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IAS第27号「個別財務諸表」の定義と実務要件を徹底解説

2025-07-09
目次

国際財務報告基準(IFRS)におけるIAS第27号「個別財務諸表」は、企業が単体の財務諸表を作成する際の会計処理や開示要件を定めた重要な基準書です。本記事では、IAS第27号の第4項から第8A項に規定されている「定義」に焦点を当て、個別財務諸表の正確な意味や、それが「唯一の財務諸表」となる例外的なケース、さらには実務上の具体的なケーススタディについて詳しく解説いたします。

IAS第27号における主要な定義と位置づけ

IFRSを適用する企業にとって、何が個別財務諸表に該当するのかを正確に理解することは実務の第一歩です。ここでは、主要な用語の定義とその位置づけについて解説します。

連結財務諸表と個別財務諸表の定義

本基準書において、連結財務諸表個別財務諸表は明確に区別されています。連結財務諸表がグループ全体を単一の経済的実体として捉えるのに対し、個別財務諸表は親会社や投資者単体の視点から投資を評価する財務諸表です。(IAS27.4)

用語 定義内容
連結財務諸表 企業集団の資産、負債、資本、収益、費用及びキャッシュ・フローを、単一の経済的実体のものとして表示する財務諸表です。(IAS27.4)
個別財務諸表 子会社、共同支配企業及び関連会社に対する投資を、「取得原価」「IFRS第9号に基づく公正価値」「IAS第28号に基づく持分法」のいずれかで処理する財務諸表です。(IAS27.4)

その他の関連用語と適用基準

IAS第27号では、特定の用語について他のIFRS基準書で定義された意味をそのまま使用します。これにより、IFRS全体での用語の一貫性が保たれています。(IAS27.5)

関連するIFRS基準書 参照される主要な用語
IFRS第10号「連結財務諸表」 投資先に対する支配、企業集団、投資企業、親会社、子会社
IFRS第11号「共同支配の取決め」 共同支配、共同支配企業、共同支配投資者
IAS第28号「関連会社及び共同支配企業に対する投資」 関連会社、重要な影響力、持分法

個別財務諸表の基本的な位置づけ

個別財務諸表は、原則として連結財務諸表に「追加して」表示される財務諸表として位置づけられています。また、子会社を持たない企業であっても、IAS第28号により持分法で会計処理することが求められる関連会社や共同支配企業への投資を有している場合、その財務諸表に追加して表示されるものも該当します。(IAS27.6)
一方で、子会社、関連会社、または共同支配企業に対する持分を一切有していない企業の財務諸表は、投資の会計処理を選択する余地がないため、本基準書でいう個別財務諸表には該当しません。(IAS27.7)

個別財務諸表が「唯一の財務諸表」となる例外規定

原則として追加的に表示される個別財務諸表ですが、特定の要件を満たす場合には、企業が提出する「唯一の財務諸表」として表示することが認められる、あるいは義務付けられるケースが存在します。

連結や持分法の適用が免除される企業

他の基準書によって連結財務諸表の作成や持分法の適用が免除されている企業は、例外として個別財務諸表を唯一の財務諸表として表示することが可能です。(IAS27.8)

免除の根拠となる基準 対象となる状況
IFRS第10号第4項(a) 連結財務諸表の作成が免除されている中間親会社などの場合。(IFRS10.4(a))
IAS第28号第17項 関連会社等への投資に対する持分法の適用が免除されている場合。(IAS28.17)

投資企業における個別財務諸表の義務付け

当期およびすべての比較対象期間において、投資企業に該当する企業は、子会社のすべてについて連結の例外措置を適用することが求められます。(IFRS10.31)
この場合、当該投資企業は連結財務諸表を作成せず、子会社に対する投資をIFRS第9号に従って純損益を通じて公正価値で測定した個別財務諸表を、自社の「唯一の財務諸表」として表示しなければなりません。(IAS27.8A)

IAS第27号の定義規定が整備された背景

IAS第27号の定義や例外規定が現在の形になった背景には、IFRS基準全体の再編と、新たなビジネスモデルに対する会計処理の適正化があります。

関連基準書との整合性確保

かつてのIAS第27号には連結財務諸表に関する規定も含まれていましたが、これがIFRS第10号として分離・独立しました。それに伴い、IAS第27号は単独の「個別財務諸表」に関する基準書として再編され、IFRS第10号、IFRS第11号、IAS第28号といった他の関連基準群と用語の定義や使用方法を完全に整合させる必要が生じました。また、持分法のみを適用する投資者が、IFRS第12号などの開示要件において混乱しないよう、個別財務諸表が「追加的な財務諸表」であることが厳密に整理されました。

「投資企業」概念の導入による影響

第8A項が追加された最大の理由は、投資企業という概念の導入です。投資ファンドやベンチャーキャピタルのような企業にとっては、多数の投資先子会社の業績を一つ一つ連結して合算するよりも、特定の子会社に対する投資をIFRS第9号に従って純損益を通じて公正価値で測定する方が、財務諸表利用者にとって事業の実態を表す有用な情報となります。この連結例外規定の導入に伴い、投資企業が提出する財務諸表は連結財務諸表ではなく、公正価値評価を適用した個別財務諸表が唯一の財務諸表となることが基準上で明確化されました。

実務に役立つ具体的なケーススタディ

ここでは、IAS第27号の規定が実際の企業実務においてどのように適用されるのか、3つの具体的なケーススタディを通じて解説します。

ケース1:連結財務諸表に追加して表示するケース

製造業を営む親会社A社は、複数の海外子会社を有しています。A社はグループ全体の業績を示すために、親会社および子会社の資産や負債を単一の経済的実体として表示する連結財務諸表を作成しています。(IAS27.4)
同時に、A社が所在する国の会社法により単体決算の開示も求められているため、子会社株式を取得原価で評価した個別財務諸表を作成しました。この場合、A社の個別財務諸表は、連結財務諸表に「追加して」表示されるものに該当します。(IAS27.6)

ケース2:本基準書の個別財務諸表に該当しないケース

IT企業B社は、他社への出資を一切行っておらず、子会社、関連会社、共同支配企業のいずれも有していません。B社が自社の財政状態や業績を報告するために作成した財務諸表は、通常の単体財務諸表ではありますが、子会社等への投資の会計処理を選択する余地がないため、IAS第27号で定義される個別財務諸表には該当しません。(IAS27.7)

ケース3:投資企業が個別財務諸表のみを作成するケース

多数のベンチャー企業(子会社)に投資を行い、事業の運営ではなく専ら投資収益を目的とするベンチャーキャピタルC社を想定します。C社はIFRS第10号における投資企業の要件を満たしています。(IAS27.5)
C社は、IFRS第10号の規定により子会社を連結することが免除されています。そのため、すべての子会社に対する投資をIFRS第9号に従って純損益を通じて公正価値で測定した財務諸表を作成し、これを自社の「唯一の財務諸表」として公表します。これは本基準書の規定によって明確に義務付けられている処理です。(IAS27.8A)

まとめ

IAS第27号「個別財務諸表」における定義は、単なる用語の解説にとどまらず、企業がどのような財務諸表を作成・開示する義務を負うのかを決定する重要な基準です。原則として個別財務諸表は連結財務諸表に追加して作成されるものですが、投資企業に該当する場合などは、それが「唯一の財務諸表」となる点に留意が必要です。実務においては、自社がどの要件に該当するのかを正確に判定し、適切な会計処理と開示を行うことが求められます。

IAS第27号「個別財務諸表」のよくある質問まとめ

Q. IAS第27号における「個別財務諸表」とは何ですか?

A. 子会社、共同支配企業及び関連会社に対する投資を、取得原価、IFRS第9号に基づく公正価値、またはIAS第28号に基づく持分法のいずれかで処理する財務諸表を指します。(IAS27.4)

Q. 子会社や関連会社を全く持たない企業の財務諸表は、個別財務諸表に該当しますか?

A. 該当しません。子会社や関連会社等への投資を有していない企業の財務諸表は、投資の会計処理を選択する余地がないため、IAS第27号における個別財務諸表には含まれません。(IAS27.7)

Q. 個別財務諸表は必ず連結財務諸表と一緒に作成しなければならないのですか?

A. 原則として連結財務諸表等に追加して表示されますが、IFRS第10号やIAS第28号の規定により連結や持分法の適用が免除されている企業は、個別財務諸表を唯一の財務諸表として表示することができます。(IAS27.6, IAS27.8)

Q. 「投資企業」とはどのような企業を指しますか?

A. 投資企業とは、事業の運営ではなく専ら資本売却益や投資収益を目的として投資を行う企業を指し、その定義はIFRS第10号「連結財務諸表」に従います。(IAS27.5)

Q. 投資企業に該当する場合、財務諸表の作成においてどのような義務が生じますか?

A. 投資企業は子会社を連結せず、子会社に対する投資をIFRS第9号に従って純損益を通じて公正価値で測定した個別財務諸表を、自社の唯一の財務諸表として表示しなければなりません。(IAS27.8A)

Q. なぜ投資企業には連結の例外措置が設けられているのですか?

A. 投資ファンドなどの投資企業にとっては、多数の投資先の業績を連結するよりも、投資を公正価値で評価する方が、財務諸表利用者にとって事業の実態を表す有用な情報となるためです。(IAS27.8A)

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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