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IAS第24号「関連当事者についての開示」実務とケーススタディ解説

2025-07-04
目次

IAS第24号「関連当事者についての開示」は、企業の財務諸表において関連当事者との関係や取引を透明性高く報告するための重要な基準です。本記事では、すべての企業に適用される開示規定(第13項〜第24項)の詳細、その背景にある考え方、そして実務に即した具体的なケーススタディをわかりやすく解説いたします。

親会社と子会社の関係および経営幹部報酬の開示

親会社と子会社の関係の開示要件

親会社と子会社の間に支配関係が存在する場合、取引の有無にかかわらず関係を開示しなければなりません。財務諸表の利用者が、その関係性が企業に及ぼす潜在的な影響を評価できるようにするためです。具体的には、親会社の名称や最終的な支配当事者の名称の開示が求められます。

開示対象 適用要件
親会社の名称 取引の有無にかかわらず開示必須
最終的な支配当事者の名称 親会社と異なる場合に開示必須
次順位にくる上位の親会社 親会社や最終支配当事者が公表用連結財務諸表を作成しない場合

参考:IAS24.13、IAS24.14、IAS24.16

経営幹部の報酬開示と経営管理企業

企業の意思決定に直結する経営幹部への報酬は、事業戦略や財務状況に与える影響が大きいため、合計額および5つの内訳ごとの開示が義務付けられています。ただし、外部の経営管理企業からサービスを受けている場合、個人の報酬内訳へのアクセスが困難なため、報告企業が負担したサービス手数料の総額を開示する実務的な救済措置が存在します。

開示項目 詳細内容
経営幹部報酬の内訳 短期従業員給付、退職後給付、その他の長期給付、解雇給付、株式に基づく報酬
経営管理企業への支払い 経営幹部サービスとして負担した総額を開示(内訳免除)

参考:IAS24.17、IAS24.17A、IAS24.18A

関連当事者との取引の開示と取引条件

関連当事者取引の開示項目と区分

開示対象期間中に関連当事者と取引があった場合、その関係の性質や取引の金額、未決済残高などを開示する必要があります。また、これらの情報は「親会社」「子会社」「関連会社」「経営幹部」といった区分ごとに個別に開示することが求められ、資金の流出入やリスクの所在を分析しやすくします。

最低限の開示項目 詳細要件
取引および未決済残高の金額 コミットメントを含む金額、担保の有無などの契約条件、決済内容、保証の詳細
貸倒引当金と不良債権費用 未決済残高に係る貸倒引当金、期中に認識した関連当事者への不良債権費用

参考:IAS24.18、IAS24.19、IAS24.21、IAS24.22

取引条件のアームズ・レングス評価と総額表示

関連当事者との取引が、独立第三者間取引と同等の条件(アームズ・レングス価格)で行われたと財務諸表に記載できるのは、その条件が客観的に立証できる場合に限られます。立証が不十分なまま記載することは認められません。また、類似の性質を持つ項目は、個別の開示が財務諸表への影響を理解するために不可欠な場合を除き、総額でまとめて表示することが許可されています。

参考:IAS24.23、IAS24.24

関連当事者開示の背景と意義

経営幹部報酬の透明性確保の背景

過去には個人情報保護や各国の承認手続きを理由に、経営幹部報酬の開示免除を求める声がありました。しかし、経営幹部は企業の意思決定権を握る重要な関連当事者であり、その報酬構造は投資家にとって極めて関連性の高い情報です。透明性を高め、報酬が財務に与える影響を適切に評価できるようにするため、詳細な開示が基準化されました。同時に、経営管理企業を利用する際の実務上の困難に配慮した免除規定も設けられています。

取引開示と区分表示の目的

取引金額や未決済残高の開示を要求する背景には、関連当事者間の取引が非市場的な条件で行われ、企業に不当なリスクを負わせていないかを投資家が監視できるようにする目的があります。相手先を区分ごとに開示することで、企業がどのグループ企業や個人からどのような影響や支援を受けているのかを明確にし、より精緻な財務分析を可能にします。

具体的なケーススタディで学ぶ実務適用

ケース1:取引のない親子関係の開示

親会社が子会社の株式を100%取得し、当期中に商品売買や資金の貸借などの取引が一切発生しなかったケースを想定します。この場合でも、子会社は個別財務諸表において、取引の有無にかかわらず親会社の名称を開示しなければなりません。これにより、投資家や債権者は、子会社が親会社の完全な支配下にあり、事業方針が親会社の意向で変更されるリスクを把握できます。

参考:IAS24.13、IAS24.14

ケース2:経営管理企業を通じた経営幹部サービス

企業が直接役員を雇用せず、コンサルティング会社(経営管理企業)と契約して社長やCFOを派遣してもらい、年間1億円の手数料を支払ったケースです。原則として1億円の報酬内訳を開示する必要がありますが、免除規定により、個人の給与内訳まで調査する必要はありません。代わりに、経営管理企業に対して経営幹部サービスの対価として1億円を負担した事実と金額を開示します。

参考:IAS24.17、IAS24.17A、IAS24.18A

ケース3:取引条件と区分表示の実務

企業が親会社に自社製品を5,000万円で販売(未決済残高1,000万円)し、社長個人の不動産を2,000万円で購入したケースです。企業は取引先を「親会社」と「経営幹部」に区分し、それぞれの取引金額と未決済残高を開示します。さらに、社長からの不動産購入価格が外部鑑定により市場価格と同等であると客観的に証明できる場合に限り、「独立第三者間取引と同等の条件で行われた」と明記することが許されます。

参考:IAS24.18、IAS24.19、IAS24.23

まとめ

IAS第24号に基づく関連当事者の開示は、企業の財務状態や経営成績に対する関連当事者の影響を可視化し、投資家に有用な情報を提供するための不可欠なプロセスです。親会社との支配関係の明示、経営幹部報酬の透明性確保、そして取引条件の客観的な立証など、規定の意図を正確に理解し、適切な実務対応を行うことが求められます。

関連当事者についての開示のよくある質問まとめ

Q.親会社と子会社の間に取引がない場合でも開示は必要ですか?

A.はい、支配関係が存在する場合、取引の有無にかかわらず親会社の名称などを開示する必要があります。(参考:IAS24.13)

Q.経営幹部の報酬はどのように開示しなければなりませんか?

A.経営幹部の報酬の合計額に加えて、短期従業員給付や退職後給付など5つの内訳ごとに開示することが求められます。(参考:IAS24.17)

Q.外部の経営管理企業から役員を派遣されている場合、報酬の開示はどうなりますか?

A.個人の報酬内訳の開示は免除され、代わりに経営管理企業に対して負担したサービス手数料の総額を開示します。(参考:IAS24.17A、IAS24.18A)

Q.関連当事者との取引を開示する際、相手先をまとめることは可能ですか?

A.原則として「親会社」「子会社」「経営幹部」などの区分ごとに個別に開示しなければなりません。(参考:IAS24.19)

Q.関連当事者との取引が市場価格で行われたと記載するための条件は何ですか?

A.独立第三者間取引と同等の条件(アームズ・レングス価格)で行われたことが、客観的に立証できる場合にのみ記載が許されます。(参考:IAS24.23)

Q.類似の性質を持つ関連当事者取引は総額表示できますか?

A.はい、財務諸表への影響を理解するために個別の開示が不可欠な場合を除き、類似の性質を持つ項目は総額でまとめて開示できます。(参考:IAS24.24)

事務所概要
社名
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03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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