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IFRS第11号「共同支配」の判定プロセスと実務ケーススタディ

2025-12-20
目次

国際財務報告基準(IFRS)を適用する企業において、他社と共同で事業を行う際の会計処理は非常に重要です。本記事では、IFRS第11号「共同支配の取決め」に基づき、ある取決めが同基準の対象となるために不可欠な共同支配(Joint Control)の厳密な定義とその判定プロセスについて詳細に解説いたします。基準設定の背景や具体的なケーススタディも交え、実務に役立つ情報を網羅しております。

共同支配の定義と2段階の判定プロセス

IFRS第11号において、共同支配が存在するかどうかの判定は、厳格な定義に基づく2つのステップで行われます。適切な会計処理を行うためには、このプロセスを正確に理解することが求められます。

共同支配の厳格な定義

共同支配とは、「取決めに対する契約上合意された支配の共有」を指します。具体的には、取決めのリターンに著しく影響を及ぼす活動である関連性のある活動に関する意思決定が、支配を共有している当事者の全員一致の合意を必要とする場合にのみ存在すると定義されています(IFRS11.7)。

ステップ1:集団的な支配の判定

最初のステップとして、取決めの当事者である企業は、契約上の取決めが当事者のすべて、又は当事者のグループに対して、集団で取決めに対する支配を与えているかどうかを判定しなければなりません(IFRS11.8)。ここではIFRS第10号「連結財務諸表」における支配の定義(パワー、変動リターンへのエクスポージャー、それらを関連付ける能力)が用いられます。関連性のある活動を指図するために一緒に行動しなければならない場合、その当事者グループは「集団で取決めを支配している」と判断されます(IFRS11.B5)。

ステップ2:全員一致の合意の要否

集団で取決めを支配していると判断された場合、次のステップとして全員一致の合意が要求されているかを確認します。共同支配が存在するのは、関連性のある活動に関する意思決定が「集団で支配している当事者の全員一致の合意を必要とする場合のみ」です(IFRS11.9、IFRS11.B6)。この要件は契約で明示されていなくても、特定の議決権割合の要求によって黙示的に生じることがあります(IFRS11.B7)。

判定ステップ 判定内容の概要
ステップ1:集団的な支配 当事者グループが関連性のある活動を指図するために一緒に行動する必要があるか(IFRS11.8、IFRS11.B5)
ステップ2:全員一致の合意 意思決定に集団で支配する当事者の全員一致の合意が必須か(IFRS11.9、IFRS11.B6)

単独支配の否定と阻止権の取り扱い

共同支配の取決めにおいては、特定の当事者が単独で支配力を持つことはありません。ここでは、阻止権や当事者の区別に関する実務上の留意点を解説します。

阻止権と防御的な権利の区別

共同支配の取決めでは、どの単一の当事者も単独では取決めを支配しておらず、共同支配を有する当事者は、他のいずれかの当事者又はグループが一方的な意思決定を行うことを阻止することができると定められています(IFRS11.10、IFRS11.B9)。ただし、この阻止権(全員一致の要求)は、関連性のある活動に関する決定に対するものでなければなりません。単なる防御的な権利に過ぎない場合は、共同支配を有する当事者とはみなされません(IFRS11.B9)。なお、契約に仲裁などの紛争解決条項が含まれていても、それが共同支配の存在を妨げるものではありません(IFRS11.B10)。

当事者の区別と再判定の要求

取決めに参加するすべての当事者が共同支配を有している必要はありません。本基準書では、取決めに対して共同支配を有している当事者と、取決めに参加しているだけで共同支配を有していない当事者とを明確に区別しています(IFRS11.11)。企業は共同支配の有無を検討する際、すべての事実及び状況を考慮して判断を適用する必要があります(IFRS11.12)。さらに、事実や状況が変化した場合には、依然として共同支配を有しているかを継続的に再検討しなければなりません(IFRS11.13)。

基準設定の背景とIFRS第10号との整合性

IFRS第11号における共同支配の概念は、旧基準(IAS第31号)や公開草案(ED第9号)に対するフィードバックを経て、より明確かつ論理的な枠組みへと進化しました。

用語の変更と支配概念の統一

公開草案では「共有された意思決定」という用語が提案されていましたが、その機能や意味合いに疑問が呈されました。そのため、活動が別個の企業で行われるかどうかにかかわらず、活動に対する「支配」が当事者間で共有されている状態を適切に表現するため、共同支配という用語が採用されました(IFRS11.BC20)。また、この新たな定義は、IFRS第10号における新しい「支配」の定義と整合するように再構築され、集団的な支配を判定した上で全員一致の合意の要否を判定する段階的なアプローチが導入されました(IFRS11.BC21)。

参加当事者の明確化と継続的な再判定

旧基準では共同支配を有さない参加者を「ジョイント・ベンチャーへの投資者」と呼んでいましたが、共同支配を有する当事者も投資者であるため混乱を招くという指摘がありました。これを受け、すべての当事者が共同支配を有する必要はないことを明確化し、当事者を区別する規定が設けられました(IFRS11.BC22)。さらに、当事者はいつでもガバナンスや意思決定プロセスの変更に同意し得るため、事実や状況の変化に伴う継続的な再判定の要求が追加されました(IFRS11.BC23)。

共同支配の判定に関するケーススタディ

複数の当事者が存在する取決めにおいて、全員一致の合意(IFRS11.9)の要件がどのように適用されるかについて、具体的なケーススタディを用いて解説します。

ケース1:黙示的な「全員一致」により共同支配が認められる場合

企業A(議決権50%)、企業B(議決権30%)、企業C(議決権20%)の3社が取決めを交わし、意思決定には「少なくとも議決権の75%」が必要と定められているケースを想定します。企業Aは50%のため単独支配はしていません。しかし、75%の可決条件を満たすためには、必ずA(50%)とB(30%)の組み合わせ(計80%)が不可欠となります。AとC(計70%)では条件を満たしません。したがって、この意思決定には企業Aと企業Bの両者の合意が必要となり、この契約上の取決めは、企業Aと企業Bが共同支配を有していること(黙示的な合意)を明確に示しています(IFRS11.B7、IFRS11.設例1)。企業Cは共同支配を有さない当事者として扱われます(IFRS11.11)。

ケース2:複数の組合せが存在し共同支配が認められない場合

企業A(議決権50%)、企業B(議決権25%)、企業C(議決権25%)の3社で、意思決定に「少なくとも議決権の75%」が必要と定められているケースです。この場合、75%に達するための組み合わせとして、「AとBの合意(計75%)」または「AとCの合意(計75%)」の2つのパターンが存在します。要求された最低限の議決権割合が当事者の複数の組合せで達成できる場合、特定の当事者グループによる全員一致の合意を意味しません。契約において「AとB」または「AとC」が全員一致で合意しなければならないと具体的に指定されていない限り、この取決めはIFRS第11号が定義する共同支配の取決めには該当しないと判断されます(IFRS11.B8、IFRS11.設例2)。

ケースの状況 共同支配の判定結果
可決に特定の一組の合意が不可欠(ケース1) 該当当事者間での共同支配が存在する(IFRS11.B7)
可決に複数の組合せが存在する(ケース2) 共同支配の取決めには該当しない(IFRS11.B8)

まとめ

IFRS第11号に基づく共同支配の判定は、集団的な支配の有無と全員一致の合意の要否という2段階の厳格なプロセスで行われます。可決要件を満たすための議決権の組み合わせによって、黙示的な全員一致が認められる場合とそうでない場合があるため、契約内容の実質的な検討が不可欠です。また、状況の変化に応じた継続的な再判定も求められます。本記事で解説した定義やケーススタディを参考に、適切な会計実務の運用にお役立てください。

IFRS第11号「共同支配」のよくある質問まとめ

Q.共同支配とはどのように定義されていますか?

A.共同支配とは、取決めに対する契約上合意された支配の共有であり、関連性のある活動に関する意思決定が、支配を共有している当事者の全員一致の合意を必要とする場合にのみ存在すると定義されています(IFRS11.7)。

Q.共同支配の判定におけるステップ1とは何ですか?

A.ステップ1は「集団的な支配の判定」です。契約上の取決めが当事者のすべて又はグループに集団で支配を与えているか、IFRS第10号の支配の定義を用いて判定します(IFRS11.8、IFRS11.B5)。

Q.全員一致の合意は契約書に明記されている必要がありますか?

A.必ずしも明記されている必要はありません。特定の議決権割合の要求によって、特定の当事者の組み合わせでしか可決できない場合、黙示的に全員一致の合意が要求されているとみなされます(IFRS11.B7)。

Q.可決要件を満たす当事者の組み合わせが複数ある場合はどうなりますか?

A.要求された議決権割合が当事者の複数の組合せで達成できる場合、特定の組み合わせの全員一致が契約で指定されていない限り、共同支配の取決めには該当しません(IFRS11.B8)。

Q.取決めに参加するすべての企業が共同支配を持つ必要がありますか?

A.いいえ、すべての当事者が共同支配を有している必要はありません。共同支配を有している当事者と、単に参加しているだけで共同支配を有していない当事者は明確に区別されます(IFRS11.11)。

Q.一度共同支配と判定されたら、その後は見直す必要はありませんか?

A.見直す必要があります。事実及び状況が変化した場合には、企業は依然として当該取決めに対する共同支配を有しているかどうかを継続的に再検討しなければならないと義務付けられています(IFRS11.13)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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