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減損会計における市場価格の著しい下落とは?兆候判定と実務ポイント

2026-02-04
目次

固定資産の減損会計において、すべての資産に対して毎期減損損失の認識の判定を行うことは実務上過大な負担となります。そのため、まずは減損の可能性を示す事象である「減損の兆候」を把握するステップが設けられています。本記事では、減損の兆候の1つである「市場価格の著しい下落」について、判定の目安や代替的な指標の活用方法、実務上のケーススタディを詳しく解説いたします。

市場価格の著しい下落の意義と判定目安

減損の兆候と市場価格の下落

減損会計において、減損の兆候として規定されている事象の1つが「資産又は資産グループの市場価格が著しく下落したこと」です。対象となる固定資産の市場価格が大幅に下落した場合、投資額の回収が見込めなくなる可能性が高まるため、減損の兆候として把握する必要があります。(参考:減損会計基準 二 1. ④)

「50%程度以上」という判定の目安

実務上、「市場価格が著しく下落したこと」に該当するかどうかの目安として、市場価格が帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当すると規定されています。

項目 基準・目安
判定対象 資産又は資産グループの市場価格
著しい下落の目安 帳簿価額から50%程度以上の下落

(参考:適用指針 第15項、適用指針 第89項)

容易に入手できる代替的な指標の活用

市場価格の定義と実務上の課題

減損の兆候を把握する際の「市場価格」とは、市場において形成されている取引価格、気配値又は指標その他の相場を指します。しかし、一般的な事業用固定資産(特に不動産など)においては、直接的な市場価格が観察できる場合は多くありません。(参考:適用指針 第15項)

代替的な指標を用いた市場価格の算定

直接的な市場価格が把握できない場合、企業は精緻な不動産鑑定評価などをわざわざ取得する必要はありません。土地の公示価格や路線価など、容易に入手できる評価額や適切に市場価格を反映していると考えられる指標を合理的に調整したものを「市場価格」とみなして減損の兆候を把握することが認められています。

市場価格の算定方法 具体例
直接的な市場価格 市場の取引価格、気配値
代替的な指標(実務上の許容) 土地の公示価格、路線価などを合理的に調整した評価額

(参考:適用指針 第15項、適用指針 第90項)

資産グループの一部の資産のみが下落した場合の取扱い

資産グループ単位での兆候把握の原則

減損の兆候は、原則として資産グループ単位で把握されます。しかし、資産グループ全体の市場価格を直接把握できないケースも少なくありません。このような場合、一部の資産の市場価格が著しく下落したからといって、直ちにグループ全体の兆候になるわけではなく、どの程度の範囲の資産の市場価格が下落したかによって判断する必要があります。(参考:適用指針 第91項)

主要な資産の下落が及ぼす影響

資産グループの主要な資産(土地など)の帳簿価額が、資産グループ全体の帳簿価額の大きな割合を占めている場合において、当該主要な資産の市場価格が著しく下落したときには、当該資産グループ全体に減損の兆候があると判断することが適当とされています。

状況 兆候の判定
一部の小規模な資産のみ下落 直ちにグループ全体の兆候とはならない
主要な資産(大きな割合を占める)が下落 グループ全体に減損の兆候ありと判断

(参考:適用指針 第15項、適用指針 第91項)

背景と結論の根拠(BC)

「50%程度以上」の目安が設けられた根拠

なぜ「50%程度以上」という大幅な下落幅が目安とされたのかという背景には、事業用固定資産の性質があります。事業用の固定資産は通常、市場平均を超える成果を期待して自社の事業に使用されています。そのため、市場価格が変動したからといって、企業にとっての投資の価値がそれに連動して直ちに低下するわけではありません。市場価格が少し下落しただけで対象資産すべてについて減損判定を行うことは、企業に過大な負担を強いることになります。これを避けるため、減損が生じている可能性が極めて高いと見込まれる保守的な水準として「少なくとも帳簿価額から50%程度以上の下落」という目安が設定されました。(参考:減損会計意見書 三 1.、適用指針 第89項)

画一的な数値化の限界と個別判断の重要性

一方で、この「50%程度以上」という数値は絶対的な基準ではありません。減損の兆候はその程度を画一的に数値化できるものではないためです。例えば、市場価格の下落幅が帳簿価額の40%であっても、その資産が「処分が予定されている資産」である場合など、回収可能価額が帳簿価額を下回る可能性が高いと見込まれるときには、減損の兆候があると認定する必要があります。状況に応じた個々の企業での実質的な判断が不可欠です。(参考:適用指針 第77項、適用指針 第89項)

実務ケーススタディ

路線価を用いた兆候把握と主要な資産(土地)の影響

特定の部品を製造する工場(一つの資産グループ)を保有している製造業のケースです。この工場グループの帳簿価額の内訳は、機械装置や建物が2億円、土地が8億円であり、土地が全体の80%という大きな割合を占めています。

工場全体の市場価格を直接把握することはできませんでしたが、容易に入手できる路線価を確認し合理的な調整を行って土地の時価を概算したところ、周辺の地価暴落により、土地の市場価格が帳簿価額8億円から約60%下落して時価3.2億円になっていることが判明しました。

資産内訳(帳簿価額) 状況と判定
機械・建物:2億円、土地:8億円 土地が全体の80%を占める主要な資産
土地の市場価格が約60%下落 主要資産の著しい下落により、工場グループ全体に兆候あり

この場合、資産グループ全体の市場価格は不明であっても、帳簿価額の大きな割合を占める主要な資産(土地)の市場価格が50%以上著しく下落しているという事実に基づき、当該工場グループ全体について「減損の兆候あり」と判定します。(参考:減損会計基準 二 1. ④、適用指針 第15項、適用指針 第89項、適用指針 第91項)

50%未満の下落でも兆候と認定される例外ケース

事業の再編に伴い、来期中の売却を予定している遊休の倉庫(独立した単一の資産、帳簿価額1億円)を保有している物流業のケースです。複数の不動産業者から簡易的な査定を取得したところ、当該倉庫の市場価格は帳簿価額から40%の下落となる時価6,000万円にとどまっていました。

資産の状況 兆候の判定理由
来期中に売却予定の遊休倉庫 事業に継続使用されず処分予定である
市場価格が帳簿価額から40%下落 売却費用を考慮すると投資回収が帳簿価額を下回る可能性が高い

形式的な目安である「50%程度以上の下落」には達していませんが、この倉庫は近く売却(処分)が予定されています。そのため、40%の下落であっても、売却費用を考慮すれば投資の回収が帳簿価額を下回る(減損が生じる)可能性が高いと明らかに見込まれます。したがって、形式基準にとらわれず個別の状況を考慮し、実質的に「減損の兆候あり」と判断して減損損失の認識の判定ステップへと進みます。(参考:適用指針 第77項、適用指針 第89項)

参考文献

企業会計審議会 固定資産の減損に係る会計基準

企業会計基準第35号 「固定資産の減損に係る会計基準」の一部改正

企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

まとめ

減損会計における「市場価格の著しい下落」は、原則として帳簿価額から50%程度以上の下落を目安とします。実務上は、土地の公示価格や路線価などの代替的な指標を活用することが認められており、資産グループの主要な資産が著しく下落した場合にはグループ全体に兆候があると判断されます。また、50%未満の下落であっても、処分予定など個別の状況によっては減損の兆候ありと認定されるケースがあるため、実質的な判断が求められます。

減損の兆候における市場価格の著しい下落のよくある質問まとめ

Q. 減損の兆候における「市場価格の著しい下落」の目安は何ですか?

A. 対象となる資産又は資産グループの市場価格が、帳簿価額から50%程度以上下落した場合が該当します。(参考:適用指針 第15項、適用指針 第89項)

Q. 市場価格が直接把握できない不動産の場合、どうすればよいですか?

A. 精緻な不動産鑑定評価を取得する必要はなく、土地の公示価格や路線価など、容易に入手できる指標を合理的に調整したものを市場価格とみなすことができます。(参考:適用指針 第15項、適用指針 第90項)

Q. 資産グループの一部の資産のみ市場価格が下落した場合、減損の兆候となりますか?

A. 資産グループの帳簿価額の大きな割合を占める主要な資産(土地など)の市場価格が著しく下落した場合、グループ全体に減損の兆候があると判断されます。(参考:適用指針 第15項、適用指針 第91項)

Q. なぜ市場価格の下落の目安が「50%程度以上」と保守的なのですか?

A. 事業用固定資産は市場平均を超える成果を期待して使用されるため、市場価格の変動が直ちに投資価値の低下に直結せず、企業への過大な負担を避けるためです。(参考:適用指針 第89項)

Q. 市場価格の下落が50%未満の場合、減損の兆候には絶対に該当しませんか?

A. 絶対的な基準ではありません。処分予定の資産である場合など、実質的に回収可能価額が帳簿価額を下回る可能性が高いと見込まれる場合は、減損の兆候ありと認定されます。(参考:適用指針 第77項、適用指針 第89項)

Q. 減損の兆候はどの単位で把握しますか?

A. 減損の兆候は、原則として他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位である「資産グループ単位」で把握されます。(参考:適用指針 第91項)

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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