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関連当事者の開示会計基準|要件と開示項目の実務

2026-07-24
目次

上場準備の過程では、関連当事者との取引をどこまで開示すべきかが審査上の重要な論点になります。関連当事者の開示は、会社と関連当事者との取引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響を、財務諸表利用者が把握できるようにするための注記情報です。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準この記事では、企業会計基準第11号と企業会計基準適用指針第13号にもとづき、関連当事者の範囲、開示対象となる取引、開示項目、重要性の判断基準、そして上場準備で押さえるべき実務のポイントを、原典に沿って整理します。

関連当事者の開示に関する会計基準の全体像

関連当事者の開示に関する会計基準は、財務諸表の注記事項としての関連当事者の開示について、その内容を定めることを目的としています。会社と関連当事者との取引は、会社と役員等の個人との取引を含め、対等な立場で行われているとは限らず、会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがあります。また、直接の取引がない場合でも、関連当事者の存在自体が会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがあります。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

適用範囲と個別財務諸表での取扱い

本会計基準は、すべての会社の連結財務諸表または個別財務諸表における関連当事者の開示に適用します。なお、連結財務諸表で関連当事者の開示を行っている場合は、個別財務諸表での開示を要しないこととされています。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準関連当事者の範囲は形式的に判定するのではなく、実質的に判定する必要がある点が、この基準を運用するうえでの基本的な考え方です。

関連当事者の範囲

「関連当事者」とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、または他の当事者の財務上および業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等をいいます。会計基準では、関連当事者に該当する者を具体的に列挙しています。上場準備では、まず自社にとって誰が関連当事者に当たるかを網羅的に洗い出すことが出発点になります。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

親会社・子会社 親会社、子会社、財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
その他の関係会社等 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合の当該他の会社(その他の関係会社)並びにその親会社および子会社
関連会社等 関連会社および当該関連会社の子会社
主要株主および近親者 財務諸表作成会社の主要株主およびその近親者
役員および近親者 財務諸表作成会社の役員およびその近親者、親会社の役員およびその近親者、重要な子会社の役員およびその近親者
これらが支配する会社 上記の主要株主・役員等が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社
従業員のための企業年金 企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る

連結財務諸表上は、これらのうち連結子会社を除きます。また、個別財務諸表上は、重要な子会社の役員およびその近親者並びにこれらの者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社を除きます。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

主要株主・役員・近親者の定義

関連当事者の判定にあたっては、主要株主や役員、近親者といった用語の意味を正確に押さえておく必要があります。会計基準では、これらの用語について次のように定義しています。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

主要株主 保有態様を勘案した上で、自己または他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主
役員 取締役、会計参与、監査役、執行役またはこれらに準ずる者
近親者 二親等以内の親族。すなわち配偶者、父母、兄弟、姉妹、祖父母、子、孫およびそれらの配偶者等

役員の定義にある「これらに準ずる者」とは、例えば相談役、顧問、執行役員その他これらに類する者であって、その会社内における地位や職務等からみて実質的に会社の経営に強い影響を及ぼしていると認められる者をいいます。創業者等で役員を退任した者についても、役員の定義に該当するかどうかを実質的に判定します。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針オーナー系企業では、創業家や退任した創業者との取引が見落とされやすいため、実質判定の考え方を踏まえた確認が欠かせません。

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開示対象となる関連当事者との取引

会社と関連当事者との取引のうち、重要な取引を開示対象とします。連結財務諸表においては、連結会社と関連当事者との取引を開示対象とし、連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引は開示対象外とします。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

無償取引や低廉な価格での取引については、独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積った上で、重要性の判断を行い、開示対象とするかどうかを決定します。無利子貸付や寄付、有償取引における低利貸付などが典型例です。また、形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合には、開示対象に含めます。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

なお、関連当事者との取引期間の途中で関連当事者に該当することとなった場合、または該当しなくなった場合には、関連当事者であった期間中の取引が開示対象となります。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

開示対象外となる取引

関連当事者との取引のうち、一定のものは開示対象外とされています。取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引と、役員に対する報酬等がこれに当たります。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

取引条件が明白な取引 一般競争入札による取引並びに預金利息および配当の受取りその他取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引
役員に対する報酬等 役員に対する報酬、賞与および退職慰労金の支払い

役員報酬等が開示対象外とされているのは、我が国においてコーポレート・ガバナンスに関する非財務情報として別途開示が規定されているためです。関連当事者である役員と会社が報酬等以外の取引をする場合でも、当該役員が従業員としての立場で行っていることが明らかな取引(例えば、使用人兼務役員が会社の福利厚生制度による融資を受ける場合など)は、開示対象外とされます。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

開示すべき項目

開示対象となる関連当事者との取引がある場合、原則として個々の関連当事者ごとに、定められた項目を開示します。取引金額だけでなく、取引条件や決定方針、期末残高まで含めて開示することが求められる点が特徴です。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

関連当事者の概要 関連当事者の名称または氏名などの概要
会社との関係 会社と関連当事者との関係
取引の内容 取引の内容。形式的・名目的には第三者との取引である場合は、形式上の取引先名を記載した上で、実質的には関連当事者との取引である旨を記載
取引金額 取引の種類ごとの取引金額
取引条件 取引条件および取引条件の決定方針
期末残高 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高
取引条件の変更 取引条件の変更があった場合は、その旨、変更内容および当該変更が財務諸表に与えている影響の内容
貸倒懸念債権等 関連当事者に対する貸倒懸念債権および破産更生債権等に係る情報

関連当事者の概要として記載する内容

関連当事者の概要には、名称または氏名のほか、関連当事者が法人か個人かに応じて記載すべき内容が定められています。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

法人の場合 所在地、資本金(出資金)、事業の内容、および当該関連当事者の議決権に対する会社の所有割合または財務諸表作成会社の議決権に対する当該関連当事者の所有割合
個人の場合 職業、および財務諸表作成会社の議決権に対する当該関連当事者の所有割合

貸倒懸念債権等および資金貸借等の開示

関連当事者に対する債権が貸倒懸念債権および破産更生債権等に該当する場合には、債権の期末残高に対する貸倒引当金残高、当期の貸倒引当金繰入額等、当期の貸倒損失額を開示します。開示にあたっては、関連当事者ごとに開示せず、関連当事者の種類ごとに合算して記載することができます。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

資金貸借取引については、連結会計年度中または事業年度中の貸付金額または借入金額を取引金額として記載するとともに、当該取引に関する期末残高を記載します。債務保証等については保証債務等の期末残高を、担保提供または受入れについては担保資産に対応する債務の期末残高を、それぞれ取引金額として記載します。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

重要性の判断基準

会社と関連当事者との取引は、重要な取引を開示対象とします。適用指針では、関連当事者を、支配・被支配の別や影響力の度合いなどにもとづいて、親会社および法人主要株主等、関連会社等、兄弟会社等、役員および個人主要株主等の4つのグループに区分し、各グループに適用される重要性の判断基準に従って開示の要否を判定するとしています。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

関連当事者が法人の場合の主な数値基準は、次のとおりです。損益計算書項目に係る取引と、貸借対照表項目に係る残高とで基準が異なります。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

売上高・売上原価等 売上高、または売上原価と販売費および一般管理費の合計額の10%を超える取引
営業外損益 営業外収益または営業外費用の合計額の10%を超える損益に係る取引
貸借対照表項目の残高 その金額が総資産の1%を超える取引

特別利益・特別損失に係る取引については、1,000万円あるいは税金等調整前当期純損益の10%のいずれか大きい金額を超える取引を開示対象とします。この基準は関係性が肝となるため、いずれか大きい金額を基準とする点に注意が必要です。関連当事者が個人の場合は、損益計算書項目・貸借対照表項目のいずれに係る取引についても、1,000万円を超える取引をすべて開示対象とします。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

なお、重要性の判断基準の適用にあたっては、これまで開示対象となっていた取引等について、ある連結会計年度または事業年度に数値基準を下回っても、それが一時的であると判断されるような場合には、ただちに開示対象から除外するなどの画一的な取扱いをせず、開示の継続性が保たれるよう留意する必要があります。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

関連当事者の存在に関する開示

直接の取引がない場合でも、親会社または重要な関連会社が存在する場合には、関連当事者の存在に関する開示が必要になります。親会社が存在する場合には親会社の名称等を、重要な関連会社が存在する場合にはその名称および当該関連会社の要約財務情報を開示します。企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準

親会社情報としては、親会社の名称および上場または非上場の別を開示します。重要な関連会社の要約財務情報としては、主な貸借対照表項目および損益計算書項目を開示し、例えば流動資産合計、固定資産合計、流動負債合計、固定負債合計、純資産合計、売上高、税引前当期純損益、当期純損益といった項目を記載します。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

ここでいう重要な関連会社とは、各関連会社の総資産(持分相当額)が総資産の10%を超える場合、または各関連会社の税引前当期純損益(持分相当額)が税金等調整前当期純損益の10%を超える場合に該当する会社をいいます。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針

上場準備で押さえるべき実務ポイント

上場準備企業では、関連当事者との取引の把握と開示体制の整備が審査上の重要なテーマになります。関連当事者の範囲は形式ではなく実質で判定するため、オーナーや創業家、役員の近親者、これらが支配する会社との取引まで含めて網羅的に洗い出す仕組みを整えることが第一歩です。取引金額だけでなく、取引条件や決定方針、期末残高までを継続的に記録できる管理体制が求められます。

また、無償取引や低廉な価格での取引、形式的に第三者を経由した取引についても、実質に着目して開示要否を判断する必要があります。数値基準を下回った年度があっても継続性の観点から慎重に判断すべきとされているため、開示の要否は単年度の金額だけで機械的に決めるのではなく、取引の性質と継続性を踏まえて検討することが大切です。関連当事者の判定や重要性の評価は個別性が高く、判断に迷う場面も少なくありません。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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まとめ

関連当事者の開示に関する会計基準は、会社と関連当事者との取引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響を、利用者が把握できるようにするための注記情報を定めるものです。関連当事者の範囲は親会社・子会社から主要株主・役員およびその近親者、これらが支配する会社まで広く、形式ではなく実質で判定します。開示対象は重要な取引であり、取引の内容・金額・条件・期末残高などを個々の関連当事者ごとに開示します。

重要性の判断基準は関連当事者のグループや法人・個人の別に応じて数値基準が定められ、開示の継続性にも配慮する必要があります。さらに、親会社や重要な関連会社が存在する場合には、直接の取引がなくても存在に関する開示が求められます。上場準備では、関連当事者の網羅的な把握と開示体制の整備を早期に進めることが、円滑な審査対応につながります。

参考文献

関連当事者の開示に関する会計基準のよくある質問

Q.関連当事者の開示に関する会計基準はどの財務諸表に適用されますか。

A.すべての会社の連結財務諸表または個別財務諸表における関連当事者の開示に適用されます。なお、連結財務諸表で関連当事者の開示を行っている場合は、個別財務諸表での開示を要しないこととされています。

Q.関連当事者にはどのような者が含まれますか。

A.親会社、子会社、同一の親会社をもつ会社、その他の関係会社等、関連会社等、主要株主およびその近親者、役員およびその近親者、これらが議決権の過半数を所有する会社などが含まれます。範囲は形式ではなく実質的に判定します。

Q.主要株主や役員はどのように定義されますか。

A.主要株主は、保有態様を勘案した上で総株主の議決権の10%以上を保有している株主をいいます。役員は取締役、会計参与、監査役、執行役またはこれらに準ずる者をいい、近親者は二親等以内の親族をいいます。

Q.開示対象外となる取引はありますか。

A.一般競争入札による取引や預金利息・配当の受取りなど取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引と、役員に対する報酬・賞与・退職慰労金の支払いは開示対象外とされています。

Q.取引の重要性はどのように判断しますか。

A.法人の場合は売上高等の10%超、貸借対照表項目は総資産の1%超などの数値基準があります。特別損益は1,000万円あるいは税金等調整前当期純損益の10%のいずれか大きい金額を超える取引、個人との取引は1,000万円を超える取引が対象です。

Q.取引がなくても開示が必要な場合はありますか。

A.親会社または重要な関連会社が存在する場合には、直接の取引がなくても存在に関する開示が必要です。親会社の名称および上場・非上場の別や、重要な関連会社の要約財務情報を開示します。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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