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IAS第24号「関連当事者」の定義と開示要件を徹底解説

2025-07-03
目次

国際財務報告基準(IFRS)におけるIAS第24号「関連当事者についての開示」は、企業の財務諸表において、利益相反や富の不当な移転をもたらす可能性のある関係者との取引を透明化するために極めて重要な基準です。本記事では、IAS第24号における関連当事者の厳密な定義(個人および企業)、IFRICアップデートによる近親者の範囲の解釈、関連当事者に該当しないケース、そして実務上判断に迷いやすい具体的なケーススタディを詳しく解説いたします。

IAS第24号に基づく関連当事者の定義

IAS第24号において、関連当事者とは、報告企業と関連のある「個人又は企業」と明確に定義されています(参考:IAS24.9)。この定義は、単なる法的な枠組みを超えて、実質的な支配力や影響力を評価するために詳細に規定されています。

個人における関連当事者の要件

個人(または当該個人の近親者)が報告企業と関連があると判断されるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

該当要件 内容(参考:IAS24.9(a))
支配又は共同支配 報告企業に対する支配又は共同支配を有している場合。
重要な影響力 報告企業に対する重要な影響力を有している場合。
経営幹部 報告企業又は報告企業の親会社の経営幹部の一員である場合。

企業における関連当事者の要件

企業が報告企業と関連当事者となる関係性は多岐にわたります。以下の条件のいずれかに該当する場合、関連当事者として扱われます。

関係性の種類 該当要件(参考:IAS24.9(b))
同一グループ 親会社、子会社、兄弟会社など、互いに同一のグループの一員である場合。
関連・共同支配企業 一方が他方の関連会社又は共同支配企業である場合。
第三者の共同支配 双方の企業が同一の第三者の共同支配企業である場合。
退職後給付制度 報告企業等の従業員のための退職後給付制度である場合。
個人による支配等 関連当事者である個人に支配、共同支配、又は重要な影響力を受けている場合。

その他の重要な定義とIFRICアップデート

基準書では、関連当事者を特定し、取引を開示するために必要な用語の定義も行っています。特に個人の近親者の範囲については実務上の論点となりやすい部分です。

用語 定義内容(参考:IAS24.9)
関連当事者との取引 資源、サービス又は債務の移転。対価の授受の有無は問わない。
個人の近親者 取引において個人に影響を与える、又は影響されると予想される親族(配偶者、子など)。
経営幹部 企業の活動を直接的・間接的に計画、指示、支配する権限と責任を有する者(取締役含む)。
報酬 短期従業員給付、退職後給付、株式に基づく報酬など、すべての従業員給付。

解釈指針委員会(IFRIC)のアップデートにおいて、「個人の近親者」に父母が含まれるかどうかが議論されました。IFRICは、基準書に列挙された親族リストは網羅的ではなく、個々の事実と状況の評価に基づき、父母や祖父母などの他の親族も近親者に該当する可能性があると結論づけました(参考:IAS24.9 E1)。

関連当事者に該当しないケースと関係の実質

関連当事者の関係を評価する際、IAS第24号は単なる法的な形態ではなく、「関係の実質」に留意することを求めています(参考:IAS24.10)。形式的な関係があっても、実質的な影響力を行使できない場合は関連当事者から除外されます。

関連当事者とならない具体的な関係性

本基準書では、単独では関連当事者関係を構成しないケースを明確に定めています。これらは通常の市場取引の範囲内とみなされるためです。

該当しないケース 理由・内容(参考:IAS24.11)
共通の役員・経営幹部 2つの企業が単に共通の取締役や経営幹部を有しているのみでは実質的な支配関係とは言えないため。
共同支配の共有 2社の投資者が、1つの共同支配企業に対する共同支配を単に共有しているのみであるため。
通常の市場取引 金融機関、労働組合、政府部門などが、当該企業と通常の取引を行っているのみであるため。
高い経済的依存度 単一の得意先や仕入先と多額の取引があり経済的依存度が高くても、財務・営業方針の支配権はないため。

関連会社及び共同支配企業の子会社の取扱い

関連当事者の定義を適用する際、関連会社には「関連会社の子会社」が包含され、共同支配企業には「共同支配企業の子会社」が包含されます。したがって、ある関連会社の子会社と、その関連会社に対して重要な影響力を有する投資者は、互いに関連当事者として扱われます(参考:IAS24.12)。

関連当事者の定義が厳格に規定されている背景

関連当事者の定義が広範かつ緻密に規定されている最大の理由は、企業に対して実質的な影響力を及ぼし、利益相反や富の不当な移転を引き起こす可能性のある主体を漏れなく識別することにあります。

利益相反の防止と実質的な影響力の評価

もし「近親者」の定義が配偶者や子だけに限定されていれば、経営者が自身の親(父母)の会社を通じて迂回取引を行い、財務諸表上の情報開示を逃れることが可能になってしまいます。このような抜け道を塞ぐため、IFRICは事実と状況に基づき父母なども近親者に含まれ得ると明確化しました(参考:IAS24.9 E1)。一方で、単なる「経済的依存関係」や「共通の役員がいるだけ」の関係を除外しているのは、それらが直ちに相手企業の意思決定を支配できる権限を意味するわけではないからです。基準書は常に形式よりも「影響力の実質」を重んじています。

IAS第24号の関連当事者に関するケーススタディ

実務においてIAS第24号を適用する際の判断基準を明確にするため、具体的なケーススタディを2つ紹介します。

ケース1:近親者を通じた迂回取引と支配関係

企業Aの代表取締役(経営幹部)の父親が、不動産管理会社Bの全株式を保有(支配)しており、企業Aが会社Bから本社ビルを市場相場より高い賃料で賃借しているケースです。
まず、代表取締役は企業Aの経営幹部であるため関連当事者に該当します(参考:IAS24.9(a)(iii))。次に、事実と状況からこの父親が代表取締役に影響を与える(又は影響される)関係にあると評価されれば、父親は「近親者」に該当します(参考:IAS24.9、IAS24.9 E1)。さらに、会社Bは「近親者である父親」によって支配されている企業であるため(参考:IAS24.9(b)(vi))、企業Aと会社Bは関連当事者となります。結果として、この高額な賃料取引は財務諸表において開示が義務付けられます。

ケース2:経済的依存度と関連当事者の境界線

部品メーカーである企業Cの年間売上の80%が、大手完成車メーカーである企業Dに対するものであるケースです。企業Cは企業Dからの受注が途絶えれば事業存続が危ぶまれるほど、極めて高い「経済的依存度」にあります。
しかし、企業Dは企業Cの株式を一切保有しておらず、役員の派遣なども行っていません。つまり、支配、共同支配、あるいは重要な影響力が存在しません。この場合、どれほど多額の取引があり経済的に依存していたとしても、企業Cと企業DはIAS第24号における関連当事者には該当しません(参考:IAS24.11(d))。これは独立した第三者間の通常の商取引の結果として扱われます。

まとめ

IAS第24号に基づく関連当事者の定義は、企業間や個人との間の実質的な支配関係や影響力を正確に把握し、透明性の高い財務開示を実現するために設計されています。経営幹部の近親者の範囲や、経済的依存度のみでは関連当事者とならない点など、形式ではなく関係の実質を見極めることが実務上極めて重要です。適切な開示を行うためには、取引の背景や当事者間の影響力を慎重に評価する体制の構築が求められます。

IAS第24号「関連当事者」のよくある質問まとめ

Q.個人の近親者には具体的に誰が含まれますか?

A.配偶者や子だけでなく、事実と状況に基づき取引に影響を与える可能性がある場合は父母なども含まれる可能性があります(参考:IAS24.9、IAS24.9 E1)。

Q.経済的に依存している大口の取引先は関連当事者になりますか?

A.株式の保有や役員の派遣などによる支配や重要な影響力がない場合、単に売上の大部分を占める等の経済的依存度が高いだけでは関連当事者には該当しません(参考:IAS24.11(d))。

Q.役員を兼任しているだけで関連当事者になりますか?

A.2つの企業が単に共通の取締役や経営幹部を有しているのみでは、関連当事者には該当しません。関係の実質を評価する必要があります(参考:IAS24.11(a))。

Q.関連当事者との取引は対価が発生していなくても開示対象ですか?

A.はい、関連当事者間の資源、サービス、または債務の移転は、対価の有無に関わらず関連当事者との取引として扱われます(参考:IAS24.9)。

Q.関連会社の子会社は関連当事者に含まれますか?

A.含まれます。関連会社の定義にはその子会社も含まれるため、関連会社の子会社と投資者は互いに関連当事者となります(参考:IAS24.12)。

Q.経営幹部に対する報酬は関連当事者取引に該当しますか?

A.該当します。短期従業員給付や退職後給付、株式に基づく報酬など、すべての従業員給付が関連当事者取引として開示の対象となります(参考:IAS24.9)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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