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IFRS第5号解説:廃棄予定の非流動資産の会計処理と表示要件

2025-05-12
目次

IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」では、非流動資産の処分方法によって会計処理が大きく異なります。本記事では、売却ではなく「廃棄」を予定している非流動資産の取り扱いについて、第13項から第14項の規定や結論の根拠、適用ガイダンスを交えながら詳細に解説いたします。

廃棄予定の非流動資産の基本的な会計処理

企業が保有する非流動資産のうち、廃棄を予定しているものについては、IFRS第5号において明確な会計処理のルールが定められています。ここでは、売却目的保有への分類が禁止されている理由と、その具体的な対象範囲について解説します。

売却目的保有への分類禁止の理由と要件

企業は、廃棄予定の非流動資産(又は処分グループ)を「売却目的保有」に分類してはなりません。このルールの背景には、帳簿価額の回収方法の違いがあります。廃棄予定の資産は、第三者への売却取引を通じて資金を回収するのではなく、主としてその資産の「継続的使用」を通じて価値が回収されることになります(参考:IFRS5.13、IFRS5.BC24)。そのため、売却目的保有の要件を満たさず、実際に処分されるまでの間は引き続き「保有及び使用」として分類され、通常の減価償却が継続されます(参考:IFRS5.BC36)。

回収方法 会計処理の取り扱い
第三者への売却による回収 売却目的保有に分類し、減価償却を停止
継続的使用による回収(廃棄予定) 売却目的保有への分類不可、減価償却を継続

廃棄予定に含まれる具体的な資産の範囲

IFRS第5号において、廃棄予定の非流動資産(又は処分グループ)に該当する具体的なケースは以下の通り規定されています。これらに該当する場合は、売却目的保有への分類が明確に禁止されます(参考:IFRS5.13)。

廃棄予定の分類 具体例
経済的耐用年数の終了時まで使用 設備の耐用年数が尽きるまで自社工場で稼働させ続けるケース
売却せずに閉鎖する予定 事業撤退に伴い、売却先を探さずに工場や店舗をそのまま閉鎖するケース

廃棄予定資産が非継続事業に該当する場合の表示

廃棄予定の非流動資産は売却目的保有には分類されませんが、一定の要件を満たす場合には、財務諸表上での特別な表示が求められます。ここでは、非継続事業としての表示要件とそのタイミングについて解説します。

使用中止日における区分表示の要件

廃棄予定の処分グループが、IFRS第5号が定める「非継続事業」の要件(独立の主要な事業分野や営業地域を表すなど)を満たす場合、企業は当該処分グループの「使用を中止した日(廃棄された日)」において、その業績及びキャッシュ・フローを包括利益計算書等で「非継続事業」として区分表示しなければなりません(参考:IFRS5.13)。重要な点は、廃棄の意思決定を行った時点ではなく、実際に使用を中止した時点で初めて区分表示が行われるという点です。

一時的な使用停止と廃棄の区別

実務上、需要の変動などにより資産の稼働を一時的に停止するケースがあります。このような遊休状態の資産に対するIFRS第5号の取り扱いについて解説します。

遊休資産の取り扱いと将来の再使用可能性

企業は、一時的に使用しなくなっている非流動資産(遊休状態の資産)を、あたかも廃棄されたかのように会計処理してはなりません。市場の需要減少などで稼働を停止していても、将来的に再度事業活動に使用される可能性がある限り、それは廃棄予定の資産とはみなされません(参考:IFRS5.14、IFRS5.IG8)。したがって、これらの遊休資産は引き続き「保有及び使用」として分類され、減価償却が継続されることになります。

結論の根拠(背景)

国際会計基準審議会(IASB)がIFRS第5号において、売却予定の資産と廃棄予定の資産をどのように区別し、どのような根拠に基づいて現在の基準を設けたのかを解説します。

売却予定と廃棄予定の明確な区別

IFRS第5号は、事業活動に使用されなくなり「売却予定」となった資産と、「廃棄予定」の資産を明確に区別しています(参考:IFRS5.BC36)。売却予定の資産は、主に「売却」によって帳簿価額が回収されるため、売却コスト控除後の公正価値で測定することが論理的です。一方、廃棄予定の資産は売却による資金回収を目的としておらず、経済的耐用年数の最後まで企業自身の事業において「継続使用」されることで価値が消費・回収されます(参考:IFRS5.BC23、IFRS5.BC24、IFRS5.BC36)。このため、米国会計基準(SFAS第144号)と同様のアプローチを採用し、実際の使用を中止して初めて非継続事業としての表示を行う結論に至りました。

具体的なケーススタディ

ここまで解説したIFRS第5号の規定について、実務で想定される具体的なケーススタディを用いてさらに詳しく解説します。

ケース1:一時的な使用停止と廃棄の区別

企業が自社製品に対する市場の需要が一時的に減少したため、ある製造工場の使用を停止したとします。しかし、工場はいつでも稼働可能な状態で維持・メンテナンスされており、需要が回復すれば再度生産に使用されることが期待されています。この場合、工場は単に一時的に遊休状態にあるだけであり、企業はこの工場を「廃棄された」ものとして会計処理してはなりません(参考:IFRS5.14)。工場は引き続き保有・使用されている非流動資産として扱われ、減価償却が継続されます(参考:IFRS5.IG8)。

ケース2:主要事業の非継続事業としての表示時期

企業が20X5年10月に、自社の主要な事業分野の1つである「すべての紡績工場」を廃棄(閉鎖)することを正式に決定したとします。計画では、紡績工場の操業は翌年の20X6年12月31日に完全に停止される予定です。この紡績工場は「閉鎖」予定であるため、売却目的保有には分類されず、稼働終了まで通常の減価償却が継続されます(参考:IFRS5.13)。表示上は、まだ操業が続いている20X5年12月31日終了年度の財務諸表においては通常の「継続事業」として扱います。その後、実際にすべての作業を停止し使用を中止した20X6年12月31日終了年度の財務諸表において初めて、この紡績工場を「非継続事業」として区分表示します(参考:IFRS5.13、IFRS5.IG9)。

まとめ

IFRS第5号における廃棄予定の非流動資産は、売却による回収ではなく継続的使用によって価値が回収されるため、売却目的保有への分類が禁止され、減価償却が継続されます。また、非継続事業としての区分表示は、廃棄の意思決定時ではなく、実際に使用を中止した時点で行う必要があります。一時的な使用停止(遊休状態)との区別も含め、実務においては資産の将来の利用計画と処分方法を慎重に判断し、適切な会計処理と開示を行うことが求められます。

IFRS第5号 廃棄予定の非流動資産のよくある質問まとめ

Q.廃棄予定の非流動資産は売却目的保有に分類できますか?

A.企業は、廃棄予定の非流動資産(又は処分グループ)を「売却目的保有」に分類してはなりません(参考:IFRS5.13)。

Q.なぜ廃棄予定の資産は売却目的保有に分類できないのですか?

A.当該資産の帳簿価額の回収が、第三者への売却取引を通じてではなく、主としてその資産の「継続的使用」を通じて行われることになるためです(参考:IFRS5.13、IFRS5.BC24)。

Q.廃棄予定の資産が非継続事業の要件を満たす場合、いつから区分表示しますか?

A.企業は、当該処分グループの「使用を中止した日(廃棄された日)」において、その業績及びキャッシュ・フローを非継続事業として包括利益計算書等で区分表示しなければなりません(参考:IFRS5.13)。

Q.需要減少により一時的に工場の稼働を停止した場合、廃棄として処理すべきですか?

A.一時的に使用しなくなっている非流動資産を、あたかも廃棄されたかのように会計処理してはなりません。将来的に再度使用される可能性がある限り、廃棄予定の資産とはみなされません(参考:IFRS5.14、IFRS5.IG8)。

Q.廃棄予定の資産の減価償却はどうなりますか?

A.売却目的保有の要件を満たさないため、実際に処分(廃棄や閉鎖)されるまでの間は引き続き「保有及び使用」として分類され、減価償却が継続されます(参考:IFRS5.BC36)。

Q.廃棄予定の主要事業を閉鎖決定した年度に非継続事業として表示できますか?

A.できません。操業が続いている年度は継続事業として扱い、実際にすべての作業を停止し使用を中止した年度の財務諸表において初めて非継続事業として区分表示します(参考:IFRS5.13、IFRS5.IG9)。

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社名
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対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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