本記事では、「リース取引に関する会計基準の適用指針」に基づき、貸手の立場から見た所有権移転外ファイナンス・リースの終了時および中途解約時における会計処理について解説いたします。リース期間満了に伴う物件の返却・処分、再リース時の対応、中途解約による規定損害金の処理など、実務で直面する課題を具体的な金額を用いて詳解します。
リース期間終了時の会計処理(物件の返却と処分)
リース期間が終了し、借手からリース物件の返却を受けた場合、貸借対照表上の資産科目の振り替えという重要な会計処理が発生します。
見積残存価額による他科目への振り替え
リース契約時に設定されたリース期間が満了すると、リース料を収受する債権部分はすべて回収されたことになります。しかし、貸借対照表のリース投資資産には、物件返却時の価値として見込んだ見積残存価額相当額が残高として残っています。貸手は、返却されたリース物件をこの見積残存価額をもって、その後の保有目的に応じて貯蔵品または固定資産等へ振り替える処理を行います。参考:リース適用指針 第57項
| 項目 | 処理内容 |
|---|---|
| 振り替え元の科目 | リース投資資産(見積残存価額相当額) |
| 振り替え先の科目 | 貯蔵品(売却目的)または固定資産等(再使用目的) |
物件の処分(売却等)に伴う処理
返却を受けて貯蔵品等に振り替えられたリース物件を、その後中古市場などで第三者に売却処分した場合、実際の処分価額と帳簿価額(見積残存価額)との差額を算定します。この差額は処分損益として当期の損益計算書に計上する必要があります。参考:リース適用指針 第57項
| 計算要素 | 内容 |
|---|---|
| 処分価額 | 中古市場等での実際の売却金額 |
| 処分損益 | 処分価額と帳簿価額(見積残存価額)との差額 |
再リースが行われた場合の会計処理
当初のリース期間終了後、借手が引き続き物件の使用を希望し、再リース契約が締結されるケースがあります。再リース期間を当初の解約不能のリース期間に含めていなかった場合、受け取る再リース料は回収の都度、発生時の収益として計上します。参考:リース適用指針 第57項、第9項
また、再リースに供される物件は、リース投資資産から固定資産へ振り替えた上で、当該固定資産の取得価額(見積残存価額)をベースに、見積再リース期間にわたり通常の減価償却を行います。参考:リース適用指針 第57項
| 項目 | 会計処理の方法 |
|---|---|
| 再リース料の受取 | 回収の都度、発生時の収益として損益計算書に計上 |
| 再リース物件の償却 | 固定資産へ振り替え後、見積再リース期間にわたり減価償却 |
リース契約が中途解約された場合の会計処理
リース契約が借手の都合により中途解約された場合、貸手は未経過リース料等に相当する規定損害金(違約金)を受け取ります。この規定損害金の会計処理は、貸手が採用している会計処理方法(第1法~第3法)によって異なります。参考:リース適用指針 第58項
第1法または第3法を採用している場合
リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する第1法、または売上高を計上せず利息相当額のみを各期へ配分する第3法を採用している場合、すでに収益の認識構造が確定しているか、金融取引として純額処理を行っています。そのため、借手から受け取る規定損害金の額と、中途解約時のリース投資資産残高(見積残存価額控除後)との差額を算定し、これを純額で当期の収益として計上します。参考:リース適用指針 第58項(1)
| 項目 | 会計処理の特徴 |
|---|---|
| 採用する処理方法 | 第1法または第3法 |
| 収益の計上方法 | 規定損害金とリース投資資産残高の差額を純額で収益計上 |
第2法を採用している場合
リース料を受け取る都度、売上高と売上原価を計上する第2法を採用している場合、収益の認識がリース料の回収に連動しています。したがって中途解約時には、受け取る規定損害金の額をそのまま売上高として処理し、同時に中途解約時のリース投資資産残高を売上原価として計上する総額表示の処理を行います。参考:リース適用指針 第58項(2)
| 項目 | 会計処理の特徴 |
|---|---|
| 売上高の計上額 | 借手から受け取る規定損害金の全額 |
| 売上原価の計上額 | 中途解約時点のリース投資資産残高(見積残存価額控除後) |
会計処理の背景と結論の根拠
これらの処理が規定されている背景には、貸手におけるリース投資資産の複合的な性格があります。リース投資資産は、将来のリース料を収受する権利(金融的側面)と、リース期間終了後に残存する物件の価値である見積残存価額(物理的側面)から構成されます。リース期間終了により金融的側面が消滅し、物理的側面のみが残るという経済的実態の変化を正確に表現するため、貯蔵品や固定資産への振り替えが厳格に義務付けられています。参考:リース適用指針 第40項、第57項
| リース投資資産の構成要素 | 性格と期間終了後の変化 |
|---|---|
| 将来のリース料を収受する権利 | 金融的側面(期間終了に伴い消滅) |
| 見積残存価額 | 物理的側面(現物資産として貯蔵品等へ振り替え) |
実務ケーススタディ:リース会社における処理
実際のビジネスにおいて、これらの規定がどのように適用されるかを具体的なケーススタディを通じて解説します。前提として、貸手A社が借手B社に対し、現金購入価額48,000千円の機械を期間5年で見積残存価額4,000千円としてリースし、第3法を採用しているものとします。参考:リース適用指針 第51項(3)
リース期間が無事終了し、物件が返却された場合
5年後、機械が返却された時点でリース投資資産には見積残存価額4,000千円が残っています。A社は売却目的でこれを貯蔵品へ振り替えます。その後、中古市場にて5,000千円で売却できた場合、現金預金5,000千円を計上するとともに、帳簿価額4,000千円との差額1,000千円を貯蔵品売却益として計上します。参考:リース適用指針 第57項、設例2の5
| 勘定科目 | 金額(千円) |
|---|---|
| 貯蔵品への振り替え額 | 4,000 |
| 売却に伴う処分益 | 1,000 |
リース期間の中途で解約された場合
リース開始から3年後に中途解約され、規定損害金23,000千円を一括で受け取ったとします。この時点のリース投資資産残高(見積残存価額控除後)が21,855千円であった場合、A社は第3法を採用しているため、規定損害金23,000千円と残高21,855千円の差額である1,145千円をリース解約益として純額で収益計上します。同時に、見積残存価額4,000千円部分は貯蔵品等へ振り替えます。参考:リース適用指針 第58項(1)、設例1の3(2)
| 項目 | 金額(千円) |
|---|---|
| 受け取った規定損害金 | 23,000 |
| 純額計上されるリース解約益 | 1,145 |
まとめ
所有権移転外ファイナンス・リース取引において、貸手はリース期間満了時の現物返還や中途解約といった事象に対し、リース投資資産の適切な振り替えや損益の精算を行う必要があります。採用している会計処理方法(第1法~第3法)によって規定損害金の表示方法(純額か総額か)が異なる点に留意し、会計基準に従った正確な財務諸表の作成が求められます。
リース取引の終了・中途解約に関するよくある質問まとめ
Q.リース期間終了時に返却された物件の会計処理はどうなりますか?
A.貸手のリース投資資産に残る見積残存価額をもって、その後の保有目的に応じて貯蔵品または固定資産等へ振り替えます。(リース適用指針 第57項)
Q.返却されたリース物件を売却した場合の処理はどうなりますか?
A.実際の売却金額である処分価額と、振り替えた帳簿価額(見積残存価額)との差額を処分損益として当期の損益計算書に計上します。(リース適用指針 第57項)
Q.再リースが行われた場合の再リース料の処理方法を教えてください。
A.再リース期間を当初の解約不能のリース期間に含めていなかった場合、受け取る再リース料は回収の都度、発生時の収益として計上します。(リース適用指針 第57項、第9項)
Q.中途解約時に受け取る規定損害金の処理はどのようになりますか?
A.貸手が採用する会計処理方法により異なります。第1法・第3法の場合はリース投資資産残高との差額を純額で収益計上し、第2法の場合は総額表示で売上高と売上原価を計上します。(リース適用指針 第58項)
Q.リース投資資産から貯蔵品等へ振り替える理由は何ですか?
A.リース期間終了により金融的側面(リース料を収受する権利)が消滅し、物理的側面(現物資産の価値)のみが残るという経済的実態の変化を正確に表現するためです。(リース適用指針 第40項、第57項)
Q.第3法を採用している場合の中途解約時の具体的な計算方法を教えてください。
A.借手から受け取る規定損害金の額から、中途解約時点のリース投資資産残高(見積残存価額控除後)を差し引いた差額を、リース解約益などの科目で純額として収益計上します。(リース適用指針 第58項(1))
実際の会計処理は個別事情によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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