企業会計基準第10号に基づく子会社株式および関連会社株式の評価方法、減損処理、保有目的区分の変更に伴う振替処理について、実務指針やQ&Aを交えて詳細に解説いたします。時価評価を行わない背景や、具体的なケーススタディを通じた会計処理のポイントを整理し、企業の経理・財務担当者の皆様の実務に役立つ情報を提供します。
子会社株式及び関連会社株式の評価の原則
金融商品に関する会計基準において、有価証券はその保有目的に応じて4つの区分に分類されます。その中で子会社株式および関連会社株式は、原則として取得原価をもって貸借対照表価額とすることが定められています。〔企業会計基準第10号 第17項〕
取得原価評価の適用
金融商品は一般的に時価評価が基本とされますが、子会社株式および関連会社株式の期末評価においては、時価への洗替えを行いません。取得時の原価をそのまま据え置く処理である原価法が適用されます。〔企業会計基準第10号 第17項〕
| 有価証券の区分 | 貸借対照表価額の評価方法 |
|---|---|
| 子会社株式及び関連会社株式 | 取得原価(原価法) |
取得原価で評価される背景と結論の根拠
なぜ時価評価ではなく取得原価で評価されるのかという結論の根拠は、これらの株式が持つ事業遂行上の性格や保有目的に由来します。
子会社株式の背景
子会社株式は、事業投資と同じく、その時価の変動を企業の財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づいています。企業は支配を目的として子会社株式を保有しており、短期的な売買で利益を得ることを目的としていないため、取得原価をもって貸借対照表価額とすることが適当と結論付けられました。なお、親会社の個別財務諸表では取得原価で評価されますが、連結財務諸表においては、資本連結手続を通じて子会社純資産の実質価額が反映されることになります。〔企業会計基準第10号 第73項〕
関連会社株式の背景
関連会社株式は、他企業への影響力の行使を目的として保有する株式であることから、子会社株式の場合と同じく、事実上の事業投資と同様の会計処理を行うことが適当であると判断されました。そのため、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとされました。なお、関連会社株式については、連結財務諸表においては持分法により評価・反映されます。〔企業会計基準第10号 第74項〕
親会社株式やその他の関係会社株式の取扱い
財務諸表等規則上の関係会社には、子会社や関連会社のほか、親会社やその他の関係会社が含まれます。しかし、これらは異なる会計処理が求められます。
関係会社株式の分類と評価
子会社株式および関連会社株式以外の関係会社株式については、それぞれの保有目的に応じて売買目的有価証券またはその他有価証券に分類されます。したがって、親会社株式等は時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額はそれぞれの区分に係る処理方法に従うことになります。〔移管指針第12号 Q16〕
連結上の親会社株式の特例処理
子会社や関連会社が保有する親会社株式等については、連結上は親会社が保有している自己株式と合わせ、取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除する特別な処理が求められます。同額を投資勘定から減額します。〔移管指針第12号 Q16〕
時価又は実質価額が著しく下落した場合の減損処理
原則として取得原価で評価される子会社株式および関連会社株式であっても、その価値が大きく損なわれた場合には減損処理が義務付けられています。
市場価格のある株式の減損処理
市場価格(時価)のある株式の場合、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理しなければなりません。〔企業会計基準第10号 第20項〕
| 株式の状況 | 減損処理の要件と処理 |
|---|---|
| 市場価格のある株式 | 時価が著しく下落し回復の見込みがない場合、時価で評価し当期損失計上 |
市場価格のない株式等の減損処理
市場価格のない株式等の場合、発行会社の財政状態の悪化により実質価額(1株当たりの純資産額等)が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理しなければなりません。〔企業会計基準第10号 第21項〕
保有目的区分の変更(振替)と実務ケース
株式の追加取得や一部売却により持分比率が変化し、他の区分から子会社株式・関連会社株式へ該当することとなった場合、以下のルールで帳簿価額の振替を行います。
各区分からの振替ルール
売買目的有価証券から子会社株式等へ振り替える場合は、その該当することとなった日の時価で振り替え、評価差額は当期の純損益に計上します。その他有価証券からの振替は、原則として帳簿価額をもって振り替えます。ただし、部分純資産直入法を採用し評価差損を計上している場合は、当該評価差額を控除した後の価額で振り替えます。子会社株式等から他の区分へ振り替える場合は、帳簿価額をもって変更後の区分に振り替えます。〔移管指針第9号 第87項〕
| 振替の方向 | 振替時の価額 |
|---|---|
| 売買目的有価証券から子会社・関連会社株式へ | 該当日の時価(差額は当期損益) |
| その他有価証券から子会社・関連会社株式へ | 原則として帳簿価額 |
実務ケーススタディ
例えば、非上場株式をその他有価証券として取得原価5,000万円で計上しており、当期に追加で2億5,000万円分を取得して子会社化した場合、変更前の帳簿価額5,000万円が引き継がれ、合計3億円が子会社株式の取得原価となります。また、取得原価1億円の子会社株式について、業績悪化により実質価額が50%以上低下し回復の見込みがない場合、実質価額まで帳簿価額を切り下げ、関係会社株式評価損として当期損失に計上する減損処理を行います。〔移管指針第9号 第88項〕
まとめ
子会社株式および関連会社株式は、事業投資としての性格を持つため、原則として取得原価で評価されます。ただし、時価や実質価額が著しく下落した場合には適切な減損処理が求められます。また、株式の追加取得等により保有目的区分が変更となる際の振替処理は、元の区分に応じて時価または帳簿価額で行われるため、正確な会計実務が不可欠です。これらの原則と例外を正しく理解し、個別財務諸表および連結財務諸表において適正な処理を行いましょう。
参考文献
子会社株式及び関連会社株式の評価に関するよくある質問まとめ
Q. 子会社株式および関連会社株式の評価はどのように行いますか?
A. 原則として取得原価をもって貸借対照表価額とします。時価評価を行わず、取得時の原価を据え置く原価法が適用されます。〔企業会計基準第10号 第17項〕
Q. なぜ子会社株式等は時価評価ではなく取得原価で評価されるのですか?
A. 事業投資と同じく、時価の変動を企業の財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づいているためです。〔企業会計基準第10号 第73項〕
Q. 親会社株式はどのように評価されますか?
A. 子会社株式等には該当せず、保有目的に応じて売買目的有価証券またはその他有価証券に分類され、時価をもって評価されます。〔移管指針第12号 Q16〕
Q. 市場価格のある子会社株式の時価が著しく下落した場合の処理はどうなりますか?
A. 回復する見込みがある場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として減損処理を行います。〔企業会計基準第10号 第20項〕
Q. 市場価格のない関連会社株式の減損処理の要件は何ですか?
A. 発行会社の財政状態の悪化により、1株当たりの純資産額等の実質価額が著しく低下したときに相当の減額を行い損失処理します。〔企業会計基準第10号 第21項〕
Q. その他有価証券から子会社株式へ振り替える際の価額はどうなりますか?
A. 株式の追加取得等により該当することとなった場合、原則として帳簿価額をもって振り替えます。〔移管指針第9号 第88項〕