「自分の会社を売却したいけど、非上場企業だから価格がどう決まるのか分からない…」
そんなお悩みをお持ちではありませんか?
上場企業と違って、非上場企業には明確な株価が存在しません。そのため、M&A(企業の合併・買収)における価格決定は、様々な要素が絡み合い、複雑になることがあります。
でも、ご安心ください!
この記事では、非上場企業のM&A価格がどのように決まるのか、その仕組みや評価方法、具体的な流れまで、分かりやすく解説していきます。
会社売却を検討中の方も、将来のために知識を深めたい方も、ぜひ参考にしてくださいね。
非上場企業のM&A価格決定の基本原則
非上場企業のM&A価格は、上場企業のように「株価×発行済株式数」で簡単に計算できるわけではありません。
なぜなら、非上場企業には市場で取引される株価が存在しないからです。
では、どうやって価格を決めるのでしょうか?
基本的には、「売り手企業の価値」と「買い手企業の評価」のバランスによって決まります。
売り手企業は、自社の事業の将来性や資産価値などを総合的に評価し、「これくらいの価値があるはずだ」と考えます。
一方、買い手企業は、売り手企業を買収することで得られるメリット(シナジー効果など)やリスクを考慮し、「この価格なら買っても良い」と判断します。
この両者の思惑が一致したところが、M&Aの価格となるわけです。
企業価値評価の3つのアプローチ
非上場企業の価値を評価する方法は、大きく分けて3つのアプローチがあります。
- コストアプローチ: 会社の純資産を基に価値を評価する方法です。「今、会社を清算したらどれくらいの価値があるか」という視点で考えます。
- 例:時価純資産法
会社の資産(土地、建物、機械など)を現在の価値に換算し、そこから負債を差し引いて純資産を算出します。
例えば、時価評価した資産が1億円、負債が3,000万円の場合、純資産は7,000万円となります。
- インカムアプローチ: 会社が将来生み出す利益やキャッシュフローを基に価値を評価する方法です。「将来、どれくらい儲かるか」という視点で考えます。
例:DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
将来のキャッシュフロー(自由に使えるお金)を予測し、それを現在の価値に割り引いて企業価値を算出します。
例えば、今後5年間のキャッシュフローが毎年2,000万円と予測され、割引率(リスクなどを考慮した率)が5%の場合、現在価値は約8,638万円となります。
- マーケットアプローチ: 類似する上場企業の株価やM&A事例を参考に価値を評価する方法です。「他の会社と比べてどうか」という視点で考えます。
- 例:類似会社比較法(マルチプル法)
業種や規模が似ている上場企業の株価指標(PER、PBR、EBITDA倍率など)を参考に、自社の価値を算出します。
例えば、類似企業のEBITDA倍率(企業価値をEBITDAで割った値)が10倍で、自社のEBITDAが5,000万円の場合、企業価値は5億円と推定されます。
非上場企業M&Aでよく使われる評価方法
非上場企業のM&Aでは、上記の3つのアプローチを組み合わせて企業価値を評価することが一般的です。
特に、中小企業のM&Aでは、以下の方法がよく使われます。
- 時価純資産法+営業利益の数年分: 時価純資産に、過去数年分の営業利益(または経常利益)を加算する方法です。
例えば、時価純資産が7,000万円、過去3年間の平均営業利益が1,000万円の場合、企業価値は1億円(7,000万円+1,000万円×3年)となります。
- DCF法: 将来性を見込んで企業価値を評価したい場合に有効です。ただし、キャッシュフローの予測や割引率の設定には専門的な知識が必要です。
評価方法以外の価格決定要因
企業価値評価だけでなく、以下のような要因もM&A価格に影響を与えます。
- シナジー効果: 買い手企業が、売り手企業を買収することで得られる相乗効果です。例えば、販路拡大、コスト削減、技術の共有などが挙げられます。
- 買い手企業の状況: 買い手企業がどうしても買収したい場合、価格が高くなる傾向があります。
- 交渉力: 売り手企業と買い手企業の交渉によって、価格が変動することがあります。
- のれん(営業権)の計上:買い手企業がM&Aの際に支払った金額のうち、売り手企業の純資産額を上回る部分を指します。超過収益力ともいわれます。
非上場企業M&Aの価格交渉の流れ
非上場企業のM&Aでは、価格交渉が非常に重要なプロセスとなります。
一般的な流れは以下の通りです。
- 初期的な企業価値評価: M&A仲介会社や専門家が、売り手企業の財務諸表などを基に、初期的な企業価値を評価します。
- トップ面談: 売り手企業と買い手企業の経営者が面談し、お互いの企業理念や事業内容、M&Aの目的などを共有します。
- 基本合意書の締結: M&Aの基本的な条件(価格、スキーム、スケジュールなど)について合意し、基本合意書を締結します。
- デューデリジェンス(DD): 買い手企業が、売り手企業の財務、法務、税務などの詳細な調査を行います。
- 最終交渉: DDの結果を踏まえ、最終的な価格や条件を交渉します。
- 最終契約書の締結: M&Aの最終的な条件について合意し、最終契約書を締結します。
デューデリジェンス(DD)の重要性
デューデリジェンス(DD)は、買い手企業が売り手企業のリスクや価値を正確に把握するために行う、非常に重要なプロセスです。
DDの結果によっては、M&A価格が大きく変動することもあります。
例えば、DDで簿外債務(貸借対照表に記載されていない債務)が見つかった場合、企業価値が下がり、M&A価格も下がる可能性があります。
専門家(M&A仲介会社など)の活用
非上場企業のM&Aは、専門的な知識や経験が必要となるため、M&A仲介会社などの専門家を活用することが一般的です。
専門家は、企業価値評価、交渉のサポート、契約書の作成など、M&Aのプロセス全体をサポートしてくれます。
非上場企業M&Aのスキーム(手法)
非上場企業のM&Aには、いくつかのスキーム(手法)があります。
代表的なものは以下の通りです。
- 株式譲渡: 売り手企業の株主が、買い手企業に株式を譲渡する方法です。手続きが比較的簡単で、中小企業のM&Aでよく使われます。
- 事業譲渡: 売り手企業が、事業の一部または全部を買い手企業に譲渡する方法です。特定の事業だけを売却したい場合などに有効です。
- 株式交換: 売り手企業の株式と買い手企業の株式を交換する方法です。買い手企業が現金を用意する必要がないというメリットがあります。
- 第三者割当増資: 売り手企業が新たに株式を発行し、それを買い手企業が引き受ける方法です。売り手企業は資金調達ができ、買い手企業は出資比率を高めることができます。
スキーム選択のポイント
どのスキームを選択するかは、M&Aの目的や状況によって異なります。
例えば、会社全体を売却したい場合は株式譲渡、特定の事業だけを売却したい場合は事業譲渡が適しています。
また、税金面も考慮する必要があります。スキームによって税負担が異なるため、専門家と相談しながら最適なスキームを選択することが重要です。
非上場企業M&Aの成功事例
事例1:
地方の老舗食品メーカーA社は、後継者不在に悩んでいましたが、大手食品メーカーB社に株式譲渡を実施。A社はブランド力を維持したまま、B社の販路を活用して事業を拡大することに成功しました。M&A価格は時価純資産+営業利益5年分で合意しました。
事例2:ITベンチャーX社は、大手通信会社Y社に将来性を評価され、DCF法に基づいた高い価格で買収されました。X社の技術力とY社のインフラを組み合わせることで、新たなサービス開発が期待されています。
非上場企業M&Aで注意すべき点
非上場企業のM&Aでは、以下の点に注意が必要です。
- 情報開示: 買い手企業に対して、自社の情報を適切に開示することが重要です。ただし、秘密保持には十分注意しましょう。
- 従業員への配慮: M&Aは従業員に大きな影響を与える可能性があります。事前にしっかりと説明し、不安を解消するように努めましょう。
- 契約書の確認: 契約書の内容をしっかりと確認し、不明な点は専門家に相談しましょう。
まとめ
非上場企業のM&A価格は、様々な要素が絡み合って決まります。
企業価値評価の方法、M&Aのスキーム、交渉のプロセスなどを理解し、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めることが重要です。
この記事が、あなたの会社売却の一助となれば幸いです。
非上場企業のM&A価格のよくある質問まとめ
Q. 非上場企業のM&A価格はどのように決まるのですか?
A. 企業価値評価(バリュエーション)によって決まります。様々な評価方法(類似会社比較法、DCF法など)を組み合わせて、総合的に判断されます。
Q. 非上場企業の企業価値評価でよく使われる方法は?
A. 類似会社比較法(マルチプル法)やDCF法がよく使われます。事業内容や規模によって適切な方法が異なります。
Q. 非上場企業のM&Aで、上場企業より価格算定が難しい理由は?
A. 株価のような客観的な市場価格が存在しないため、様々な要素を考慮して算定する必要があるからです。
Q. 非上場企業のM&A価格交渉で重要なポイントは?
A. 企業価値評価の根拠を明確にし、双方が納得できる価格を目指すことが重要です。
Q. 非上場企業のM&Aで、企業価値以外に価格に影響する要素は?
A. シナジー効果(相乗効果)、簿外債務、経営者の意向なども価格に影響します。
Q. 非上場企業のM&A価格について、誰に相談すれば良いですか?
A. M&A仲介会社、ファイナンシャルアドバイザー(FA)、公認会計士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。