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IFRS第11号解説:共同支配の取決めにおける個別財務諸表の会計処理

2025-12-23
目次

本記事では、IFRS第11号「共同支配の取決め」に基づき、当事者が作成する個別財務諸表における会計処理の規定、基準設定の背景、および具体的なケーススタディについて詳細に解説いたします。連結財務諸表との一貫性や実務への影響を正しく理解することは、適切な財務報告を行う上で不可欠です。

個別財務諸表における会計処理の規定詳細

共同支配の取決めに参加する当事者が自らの個別財務諸表を作成する際、関与している取決めの種類と支配の有無に応じて、適用すべき会計処理が厳格に規定されています。

共同支配を有する当事者の会計処理

共同支配事業者または共同支配投資者は、関与している取決めが共同支配事業であるか、共同支配企業であるかによって、個別財務諸表における処理方法を明確に区別しなければなりません。参考:IFRS11.26

取決めの種類 個別財務諸表における会計処理
共同支配事業 連結財務諸表と同様に、特定の資産、負債、収益および費用に対する自らの持分を直接認識します。別個のビークル(法人等)を通じた組成であっても、株式等の投資としては処理しません。参考:IFRS11.26(a)
共同支配企業 IAS第27号「個別財務諸表」に従い、取得原価等を用いて投資として会計処理しなければなりません。参考:IFRS11.26(b)

共同支配を有さない当事者の会計処理

取決めに参加しているものの、共同支配を有していない当事者についても、個別財務諸表における会計処理が規定されています。取決めの実質的な種類と、当該企業に対する影響力の程度が重要な判断基準となります。参考:IFRS11.27

取決めの種類 個別財務諸表における会計処理
共同支配事業 実質的な権利義務を有している場合は持分を直接認識し、そうでない場合は関連する他のIFRSに従って処理します。参考:IFRS11.27(a)
共同支配企業 原則としてIFRS第9号「金融商品」に従います。ただし、重要な影響力を有する場合はIAS第27号に従い処理します。参考:IFRS11.27(b)

基準設定の背景と実務上の影響

国際会計基準審議会(IASB)が個別財務諸表における会計処理を上記のように規定した背景には、財務情報の透明性向上と一貫性の確保という明確な意図があります。

連結財務諸表と個別財務諸表の一貫性の追求

本基準が規定された最大の理由は、経済的実質の忠実な表現と、連結・個別財務諸表間の一貫性を確保するためです。共同支配事業における資産に対する権利や負債に対する義務は、企業に直接帰属する実質的な権利義務です。したがって、個別ベースであっても連結ベースであっても、認識される内容に相違が生じないようにすべきであると結論付けられました。参考:IFRS11.BC38、IFRS11.BC67

実務上のコストと便益の比較

共同支配事業の資産・負債を個別財務諸表でも直接認識するという要求事項は、実務において具体的な負担を強いる可能性があります。例えば、法定決算をIFRSで報告する企業においては、法人税の税務申告書作成時における調整表の作成や、債権者に対する追加的な説明資料の作成といった手作業のコストが発生します。しかし、移行時の初期コストを除けば、取決めの経済的実質を忠実に表現するという原則の便益がこれらのコストを上回ると判断され、特例措置は設けられませんでした。参考:IFRS11.BC77

具体的なケーススタディ:別個の法人を通じた共同支配事業

本基準書の要求事項が実務でどのように適用されるかを、別個の法人を通じて組成された共同支配事業のケースを用いて具体的に解説します。

従来の個別財務諸表での処理との違い

企業Aと企業Bがそれぞれ5,000万円の資金を出資して別個の法人(企業C)を設立し、共同で材料を製造するケースを想定します。契約上、両社は企業Cの産出物の全量を購入する義務があり、企業Cの資金は両社に完全に依存しています。この取決めは実質的要件から共同支配事業に分類されます。従来の日本基準や税務上の一般的な感覚では、企業Aは企業Cの株式を保有しているため、個別財務諸表において「関係会社株式」として取得原価5,000万円で計上するのが通常でした。

IFRS第11号適用後の実務上の結果

しかし、IFRS第11号を適用する場合、この取決めは共同支配事業であるため、企業Aは自らの個別財務諸表においても連結財務諸表と全く同じ会計処理を行わなければなりません。結果として、企業Aは企業Cの株式を投資として計上するのではなく、企業Cが保有する個別の機械設備(資産)の50%や、企業Cが負っている借入金(負債)の50%を、直接自らの個別財務諸表に計上することになります。法的形態が法人であっても、権利義務の実質をそのまま表現することが厳格に求められます。参考:IFRS11.26(a)、IFRS11.BC38

まとめ

IFRS第11号に基づく個別財務諸表の会計処理は、法的形態にとらわれず、取決めの経済的実質を忠実に反映することを求めています。特に共同支配事業に該当する場合、別個の法人を通じて組成されていても、資産および負債を直接認識する必要があり、従来の投資としての処理とは大きく異なります。企業は、自らが関与する共同支配の取決めの実質を正確に評価し、適切な会計処理を適用することが求められます。

共同支配の取決めと個別財務諸表に関するよくある質問まとめ

Q.共同支配事業の個別財務諸表における会計処理はどうなりますか?

A.共同支配事業に対する持分は、連結財務諸表と同様に、特定の資産、負債、収益および費用に対する自らの持分を直接認識しなければなりません。参考:IFRS11.26(a)

Q.共同支配企業の個別財務諸表における会計処理はどうなりますか?

A.共同支配企業に対する持分は、IAS第27号「個別財務諸表」に従って、取得原価等を用いて投資として会計処理しなければなりません。参考:IFRS11.26(b)

Q.共同支配を有さない当事者の個別財務諸表での処理はどうなりますか?

A.共同支配事業の場合は実質的な権利義務に基づき持分を認識するか関連するIFRSに従い、共同支配企業の場合は原則としてIFRS第9号に従って処理します。参考:IFRS11.27

Q.個別財務諸表と連結財務諸表で処理を一致させる理由は何ですか?

A.資産に対する権利や負債に対する義務は企業に直接帰属する実質的な権利義務であるため、経済的実質を忠実に表現し、認識内容に相違が生じないようにするためです。参考:IFRS11.BC38

Q.別個の法人を通じて組成された共同支配事業でも資産負債を直接認識しますか?

A.はい。別個のビークル(法人など)を通じて組成されている場合であっても、個別財務諸表上で株式の投資としてではなく、資産および負債を直接認識します。参考:IFRS11.26(a)

Q.実務上想定される追加コストにはどのようなものがありますか?

A.税務申告書との間の調整表の作成や、債権者への説明などの追加的な手作業のコストが生じることが想定されています。参考:IFRS11.BC77

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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