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IAS第24号「関連当事者についての開示」適用範囲を徹底解説

2025-07-01
目次

IFRSを適用する企業にとって、関連当事者との取引や関係性の開示は、財務諸表の透明性を確保する上で極めて重要です。本記事では、IAS第24号「関連当事者についての開示」における第2項から第4項に焦点を当て、適用範囲の詳細、基準改訂の背景、および具体的なケーススタディをビジネスパーソン向けに詳しく解説いたします。

IAS第24号における適用対象の範囲

IAS第24号では、企業が関連当事者に関する情報を財務諸表に適切に反映させるための適用範囲を明確に定めています。ここでは、適用対象となる具体的な事項と、対象となる財務諸表の種類について解説します。

適用対象となる4つの事項

本基準書は、関連当事者との関係性や取引を正確に把握し、開示するために、以下の4つの事項に適用しなければならないと規定しています。これにより、企業の財政状態に影響を与える可能性のある取引が漏れなく識別されます(参考:IAS24.2)。

適用事項 内容
(a) 関係及び取引の識別 関連当事者との関係及び取引を特定すること
(b) 未決済残高の識別 企業と関連当事者間の未決済残高(コミットメント含む)を特定すること
(c) 開示要求状況の識別 上記(a)及び(b)の項目の開示が要求される状況を判断すること
(d) 開示内容の決定 識別された項目について行うべき具体的な開示内容を決定すること

適用される財務諸表の種類

本基準書は、IFRS第10号「連結財務諸表」またはIAS第27号「個別財務諸表」に従って作成される財務諸表に適用されます。親会社や投資先に対して共同支配または重要な影響力を有する投資者の財務諸表において、関連当事者との取引や未決済残高の開示が求められます。また、「単独財務諸表」にも適用されることが明記されています(参考:IAS24.3)。

財務諸表の種類 適用要件
連結及び個別財務諸表 関連当事者との関係、取引及び未決済残高の開示が必要
単独財務諸表 適用範囲の疑義を回避するため、同様に適用されることが明記

グループ内取引の開示と相殺消去のルール

企業集団内での取引は、外部との取引とは異なる性質を持つため、作成する財務諸表の種類によって取り扱いが異なります。ここでは、開示要件と連結時の相殺消去について整理します。

関連当事者取引の開示要件

企業の個別財務諸表や単独財務諸表においては、関連当事者との取引および企業集団内の他の企業との未決済残高(コミットメントを含む)を詳細に開示しなければなりません。これにより、特定の関係者との取引が企業の業績に与える影響を明示します(参考:IAS24.4)。

連結財務諸表における相殺消去

企業集団全体の業績を示す連結財務諸表を作成する場合、グループ内の関連当事者との取引および未決済残高は全額相殺消去しなければなりません。ただし、投資企業と純損益を通じて公正価値で測定する子会社との間の取引等は、相殺消去の例外となります(参考:IAS24.4)。

財務諸表の区分 取引・未決済残高の取り扱い
個別・単独財務諸表 関連当事者取引として開示する
連結財務諸表 原則として全額相殺消去する(投資企業の例外あり)

関連当事者開示の免除廃止とその背景

IAS第24号における適用範囲の規定は、過去の改訂を経て現在の厳格な形へと進化してきました。その背景には、投資家などの情報利用者からの強い要望が存在します。

1984年版基準からの改訂の経緯

1984年版の旧基準では、親会社の個別財務諸表や100%子会社の財務諸表が連結財務諸表とともに公表される場合、関連当事者についての開示が免除されていました。しかし、その後の改訂によってこの免除規定は完全に削除され、すべての関連財務諸表での開示が義務付けられました。

情報利用者にとっての開示の重要性

免除が廃止された最大の理由は、外部の財務諸表利用者が個別企業の財政状態や財務業績を正しく理解するために、関連当事者取引の情報が不可欠であるという認識が高まったためです。連結グループ内の企業は、収益や費用の大部分が関連当事者取引から生じている可能性があり、支援のレベルを含めた関係性の開示が求められます。また、「単独財務諸表」への適用が明記されたのは、IAS第27号の「個別財務諸表」との用語の差異による適用範囲の疑義を回避する目的があります。

具体的なケーススタディ:親会社と子会社の取引

ここでは、製造業を営む親会社(P社)と、その100%子会社である販売会社(S社)の取引を例に、財務諸表ごとの具体的な取り扱いを解説します。P社はS社へ年間10億円の製品を販売し、期末に2億円の売掛金が存在するケースを想定します。

個別・単独財務諸表での開示実務

P社およびS社がそれぞれの「個別財務諸表」または「単独財務諸表」を作成する際、本基準に従った開示が必要です。P社はS社への10億円の売上と2億円の売掛金を、S社はP社からの10億円の仕入と2億円の買掛金を、それぞれ関連当事者との取引及び未決済残高として識別し、注記等で開示しなければなりません。これにより、S社が親会社からの仕入に大きく依存している実態やリスクが利用者に伝わります(参考:IAS24.2、IAS24.3)。

企業 個別財務諸表での開示内容
親会社(P社) 子会社への売上10億円、売掛金2億円
子会社(S社) 親会社からの仕入10億円、買掛金2億円

連結財務諸表での相殺消去プロセス

P社が企業集団全体の「連結財務諸表」を作成する場合、P社とS社間の10億円の売上・仕入、および2億円の売掛金・買掛金は、グループ内部の資金移動にすぎません。そのため、連結手続においてこれらの内部取引および未決済残高は全額が相殺消去されます。結果として、外部に公表される連結財務諸表には、第三者に対する取引のみが表示され、グループ内の関連当事者取引は表示されません(参考:IAS24.4)。

まとめ

IAS第24号「関連当事者についての開示」の第2項から第4項では、適用対象となる事項や財務諸表の種類、グループ内取引の相殺消去ルールが厳格に定められています。過去の免除規定の廃止からもわかるように、関連当事者取引の開示は、企業の財政状態や依存関係を外部利用者が正確に評価するために不可欠な情報です。個別財務諸表では年間10億円の取引や2億円の未決済残高といった詳細な開示を行い、連結財務諸表では適切に相殺消去を行うという実務の基本を徹底することが、透明性の高い財務報告につながります。

関連当事者についての開示のよくある質問まとめ

Q. IAS第24号の適用対象となる主な事項は何ですか?

A. 関連当事者との関係及び取引の識別、未決済残高(コミットメントを含む)の識別、開示が要求される状況の識別、および開示内容の決定です。(参考:IAS24.2)

Q. 関連当事者についての開示はどの財務諸表に適用されますか?

A. IFRS第10号またはIAS第27号に従って作成される連結財務諸表、個別財務諸表、および単独財務諸表に適用されます。(参考:IAS24.3)

Q. グループ内の関連当事者取引は連結財務諸表でどのように扱われますか?

A. 原則として全額が相殺消去されます。ただし、投資企業と純損益を通じて公正価値で測定する子会社との間の取引は例外となります。(参考:IAS24.4)

Q. 過去の基準にあった開示の免除規定はなぜ廃止されたのですか?

A. 外部の利用者が個別企業の財政状態や業績を正しく理解するためには、関連当事者からの支援を含めた関係性や取引の開示が不可欠であると認識されたためです。

Q. 親会社と100%子会社間の取引は個別財務諸表で開示が必要ですか?

A. はい、必要です。依存度やリスクを正確に把握するため、売上・仕入や未決済残高を関連当事者取引として開示しなければなりません。(参考:IAS24.3)

Q. 「単独財務諸表」への適用が意図的に明記された理由は何ですか?

A. IAS第27号の定義である「個別財務諸表」と「単独財務諸表」の用語の違いによって、適用範囲に関する疑問が生じるのを防ぐためです。(参考:IAS24.3)

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対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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