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IFRS第5号の目的とは?売却目的保有資産と非継続事業を解説

2025-05-09
目次

企業が事業再編や多角化の解消に伴い、特定の事業分野や資産を売却するケースが増加しています。本記事では、国際財務報告基準であるIFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」の第1項に焦点を当て、その目的や背景、具体的なケーススタディを交えて詳細に解説いたします。

IFRS第5号が定める基本的な目的と主要な要求事項

IFRS第5号は、企業が保有する資産のうち、事業での使用を終えて売却を予定しているものに対する会計処理の枠組みを提供しています。

基準書の目的と対象範囲

本基準書の最大の目的は、売却目的で保有する非流動資産の会計処理と、非継続事業の表示および開示のルールを明確に定めることです。(IFRS5.1) これにより、投資家をはじめとする財務諸表利用者が、企業の将来のキャッシュ・フローをより正確に予測できるようになります。

企業に求められる2つの主要な要件

本基準書は、売却目的保有に分類される資産に関して、企業に対して主に測定と表示の2つの側面から厳格な要件を課しています。(IFRS5.1)

要件の区分 具体的な対応内容
測定に関する要件 帳簿価額と公正価値の比較による低価評価、および減価償却の即時中止 (IFRS5.1(a))
表示に関する要件 財政状態計算書および包括利益計算書における明確な区分表示 (IFRS5.1(b))

売却目的で保有する非流動資産の測定と減価償却の停止

資産が売却目的保有に分類された時点から、その資産に対する会計処理のアプローチは大きく変化します。

帳簿価額と公正価値の比較測定

売却目的保有に分類される要件を満たした非流動資産は、「帳簿価額」または「売却コスト控除後の公正価値」のいずれか低い方の金額で測定しなければなりません。(IFRS5.1(a)) この規定により、売却によって回収できないと見込まれる損失を早期に財務諸表に反映させることが可能となります。

減価償却の即時中止とその理由

当該資産が売却目的保有の要件を満たした時点で、その資産に対する減価償却は直ちに中止しなければなりません。(IFRS5.1(a)) この背景には、事業に使用しなくなった資産の会計処理は、取得原価を耐用年数にわたって費用配分するプロセス(減価償却)から、現在の市場価値に基づく回収可能額で評価し直すプロセスへと移行すべきであるという考え方があります。

状態 会計処理の基本方針
事業で使用中の非流動資産 取得原価に基づく減価償却による体系的な費用配分
売却目的で保有する非流動資産 減価償却を中止し、現在の市場価値に基づく低価評価へ移行

財務諸表における区分表示のルール

投資家が企業の継続的な収益力を適切に評価できるよう、売却予定の資産や事業は通常の事業活動とは切り離して表示する必要があります。

財政状態計算書(貸借対照表)での表示

売却目的保有に分類される要件を満たす資産は、財政状態計算書において通常の有形固定資産などとは明確に分けて区分表示しなければなりません。(IFRS5.1(b)) これにより、どの資産が将来の事業活動に貢献せず、早期に現金化される予定であるかが一目で把握できるようになります。

包括利益計算書(損益計算書)での非継続事業の表示

非継続事業の経営成績についても、包括利益計算書において継続事業とは区分して表示することが求められます。(IFRS5.1(b)) 売却予定の事業から生じる損益を分けることで、一時的な要因による損益が将来の業績予測を歪めることを防ぎます。

IFRS第5号が開発された背景とIASBの意図

本基準書が導入される以前の会計実務における課題を解決するため、新たなルールが策定されました。

旧基準からの移行と米国基準とのコンバージェンス

国際会計基準審議会(IASB)は、2004年3月にIFRS第5号を公表し、旧基準であるIAS第35号「非継続事業」を置き換えました。この開発は、米国の財務会計基準審議会(FASB)が公表したSFAS第144号「長期性資産の減損又は処分に関する会計処理」との短期的なコンバージェンス(差異の削減)プロジェクトの一環として実施されました。

財務諸表利用者への有用性向上

旧基準下では、保有・使用される非流動資産と売却目的の非流動資産との間に独立した分類や異なる測定は要求されていませんでした。しかし、処分予定の資産グループや関連する負債の情報を独立して提供することが、財務諸表利用者にとって極めて有用であるとIASBは結論付けました。これにより、将来キャッシュ・フローの時期、金額、不確実性の評価がより精緻に行えるようになります。

具体的なケーススタディ:ホテル事業からの撤退と売却

ここでは、製造業を主業とする企業Aが、多角化の一環で運営していた主要な事業分野である「ホテル事業」から撤退し、ホテル建物を売却するケースを想定して解説します。すでに投資銀行を通じて積極的な買手探しを開始しており、売却の可能性が非常に高い状況です。

ホテル建物の再評価と減損損失の計上

ホテル建物が「売却目的保有」の要件を満たした時点から、企業Aは直ちにこの建物に対する減価償却の計上を停止します。(IFRS5.1(a)) 次に、現在の帳簿価額(例:10億円)と、売却コスト控除後の公正価値(例:8億円)を比較します。低い方である8億円で建物を再評価し、差額の2億円を減損損失として計上します。(IFRS5.1(a))

評価項目 具体的な金額(例)
現在の帳簿価額 10億円
売却コスト控除後の公正価値 8億円(2億円の減損損失を計上)

財務諸表上の区分表示と投資家への影響

表示面において企業Aは、財政状態計算書上でこの建物を通常の「有形固定資産」に含めるのではなく、「売却目的で保有する非流動資産」という独立した項目として区分表示します。(IFRS5.1(b)) また、包括利益計算書においても、本業である製造業の利益(継続事業)とは明確に分けて、「非継続事業からの損益」として区分表示します。(IFRS5.1(b)) これにより、投資家はホテル事業による2億円の損失や売却の影響が今回限りであり、来期以降の企業Aの継続的な業績には影響を与えないという実態を正確に分析できるようになります。

まとめ

IFRS第5号は、企業が売却を予定している非流動資産や非継続事業について、厳密な測定方法と明確な区分表示を求めています。(IFRS5.1) 減価償却の即時中止や、帳簿価額と公正価値の低価評価への移行により、資産の実態価値が適時に財務諸表へ反映されます。また、財政状態計算書および包括利益計算書における区分表示は、投資家が企業の将来キャッシュ・フローや継続的な収益力を正確に見極めるための極めて重要な情報源となります。

IFRS第5号に関するよくある質問まとめ

Q. IFRS第5号の主な目的は何ですか?

A. 売却目的で保有する非流動資産の会計処理と、非継続事業の表示および開示のルールを明確に定めることです。(IFRS5.1)

Q. 売却目的に分類された資産の測定方法はどのようになりますか?

A. 「帳簿価額」または「売却コスト控除後の公正価値」のいずれか低い方の金額で測定しなければなりません。(IFRS5.1(a))

Q. 売却目的に分類された資産の減価償却はどうなりますか?

A. 当該資産が売却目的保有の要件を満たした時点から、減価償却は直ちに中止しなければなりません。(IFRS5.1(a))

Q. 財政状態計算書において売却目的の資産はどのように表示しますか?

A. 通常の事業用資産とは混ぜずに、「売却目的で保有する非流動資産」として独立した項目で区分表示しなければなりません。(IFRS5.1(b))

Q. 非継続事業の業績は包括利益計算書でどのように扱われますか?

A. 本業などの継続事業の利益とは明確に分けて、「非継続事業からの損益」として区分表示することが求められます。(IFRS5.1(b))

Q. なぜ売却目的の資産の減価償却を中止するのですか?

A. 事業に使用しなくなった資産の会計処理を、取得原価の費用配分プロセス(減価償却)から、現在の市場価値に基づく回収可能額の評価プロセスへと移行させるためです。

事務所概要
社名
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住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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