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会計方針の変更・見積りの変更・誤謬の訂正の実務

2026-07-24
目次

会計方針の変更、会計上の見積りの変更、過去の誤謬の訂正は、いずれも過年度に関わる論点として混同されがちですが、会計処理はそれぞれ異なります。会計方針の変更は原則として遡及適用、会計上の見積りの変更は将来にわたる会計処理、過去の誤謬の訂正は修正再表示によって処理します。企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」は、この3類型を明確に区分したうえで、それぞれの取扱いと注記を定めています。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

本記事は、上場準備・上場企業の経理・財務や管理部門の方に向けて、3類型の区分と会計処理の違い、遡及適用の原則と例外、注記事項までを実務目線で整理するものです。決算や過年度対応の場面で、どの類型に該当するのかを判断する際の指針としてご活用ください。

会計上の変更と誤謬の訂正の全体像

まず押さえるべきは、「会計上の変更」と「誤謬の訂正」が別の概念であるという点です。企業会計基準第24号では、会計上の変更を「会計方針の変更、表示方法の変更及び会計上の見積りの変更」と定義しており、過去の財務諸表における誤謬の訂正は会計上の変更には該当しないと明記しています。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

会計上の変更は、過去の会計処理が誤っていたわけではなく、新たな会計方針の採用や新たな情報の入手に伴って生じる正当な変更です。一方の誤謬は、過去の会計処理そのものに誤りがあった場合の訂正であり、性格が根本的に異なります。この違いを踏まえると、本記事で扱う3類型の会計処理は次のように整理できます。

類型 会計処理の方法
会計方針の変更 遡及適用(新たな会計方針を過去に遡って適用)
会計上の見積りの変更 将来にわたり会計処理(遡及適用しない)
過去の誤謬の訂正 修正再表示(誤謬の訂正を過去に反映)

用語の定義も確認しておきます。遡及適用とは、新たな会計方針を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理することをいい、修正再表示とは、過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映することをいいます。両者はいずれも過去の財務諸表を遡って処理する点で似ていますが、対象が「方針の変更」か「誤りの訂正」かで区別されます。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

会計方針の変更と遡及適用

会計方針とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいいます。会計方針は正当な理由により変更を行う場合を除き、毎期継続して適用することが求められます。会計方針の変更とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から、他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいいます。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

会計方針の変更の分類

会計方針の変更は、正当な理由による場合に限り認められ、その理由によって2つに分類されます。第一は「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」で、会計基準等の改正によって特定の会計処理が強制される場合や、従来認められていた処理を任意に選択する余地がなくなる場合などが該当します。会計基準等に早期適用の取扱いが定められており、これを適用する場合も、この分類として取り扱います。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

第二は、それ以外の正当な理由に基づき自発的に会計方針の変更を行う場合です。上場準備の局面では、従来の簡便的な処理を原則的な処理へ改めるなど、自発的な変更が生じることがあります。いずれの分類でも、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する点は共通です。

遡及適用の原則的な取扱い

会計方針を変更し遡及適用する場合、表示期間より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映します。そのうえで、表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映します。これにより、比較情報としての過去の財務諸表が、あたかも当初から新たな会計方針を採用していたかのように表示されます。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

なお、会計基準等の改正に伴う変更の場合で、当該会計基準等に特定の経過的な取扱い(適用開始時に遡及適用を行わないことを定めた取扱いなど)が定められているときは、その経過的な取扱いに従います。改正基準を適用する際は、遡及適用の原則ではなく、まず経過措置の有無を確認することが実務上の出発点となります。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

遡及適用が実務上不可能な場合

遡及適用が原則であっても、実務上不可能な場合には例外的な取扱いが認められています。企業会計基準第24号は、遡及適用が実務上不可能な状況として、過去の情報が収集・保存されておらず合理的な努力を行っても影響額を算定できない場合、過去における経営者の意図について仮定することが必要な場合、過去の時点で入手可能であった情報と事後に判明した情報とを客観的に区別することが時の経過により不可能な場合を挙げています。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

このような場合の取扱いは、影響額をどこまで算定できるかによって2段階に分かれます。当期の期首時点で累積的影響額は算定できるものの、表示期間のいずれかにおいて期間ごとの影響額を算定できないときは、遡及適用が実行可能な最も古い期間の期首時点で累積的影響額を算定し、当該期首残高から新たな会計方針を適用します。当期の期首時点で累積的影響額そのものを算定できないときは、期首以前の実行可能な最も古い日から将来にわたり新たな会計方針を適用します。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

実務では、過去の帳票やデータが十分に保存されていないと遡及適用が困難になります。上場準備の段階から、会計方針の変更に備えて根拠資料を整備・保管しておくことが、将来の遡及適用を円滑に進める鍵となります。判断に迷う場面では、早めに公認会計士へ相談することをおすすめします。

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会計上の見積りの変更と将来にわたる会計処理

会計上の見積りとは、資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、その合理的な金額を算出することをいいます。会計上の見積りの変更とは、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積りを変更することをいいます。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

会計上の見積りの変更は、会計方針の変更とは異なり遡及適用を行いません。当該変更が変更期間のみに影響する場合には当該変更期間に会計処理を行い、当該変更が将来の期間にも影響する場合には将来にわたり会計処理を行います。新たな情報は入手した時点以降の事象を反映するものであるため、過去に遡らず、変更のあった期以降で処理するという考え方です。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

会計方針の変更と区別が困難な場合(減価償却方法)

実務で特に注意を要するのが、有形固定資産等の減価償却方法及び無形固定資産の償却方法の変更です。これらの償却方法は会計方針に該当しますが、その変更については会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合として取り扱われ、会計上の見積りの変更と同様に処理します。したがって遡及適用は行いません企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

より一般に、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合については、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行いません。ただし注記については、会計方針の変更に準じた記載を行う点に留意が必要です。「償却方法の変更だから遡及適用が必要では」という誤解が生じやすい論点であり、区分を正しく理解しておくことが求められます。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

過去の誤謬の訂正と修正再表示

誤謬とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったこと、又はこれを誤用したことによる誤りをいいます。具体的には、財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り、事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り、会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤りが該当します。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

過去の財務諸表における誤謬が発見された場合には、修正再表示を行います。表示期間より前の期間に関する修正再表示による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映し、表示する過去の各期間の財務諸表には当該各期間の影響額を反映します。会計方針の変更に伴う遡及適用と処理の枠組みは似ていますが、対象が過去の誤りの訂正である点で本質的に異なります。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

3類型の注記事項

会計処理の違いに応じて、注記すべき事項も類型ごとに定められています。それぞれの類型で当期又は過去の期間に影響があるとき、又は将来の期間に影響を及ぼす可能性があるときに、当期において注記を行います。主な注記事項の概要は次のとおりです。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

会計基準等の改正に伴う
会計方針の変更
会計基準等の名称、変更の内容、経過的な取扱いに従った旨とその概要、過去の期間の主な表示科目・1株当たり情報への影響額、累積的影響額などを注記します。
自発的な
会計方針の変更
変更の内容、変更を行った正当な理由、過去の期間の主な表示科目・1株当たり情報への影響額、累積的影響額などを注記します。
会計上の
見積りの変更
変更の内容、当期への影響額、将来の期間に影響を及ぼす可能性がありその影響額を合理的に見積ることができるときは当該影響額を注記します。
過去の
誤謬の訂正
誤謬の内容、過去の期間の主な表示科目・1株当たり情報への影響額、表示期間より前の期間に関する修正再表示の累積的影響額を注記します。

減価償却方法の変更のように、会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合には、遡及適用は行わないものの、注記は自発的な会計方針の変更に準じた記載(変更の内容・正当な理由等)と、見積りの変更に関する記載の両面から行う点に注意が必要です。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

上場準備・上場企業における実務上の留意点

実務では、まず「会計方針の変更・見積りの変更・誤謬の訂正のいずれに該当するか」を正しく区分することが出発点となります。区分を誤ると、遡及適用すべき事項を将来処理してしまう、あるいは本来将来にわたり処理すべき見積りの変更を遡及適用してしまうといった誤りにつながります。特に誤謬の訂正は過去の誤りを前提とするため、有価証券報告書の訂正など開示上の影響も大きく、慎重な判断が求められます。

適用時期の面では、2009年に公表された本会計基準は、2011年(平成23年)4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用されています。その後、会計方針の開示に関する注記の充実を目的とした2020年改正が行われ、2021年3月31日以後終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用されています。企業会計基準委員会 企業会計基準第24号 会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準

なお、本記事で扱う会計上の見積りの「変更」の会計処理は、企業会計基準第31号「会計上の見積りの開示に関する会計基準」が定める見積りの「開示」とは論点が異なります。前者は変更が生じた場合の処理と注記、後者は当年度の財務諸表に計上した金額が翌年度に重要な影響を及ぼすリスクの開示であり、目的も対象も別のものとして区別して理解することが大切です。

会計方針の変更や誤謬の訂正は、過去の財務諸表への遡及処理を伴い、監査対応や開示への影響も大きい論点です。判断が難しいケースでは、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングでは、上場準備・上場企業の会計方針や過年度対応に関する実務をご支援しています。

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まとめ

会計方針の変更、会計上の見積りの変更、過去の誤謬の訂正は、いずれも過年度に関わる論点ですが、会計処理は明確に異なります。会計方針の変更は原則として遡及適用、会計上の見積りの変更は将来にわたる会計処理、過去の誤謬の訂正は修正再表示によって処理します。減価償却方法の変更のように区別が困難な場合は見積りの変更と同様に扱い遡及適用を行わないなど、例外的な取扱いにも注意が必要です。まずは正しい区分を行い、企業会計基準第24号に基づいた会計処理と注記を確実に行うことが、上場準備・上場企業の実務における基本となります。

参考文献

よくある質問

会計方針の変更と会計上の見積りの変更の違いは何ですか。

会計方針の変更は、従来採用していた会計処理の原則及び手続を、他の一般に公正妥当と認められた方針へ変更するもので、原則として過去に遡って適用する遡及適用を行います。一方、会計上の見積りの変更は、新たに入手した情報に基づき過去に行った見積りを変更するもので、遡及適用は行わず、変更した期以降に将来にわたって会計処理します。

減価償却方法の変更は遡及適用が必要ですか。

必要ありません。有形固定資産等の減価償却方法及び無形固定資産の償却方法は会計方針に該当しますが、その変更は会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合として取り扱われ、会計上の見積りの変更と同様に処理します。したがって遡及適用は行わず、注記のみ会計方針の変更に準じた記載を行います。

過去の誤謬が見つかった場合はどのように処理しますか。

過去の財務諸表における誤謬が発見された場合には、修正再表示を行います。表示期間より前の期間に関する累積的影響額は、表示する財務諸表のうち最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映し、表示する過去の各期間の財務諸表には当該各期間の影響額を反映します。会計上の変更とは異なり、過去の誤りの訂正として扱われる点が特徴です。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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