派遣し参加すること(参考:IAS28.6(a))
方針決定プロセスへの参加 配当その他の分配の意思決定を含む、投資先の財務・経営方針決定への関与(参考:IAS28.6(b))
重要性がある取引 企業と投資先との間で、事業運営に影響を与える規模の重要な取引があること(参考:IAS28.6(c))
経営陣の人事交流 双方の企業間で、重要な経営人材の派遣や出向が行われていること(参考:IAS28.6(d))
不可欠な技術情報の提供 投資先の事業活動に欠かせない特許技術やノウハウを提供していること(参考:IAS28.6(e))

潜在的議決権の取扱いと評価

現代の複雑な金融取引においては、普通株式だけでなく、将来議決権に転換される可能性のある金融商品も考慮する必要があります。これらを潜在的議決権と呼びます。

現在行使可能な潜在的議決権の考慮

企業は、普通株式に転換可能な株式ワラント、株式コール・オプション、負債性金融商品などを保有している場合があります。重要な影響力を有しているかどうかを判定する際には、自社だけでなく他の企業が所有しているものも含め、現在行使可能又は転換可能な潜在的議決権の存在と影響を考慮しなければなりません(参考:IAS28.7)。ただし、将来のある日付や事象が発生するまで行使できないものは考慮の対象外となります。

経営者の意図と財務能力の除外

潜在的議決権が重要な影響力に寄与するかを判定する際、オプションを行使するための経営者の意図や、行使に必要な資金力といった財務能力は考慮から除外しなければなりません(参考:IAS28.8)。あくまで、潜在的議決権の行使条件や契約上の取決めなど、客観的な事実と状況に基づいて検討する必要があります。

重要な影響力の喪失要件

一度取得した重要な影響力も、事業環境の変化や契約の変更により喪失することがあります。喪失のタイミングを正確に把握することは、持分法適用の終了を意味するため非常に重要です。

パワーの喪失と所有水準の関係

企業は、投資先の財務及び経営上の方針決定に参加するパワーを失った時に、重要な影響力を喪失します(参考:IAS28.9)。この喪失は、株式保有割合(所有水準)の絶対的・相対的な変更に関わらず生じる可能性があります。

喪失の要因 具体的な状況例
外部要因による支配の移行 関連会社が政府、裁判所、行政又は規制当局の支配下に入る場合(参考:IAS28.9)
契約上の取決めによる変更 株主間協定の改定等により、方針決定への参加権限を失う場合(参考:IAS28.9)

基準設定の背景と具体的なケーススタディ

IAS第28号の規定がどのように実務に適用されるかを深く理解するために、基準設定の背景となる結論の根拠や、具体的なケーススタディを確認します。

結論の根拠とアジェンダ決定

IFRS第10号の開発に伴い支配の定義が見直されましたが、IASBは重要な影響力の定義や潜在的議決権の要求事項を単独で変更することは不適切と判断し、現行のルールを維持しました(参考:IAS28.BC15-BC16)。また、ファンド・マネジャーが代理人として保有する権限については、IFRS第12号の開示要求等を用いて企業が自らの権限を適切に評価し開示すべきとされ、新たな規定の追加は見送られました(参考:アジェンダ決定E1)。

実務に役立つ3つのケーススタディ

ケーススタディ1:議決権15%保有での重要な影響力の証明
企業Aが企業Bの議決権を15%取得しました。20%未満のため原則として重要な影響力はないと推定されます(参考:IAS28.5)。しかし、企業Aは企業Bの取締役会に役員を1名派遣し(参考:IAS28.6(a))、不可欠な特許技術を独占的に提供しています(参考:IAS28.6(e))。これらの事実から、企業Aは企業Bに対して重要な影響力を有すると判定され、持分法が適用されます。

ケーススタディ2:潜在的議決権による影響力の獲得
企業Cは企業Dの株式を10%保有し、さらに15%を追加取得できる現在行使可能な株式コール・オプションを保有しています。企業Cに資金的な余裕(財務能力)がなく行使の意図がなくても、それらは考慮から除外されます(参考:IAS28.8)。現在行使可能な潜在的議決権を考慮した結果、実質的な議決権割合が25%に達し、重要な影響力を有していると判定される可能性があります(参考:IAS28.7)。

ケーススタディ3:株式保有割合の変更を伴わない喪失
企業Eは企業Fの株式を30%保有し、重要な影響力を行使していました。しかし、企業Fが規制違反により政府の特別管理下(行政当局の支配下)に入りました。企業Eは株式30%を維持していますが、方針決定に参加するパワーを完全に奪われたため、この時点で重要な影響力を喪失したとみなされ、持分法の適用を中止します(参考:IAS28.9)。

まとめ

IAS第28号に基づく重要な影響力の判定は、単なる議決権割合の機械的な計算にとどまらず、取締役会への参加や重要な取引の有無、さらには現在行使可能な潜在的議決権の客観的な評価など、多角的な事実関係の検討が求められます。また、株式の売却がなくても、外部環境の変化によって影響力を喪失するケースがある点にも留意が必要です。実務においては、これらの規定を正しく適用し、適切な会計処理と開示を行うことが不可欠です。

IAS第28号「重要な影響力」のよくある質問まとめ

Q.議決権割合が20%未満の場合、常に重要な影響力はないと判定されますか?

A.いいえ、原則として重要な影響力はないと推定されますが、取締役会への参加や不可欠な技術情報の提供などの事実により明確に証明できる場合は、重要な影響力を有すると判定されます(参考:IAS28.5、IAS28.6)。

Q.他の投資者が投資先の議決権の過半数を保有している場合、自社は重要な影響力を持つことができますか?

A.はい、他の投資者が過半数を保有して支配している事実自体は、自社が重要な影響力を有することを必ずしも妨げるものではありません(参考:IAS28.5)。

Q.重要な影響力の証明にはどのような事実が考慮されますか?

A.取締役会への参加、方針決定プロセスへの参加、重要性がある取引、経営陣の人事交流、不可欠な技術情報の提供のいずれかによって通常証明されます(参考:IAS28.6)。

Q.株式コール・オプションなどの潜在的議決権はどのように評価されますか?

A.現在行使可能又は転換可能な潜在的議決権の存在及び影響は考慮されますが、将来の事象が発生するまで行使できないものは考慮されません(参考:IAS28.7)。

Q.潜在的議決権の評価において、経営者の意図や資金力は考慮されますか?

A.いいえ、潜在的議決権を行使するための経営者の意図や財務能力は考慮から除外して、客観的な事実と状況に基づいて判定する必要があります(参考:IAS28.8)。

Q.株式の保有割合が変わらなくても、重要な影響力を喪失することはありますか?

A.はい、投資先が政府や行政当局の支配下に入る場合など、財務及び経営方針の決定に参加するパワーを失った時点で、所有水準に変更がなくても重要な影響力を喪失します(参考:IAS28.9)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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