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有価証券の消費貸借契約とは?会計処理の実務指針を徹底解説

2026-01-15
目次

金融商品会計において、有価証券の消費貸借契約に基づく取引は、貸手および借手の双方に特有の会計処理が求められます。本記事では、「金融商品会計に関する実務指針」に基づき、有価証券を貸し付けた場合や借り入れた場合の原則的な処理から、売却時の特例、さらには実務上のケーススタディまでを具体的に解説いたします。適切な財務諸表の作成に向けた実務の参考にしてください。

有価証券の消費貸借契約等の意義と貸手側の会計処理

金融商品会計における「消費貸借契約等」とは、有価証券の消費貸借契約および消費寄託契約を指します。この契約において、借手は借り入れた有価証券を売却または担保として自由に処分できる権利を有します〔移管指針第9号 第27項〕。

貸手側の会計処理においては、貸付期間中は有価証券の現物に対する自由処分権を失いますが、契約に基づいて返還を受けた後は、貸付前と同一の経済的結果となります。そのため、貸し付けた有価証券の消滅は認識せず、引き続き保有目的の区分に従った評価方法(時価評価や償却原価法など)を継続して適用します〔移管指針第9号 第77項〕。

ただし、他者に貸し付けている事実を財務諸表利用者に明らかにするため、注記による開示が義務付けられています。

項目 貸手側の会計処理・開示内容
貸借対照表の認識 有価証券の消滅を認識せず、継続して資産計上
注記事項 有価証券を貸し付けている旨および金額(貸借対照表価額または時価)

借手側の会計処理(原則と売却時の特例)

借手側の会計処理は、借り入れた有価証券を自社で保有し続けるか、あるいは市場等で売却するかによって大きく異なります。

借り入れた有価証券を保有または担保差入している場合(原則)

借手は、借り入れた有価証券を自由に売却や担保差入ができる権利を有しますが、借り入れた時点(受入日)では、対応する返還義務を負債として認識しません。受入処理も行わず、借り入れている旨および貸借対照表日の時価を注記するにとどめます〔移管指針第9号 第241-2項〕。

また、借手がその有価証券を他に担保として差し入れた場合には、「自己保有部分」と「担保差入部分」とに明確に区分して注記する必要があります。区分が困難な場合は、実務上の便法として合計額での注記も認められています〔移管指針第9号 第27項〕。

借り入れた有価証券を売却した場合

借手が借り入れた有価証券を市場等で売却した場合には、売却代金(未収入金の計上または現金の受入れ)が生じるため、例外的に貸借対照表への計上が求められます。この場合、貸手に対する返還義務を時価で負債として認識しなければなりません〔移管指針第9号 第77項〕。なお、負債として計上された返還義務は、別途時価の注記を行う対象からは除外されます。

売却時の会計処理において、保管有価証券と売付有価証券を別々に計上すると二重計上の問題が生じます。これを回避するため、両者を相殺し、売却時の時価と売却価額との差額を純損益に計上する処理が行われます〔移管指針第9号 第77項〕。

借手の状況 貸借対照表および注記の取扱い
保有または担保差入 負債計上せず、借入の旨と期末時価を注記(担保差入部分は区分)
市場等で売却 返還義務を時価で負債計上し、注記対象からは除外

金銭の消費貸借と同様の効果を持つ場合と使用貸借・賃貸借の取扱い

有価証券の貸借取引には、契約条件や法的性質に応じて異なる会計処理が求められるケースが存在します。

債券に係る消費貸借契約等において、「償還日に額面に相当する額を現金をもって返済する」と規定されている場合、実質的に金銭の消費貸借(借入金)と同様の経済的効果を有します。したがって、貸手は貸付時に当該債券の売却処理を行い、借手も債券の取得として認識して時価で計上しなければなりません〔移管指針第9号 第77項〕。

一方で、使用貸借や賃貸借は、証券番号も全く同一の証券を返還する契約です。借手は通常これを売却できませんが、担保差入れ等は可能なため、「担保差入れ等という自由処分権がある旨」および「貸借対照表日の時価」の注記が必要です〔移管指針第9号 第77項〕。

背景と結論の根拠(財務構成要素アプローチ)

有価証券の消費貸借契約等において、借手が受け入れた時点では負債を認識せず、売却した時点ではじめて返還義務を認識する背景には、財務構成要素アプローチと経済的実態の適切な反映があります。

有価証券を単に保管・運用している段階では、価格変動リスクは依然として元の貸手に帰属しており、借手にとって確定的な経済的負担は生じていないため、注記による情報開示で足りると判断されます〔移管指針第9号 第241-2項〕。

しかし、借手が当該有価証券を他へ売却した瞬間、市場から同種の有価証券を買い戻して貸手に返還しなければならない明確な返還義務(負債)を負い、以後の価格変動リスクを負担することになります。このため、売却をトリガーとして返還義務を時価で負債計上するルールが定められました〔移管指針第9号 第241-2項〕。

実務ケーススタディ(具体的な会計処理例)

実際のビジネスや会計実務において、これらの規定がどのように適用されるかを具体的な金額を用いて解説します。

ケース1:有価証券の借入と保有(期末注記)

証券会社が機関投資家から時価10億円の上場株式を消費貸借契約で借り入れ、期末時点で自社の口座に保管したままのケースです。借手は借り入れた株式を資産計上せず、返還義務も負債計上しません。財務諸表の注記として「消費貸借契約により借り入れている有価証券の時価10億円」を開示します〔移管指針第9号 第27項〕。貸手は資産からオフバランス化せず、有価証券10億円を貸し付けている旨を注記します。

ケース2:借り入れた有価証券の市場での空売り

借手が借り入れた株式を市場で10億5,000万円で全株売却(空売り)したケースです。借手は現金の増加とともに、貸手に対する有価証券返還義務を負債として認識します。売却代金10億5,000万円を基礎として負債を計上し、期末に時価が11億円に上昇していた場合、返還義務の時価を11億円に引き上げ、差額の5,000万円を当期の損失として計上します〔移管指針第9号 第77項〕。

ケース3:償還日に現金で決済する債券の貸借

企業が額面1億円の国債を借り入れ、「償還日に同種の国債ではなく、額面に相当する現金1億円を支払って返済する」という特約が付されているケースです。この取引は実質的に1億円の金銭消費貸借(借入)と同一の効果を持ちます。貸手は貸付時に国債の売却処理を行い、借手は国債を取得したものとして資産計上するとともに、同額1億円の借入金等の負債を認識します〔移管指針第9号 第77項〕。

まとめ

有価証券の消費貸借契約等における会計処理は、借手が借り入れた有価証券を保有しているか、売却したかによって大きく対応が変わります。貸手は原則として資産計上を継続し注記を行いますが、借手は売却時に初めて返還義務を時価で負債計上します。また、現金決済の特約がある場合は金銭の消費貸借と同様の処理が求められるため、契約の実態を正確に把握し、適切な会計処理と開示を行うことが重要です。

参考文献

移管指針第9号 金融商品会計に関する実務指針

有価証券の消費貸借契約に関するよくある質問まとめ

Q.有価証券の消費貸借契約等とは何ですか?

A.有価証券の消費貸借契約及び消費寄託契約を指し、借手は借り入れた有価証券を自由に売却や担保として処分できる権利を有します〔移管指針第9号 第27項〕。

Q.貸手側は貸し付けた有価証券をどのように会計処理しますか?

A.貸借対照表から消滅させず、保有目的の区分に従った評価方法を継続し、貸し付けている旨と金額を注記します〔移管指針第9号 第77項〕。

Q.借手側が借り入れた有価証券を保有している場合の会計処理は?

A.負債として認識せず、借り入れている旨と貸借対照表日の時価を注記します〔移管指針第9号 第241-2項〕。

Q.借手が借り入れた有価証券を売却した場合の処理はどうなりますか?

A.売却代金を受け入れ、貸手に対する返還義務を時価で負債として認識し、期末に時価評価を行います〔移管指針第9号 第77項〕。

Q.償還日に現金で返済する債券の消費貸借の取扱いは?

A.実質的に金銭の消費貸借と同様の効果を持つため、貸手は売却処理を行い、借手は取得として時価で計上します〔移管指針第9号 第77項〕。

Q.借手が有価証券を受け入れた時点で負債を認識しない理由は?

A.価格変動リスクは貸手に帰属しており、借手に確定的な経済的負担が生じていないため、注記による開示で十分と判断されるからです〔移管指針第9号 第241-2項〕。

事務所概要
社名
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対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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