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IAS24号「関連当事者についての開示」の目的と具体例

2025-07-02
目次

IAS第24号「関連当事者についての開示」における第5項から第8項までの規定について、関連当事者開示の目的、その背景、および具体的なケーススタディを解説いたします。財務諸表の利用者が企業の真の姿を理解するために不可欠な開示の実態を深掘りし、実務に役立つ情報を提供します。

関連当事者についての開示の目的の詳細

関連当事者開示の目的は、企業活動の透明性を高めることにあります。以下に、本基準書で規定されている具体的な目的を項目ごとに解説いたします。

関連当事者との関係の日常性

企業活動において、関連当事者との関係は商取引において通常見られる特徴です。例えば、企業はその営業活動の一部を子会社、共同支配企業、または関連会社を通じて実行します。このような状況下において、企業が投資先の財務および営業方針に影響を与える能力は、支配共同支配、または重要な影響力を通して行使されます(IAS24.5)。

影響力を行使する形態 該当する投資先の種類
支配 子会社
共同支配 共同支配企業
重要な影響力 関連会社

取引による純損益及び財政状態への影響

関連当事者との関係は、企業の純損益および財政状態に重大な影響を与える可能性があります。関連当事者は、関連のない独立した第三者であれば実行しないであろう取引を実行する場合があるためです。例えば、親会社に対して100万円の製造原価で物品を販売する企業は、その他の顧客に対してはそのような利益ゼロの条件で販売することはありません。また、関連当事者間の取引は、独立当事者間取引(アームズ・レングス価格)と同じ金額で実行されないケースが多々存在します(IAS24.6)。

取引条件の比較 具体例
独立当事者間取引 製造原価100万円+利益20万円=販売価格120万円
関連当事者間取引 製造原価100万円+利益0円=販売価格100万円

取引が存在しなくても受ける影響

本基準書において極めて重要な視点として、企業の純損益および財政状態は、関連当事者との取引が発生しない場合であっても、関係性が存在するだけで影響を受けることがあると規定されています(IAS24.7)。

取引が存在しない影響の具体例 発生する事象
取引先の変更 親会社が競合する兄弟会社を取得し、子会社が既存の取引先との関係を終了する
事業活動の制限 親会社からの指示により、子会社が特定の研究・開発活動を差し控える

開示が求められる究極の理由

これまでの理由から、関連当事者との取引、未決済残高(コミットメントを含む)、および関係性について知識を有していることは、財務諸表の利用者にとって極めて重要です。この情報は、企業が直面しているリスクや機会の評価など、企業の営業活動に対する評価を大きく左右する可能性があるため、開示が厳格に求められています(IAS24.8)。

関連当事者開示が求められる背景

このセクションでは、なぜ関連当事者の開示が財務報告においてこれほどまでに重視されるのか、その根底にある背景について解説いたします。

経済的実態の正確な描写

財務報告の根底には経済的実態の正確な描写という目的が存在します。独立した第三者間の取引においては、当事者双方が自らの経済的利益を最大化しようとするため、取引価格は市場の実態を反映します。しかし、資本関係や人的関係で結ばれた関連当事者間では、グループ全体の利益最適化が優先され、個別企業の利益が犠牲になる、あるいは不当に嵩上げされる可能性があります。これを防ぐために透明性の高い開示が必要です。

取引がない場合の影響の可視化

会計は通常、実際に発生した取引を記録しますが、関連当事者関係においては、目に見えない機会費用の発生が企業の将来キャッシュ・フローに甚大な影響を与えます。投資家が「この企業の業績は自律的な市場競争の結果なのか、それとも親会社等の意向によって歪められた結果なのか」を正しく見極めるためには、単なる取引金額だけでなく、関係性そのものの開示が不可欠であるという強い課題意識が背景にあります。

具体的なケーススタディ

実際のビジネス環境において、関連当事者関係がどのように企業の財務諸表や事業活動に影響を与えるのか、2つの具体的なケーススタディを通じて解説いたします。

第三者とは行わない非市場条件での取引

自動車部品メーカーである子会社が、100%親会社である自動車メーカーに対して、特別に利益を乗せない製造原価(コスト1億円)で部品を独占供給しているケースを想定します。もし当該子会社が独立した企業であれば、利益を出せない原価での販売など実行しませんが、親会社の利益を最大化するというグループ戦略のために強制されています。子会社の個別財務諸表だけを見ると利益が出ない構造に見えますが、注記における関連当事者開示を見ることで、投資家は利益が親会社に移転している事実を正しく評価できます(IAS24.6)。

企業 真の経済的実態
子会社 収益力は高いが利益を親会社へ移転している状態
親会社 子会社の犠牲によるグループ利益の最大化

関係性が存在するだけで活動が制限される影響

IT企業である子会社が、独自に開発費用5,000万円を投じてクラウドサービスを開発しようとしていたケースを想定します。しかし、親会社が、当該子会社と全く同じサービスを展開する別の企業(兄弟会社)を買収しました。親会社はグループ内での競合を避けるため、当該子会社に対して重要な影響力を行使し、開発活動の中止と販売の差し控えを指示しました。この場合、直接的な金銭の取引は一切発生していませんが、子会社は将来の見込まれた売上10億円という莫大な利益機会を失う影響を受けています。この関係性が開示されることで、投資家は子会社が親会社の意向によって事業機会を制限されている実態を評価できます(IAS24.7)。

まとめ

IAS第24号「関連当事者についての開示」の目的は、単に取引金額を明記することにとどまらず、企業の純損益や財政状態が関連当事者との関係によってどのように歪められ、あるいは制限されているかを明らかにすることにあります。独立当事者間ではあり得ない取引条件や、取引が存在しなくても生じる機会損失などの実態を開示することで、財務諸表の利用者は企業が直面する真のリスクと機会を正確に評価できるようになります。

関連当事者についての開示のよくある質問まとめ

Q. 関連当事者開示の主な目的は何ですか?

A. 関連当事者との関係や取引が、企業の純損益および財政状態に与える影響を明らかにし、財務諸表利用者が企業のリスクや機会を正確に評価できるようにすることです(IAS24.8)。

Q. 関連当事者間取引は独立当事者間取引とどのように異なりますか?

A. 独立当事者間であれば実行しないような、利益を乗せない原価での販売など、市場価格(アームズ・レングス価格)とは異なる条件で取引が実行される場合があります(IAS24.6)。

Q. 取引が全く発生していなくても開示が必要なのはなぜですか?

A. 親会社からの指示で有望な事業から撤退するなど、関係性が存在するだけで企業の活動が制限され、純損益や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があるためです(IAS24.7)。

Q. 関連当事者との関係の日常性とは何を指しますか?

A. 企業が子会社、共同支配企業、または関連会社を通じて営業活動の一部を行うなど、商取引において通常見られる特徴であり、支配や重要な影響力を行使する状態を指します(IAS24.5)。

Q. 経済的実態の正確な描写とはどういう意味ですか?

A. グループ全体の利益最適化のために個別企業の利益が犠牲になるような場合、単なる数字だけでなく、その背景にある関連当事者との関係性を開示して企業の真の姿を示すことです。

Q. 未決済残高やコミットメントの開示はなぜ重要ですか?

A. 関連当事者との間の将来の義務や権利の存在は、企業が直面しているリスクや機会の評価に直結し、企業の営業活動に対する評価を大きく左右するためです(IAS24.8)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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