本記事では、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」に基づき、リース会計基準の目的と適用範囲について詳細に解説いたします。実務においてどの取引が対象となり、どの取引が除外されるのか、具体的なケーススタディを交えて分かりやすく説明します。
リース会計基準の目的
本会計基準の主な目的は、適用範囲に定められたリース取引に関する適切な会計処理および開示のルールを明確にすることです。実務においては、本基準だけでなく詳細な実務指針である「企業会計基準適用指針第33号」も併せて参照することが求められます。また、借地権を含む借地権の設定に係る権利金等の扱いについては、従来「企業会計原則」で無形固定資産とされていましたが、本基準では使用権資産の取得価額に含めることとされました。そのため、企業会計原則よりも本適用指針を優先して適用することが明記されています。(参考:企業会計基準第34号第1項、企業会計基準第34号第2項、企業会計基準適用指針第33号第1項、企業会計基準適用指針第33号BC6項)
原則的な適用範囲と除外される取引
本会計基準は、契約の名称がいかなるものであっても、実質的に本会計基準の定義を満たすすべてのリース取引に適用されるのが原則です。しかし、特定の取引については適用範囲から明示的に除外されています。(参考:企業会計基準第34号BC14項、企業会計基準適用指針第33号第2項)
| 取引の種類 | 適用可否 |
|---|---|
| 実質的なリース取引全般 | 原則として適用対象 |
| 特定の除外規定に該当する取引 | 適用対象外 |
公共施設等運営権の取得
実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の対象となる運営権者による公共施設等運営権の取得は、本基準の適用範囲から除外されます。これは、実務対応報告第35号において当該運営権を分割せずに一括して会計処理を行うことが規定されており、構成要素にリースが含まれるか否かにかかわらず、統一的な処理を優先するためです。(参考:企業会計基準第34号第3項(1)、企業会計基準第34号BC15項)
貸手による知的財産のライセンスの供与
企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の適用対象となる、貸手によるソフトウェア等の知的財産のライセンス供与は、原則として本基準の適用範囲外となります。ただし、例外として、リース会社など製造または販売以外を主たる事業とする貸手が、専ら金融取引として利息相当額を稼得する目的でライセンス供与を行う場合は、収益認識会計基準ではなく本会計基準を適用することが認められています。(参考:企業会計基準第34号第3項(2)、企業会計基準第34号BC16項、企業会計基準第34号BC17項)
非再生型資源を探査・使用する権利の取得
鉱物、石油、天然ガスおよび類似の非再生型資源を探査または使用する権利の取得は、国際的な会計基準(IFRS第16号等)との整合性を考慮し、適用範囲から除外されています。ただし、資源の探査作業に使用する掘削設備や機械装置などの個別の有形資産がリースに該当するかどうかについては、リースの定義に基づいて個別に判定し、適用を判断する必要があります。(参考:企業会計基準第34号第3項(3)、企業会計基準第34号BC19項)
無形固定資産のリースに関する特例(任意適用)
ソフトウェアなどの無形固定資産のリースについては、本会計基準の適用を強制せず、新基準を適用するか従来の会計処理を継続するかを選択できる任意適用が認められています。IFRS第16号でも無形固定資産のリースへの適用は任意とされており、日本の実務においても従来の処理を変更する緊急性が低いと判断されたためです。なお、借地権は無形固定資産のリースには該当せず、有形固定資産である土地に関する使用権資産として扱われるため、本基準が強制適用されます。(参考:企業会計基準第34号第4項、企業会計基準第34号BC18項、企業会計基準適用指針第33号第27項、企業会計基準適用指針第33号BC7項)
| 資産の種類 | 適用の取扱い |
|---|---|
| ソフトウェア等の無形固定資産 | 任意適用(従来処理の継続も可) |
| 借地権(土地に関する権利) | 強制適用(使用権資産として処理) |
個別財務諸表への適用に関する考え方
本会計基準は、連結財務諸表のみならず、個別財務諸表に対しても同一の基準が適用されます。日本においては連結財務諸表が個別財務諸表の積み上げとして作成される歴史的背景があり、会社法の分配規制や税法などの利害調整の観点からも、個別と連結で異なる会計処理を定める積極的な理由はないと判断されたためです。これにより、国際的な比較可能性の向上と実務上のコスト削減が図られています。(参考:企業会計基準第34号BC20項、企業会計基準第34号BC21項)
実務ケーススタディ
ここでは、実際のビジネスシーンにおいてリース会計基準の適用範囲がどのように判断されるのか、具体的なケーススタディを用いて解説いたします。
ケーススタディ1:リース専門会社によるソフトウェアの提供
顧客である企業が、リース専門会社から業務用のパッケージソフトウェアを5年間利用する契約を結んだケースです。リース専門会社はソフトウェアの開発や販売を行わず、金融取引としてライセンスを供与しています。この場合、貸手であるリース専門会社は製造販売業ではないため、例外的に本リース会計基準を適用し、ファイナンス・リースとしてリース投資資産を計上することが認められます。一方、借手である企業にとってソフトウェアは無形固定資産であるため、本基準の適用は任意となり、実務負担を考慮して発生時の費用として処理する選択も可能です。(参考:企業会計基準第34号第3項(2)、企業会計基準第34号第4項、企業会計基準第34号BC17項、企業会計基準第34号BC18項)
| 当事者 | 会計処理の判断 |
|---|---|
| 貸手(リース専門会社) | 特例によりリース会計基準を適用可 |
| 借手(顧客企業) | 無形固定資産のため任意適用 |
ケーススタディ2:資源採掘会社における重機のリース
資源採掘会社が、天然ガスを探査する権利を国から取得し、その探査作業のために建機リース会社から大型掘削機をリースしたケースです。天然ガスを探査する権利の取得自体は、非再生型資源に関する権利として適用範囲から除外されます。しかし、探査に使用する大型掘削機などの機械装置のリースは除外対象とはならず、通常の有形固定資産のリースとして識別要件を満たせば、使用権資産とリース負債を計上してオンバランス化する必要があります。(参考:企業会計基準第34号第3項(3)、企業会計基準第34号BC19項)
| 対象資産・権利 | 適用可否の判断 |
|---|---|
| 天然ガスを探査する権利 | 適用対象外(除外規定に該当) |
| 探査に使用する大型掘削機 | 適用対象(要件を満たせばオンバランス) |
まとめ
新しいリース会計基準は、実質的なリース取引すべてに適用されるのが原則ですが、公共施設等運営権の取得や非再生型資源の探査権など、明確な除外規定が存在します。また、無形固定資産のリースについては任意適用とされるなど、実務への配慮もなされています。企業は自社の締結する契約が適用範囲に含まれるかどうかを正確に判定し、適切な会計処理を行うことが強く求められます。
リース会計基準の適用範囲に関するよくある質問まとめ
Q.リース会計基準はどのような取引に適用されますか?
A.契約の名称にかかわらず、実質的に本会計基準の範囲に定めるリースに該当するすべての取引に原則として適用されます(企業会計基準第34号BC14項)。
Q.借地権の取得はリース会計基準の適用対象ですか?
A.はい、適用対象です。借地権は無形固定資産のリースではなく、有形固定資産である土地に関する使用権資産として取り扱われます(企業会計基準適用指針第33号第27項)。
Q.ソフトウェアのリースはどのように会計処理すべきですか?
A.ソフトウェアなどの無形固定資産のリースについては、本会計基準の適用は任意とされており、新基準を適用するか従来の処理を継続するかを選択できます(企業会計基準第34号第4項)。
Q.貸手による知的財産のライセンス供与は適用範囲に含まれますか?
A.原則として収益認識会計基準が適用されるため除外されますが、リースを主たる事業とする貸手が金融取引として行う場合は特例として適用が認められます(企業会計基準第34号第3項(2))。
Q.個別財務諸表と連結財務諸表でリース会計の適用方法は異なりますか?
A.異なりません。国際的な比較可能性や実務上のコストを考慮し、個別財務諸表と連結財務諸表の両方に同一の基準が適用されます(企業会計基準第34号BC21項)。
Q.天然ガスを探査する権利の取得と、探査用重機のリースは同じ扱いですか?
A.異なります。探査する権利の取得は適用範囲から除外されますが、探査に使用する重機などの個別の有形資産のリースは本基準の適用対象となります(企業会計基準第34号第3項(3)、企業会計基準第34号BC19項)。
実際の会計処理は個別事情によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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