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IFRS第12号「他の企業への関与の開示」の適用範囲と実務対応

2025-04-28
目次

IFRS(国際財務報告基準)を適用する企業において、他の企業への関与に関する適切な情報開示は、投資家に対する透明性を確保するために不可欠です。本記事では、IFRS第12号「他の企業への関与の開示」における適用範囲(第5項〜第6項)の詳細やその背景、そして実務に即した具体的なケーススタディについて解説いたします。

IFRS第12号における適用範囲の原則

本基準書が適用される対象企業

IFRS第12号は、企業が有する他の企業への関与から生じるリスクや財務的影響を投資家が評価できるようにするための開示要求を定めています。具体的には、以下のいずれかに該当する企業への関与を有する企業に対して適用されなければなりません(IFRS12.5)。

適用対象となる関与の種類 該当する企業の例
子会社 支配を獲得している企業
共同支配の取決め 共同支配事業または共同支配企業
関連会社 重要な影響力を有している企業
非連結の組成された企業 議決権以外の手段で支配される特別目的会社など

IFRS第5号「売却目的保有」に分類された場合の取り扱い

企業が有する関与のうち、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」に従って売却目的保有または非継続事業に分類されるもの(処分グループに含まれるものを含む)についても、原則としてIFRS第12号の要求事項が適用されます(IFRS12.5A)。これは、売却が予定されている場合であっても、他の企業への関与から生じるリスクが完全に消滅するわけではないためです。

要約財務情報の開示免除に関する規定

IFRS第5号に基づいて売却目的保有等に分類された関与については、IFRS第12号の原則的な開示が求められる一方で、一定の負担軽減措置が設けられています。具体的には、通常であれば要求される子会社や関連会社等の詳細な要約財務情報の開示は免除されます(IFRS12.5A、IFRS12.B17)。これにより、企業は投資家にとって有用なリスク情報を開示しつつ、実務的な負担を軽減することが可能となります。

IFRS第12号が適用されない例外規定

IAS第19号およびIAS第27号に関する適用除外と例外

IFRS第12号には、いくつかの適用除外が定められています。第一に、IAS第19号「従業員給付」が適用される退職後給付制度やその他の長期従業員給付制度には適用されません(IFRS12.6(a))。第二に、IAS第27号「個別財務諸表」が適用される企業の個別財務諸表には原則として適用されません(IFRS12.6(b))。ただし、この個別財務諸表に関する規定には以下の重要な例外が存在します。

個別財務諸表における適用例外 適用される開示内容
非連結の組成された企業への関与のみを有する場合 非連結の組成された企業に関する開示要求(IFRS12.24-31)
投資企業が子会社を公正価値測定する場合 投資企業に関する特有の開示要求

共同支配を有していない取決めへの関与

共同支配の取決めに参加しているものの、当該取決めに対する共同支配を有していない企業が保有する関与については、原則としてIFRS第12号は適用されません(IFRS12.6(c))。しかし、その関与によって取決めに対して重要な影響力が生じている場合、またはそれが組成された企業への関与である場合には、適用対象となります(IFRS12.6(c))。

IFRS第9号「金融商品」に基づく会計処理の取り扱い

IFRS第9号「金融商品」に従って会計処理される他の企業への関与についても、原則として本基準書は適用されません(IFRS12.6(d))。ただし、ここでも例外が設けられており、以下のケースではIFRS第12号を適用する必要があります。

IFRS第9号適用時の例外要件 具体的な状況
IAS第28号に基づく公正価値測定 関連会社または共同支配企業への関与を純損益を通じて公正価値で測定する場合(IFRS12.6(d)(i))
非連結の組成された企業への関与 当該関与が非連結の組成された企業に対するものである場合(IFRS12.6(d)(ii))

適用範囲に関する規定の背景とIASBの意図

売却目的保有等に対する開示要求の継続理由

IFRS第5号の範囲に含まれる関与に対してもIFRS第12号を適用する背景には、国際会計基準審議会(IASB)の明確な意図があります。売却目的保有や非継続事業に分類されたとしても、売却が完了するまでは他の企業への関与から生じる財務的リスクは依然として企業に帰属します。そのため、すべての開示要求を免除することは投資家への情報提供の観点から不適切であると判断されました(IFRS12.BC8A、IFRS12.BC8B)。どの開示要求が関連性が高いかについては、企業自身が具体的な事実および状況に基づき判断することが求められています(IFRS12.BC8E)。

投資企業の個別財務諸表に対する適用例外の背景

投資企業の個別財務諸表に対する適用例外(IFRS12.6(b)(ii))が設けられた背景には、IFRS第10号「連結財務諸表」における投資企業に対する連結の例外規定があります。ベンチャーキャピタルのような投資企業は、すべての子会社を純損益を通じて公正価値で測定するため、連結財務諸表を作成せず個別財務諸表のみを作成する実務が認められています(IFRS12.BC61I)。このような場合でも、投資企業特有のリスクや経営陣の判断に関する情報を投資家に確実に提供するため、IFRS第12号の開示要求が適用されることが明確化されました(IFRS12.BC61I)。

実務における具体的なケーススタディ

関連会社を売却目的保有に分類した企業のケース

多様な投資活動を行う企業の事例を想定します。当該企業は、議決権の30%を保有する関連会社への関与を有しています。当期において、当該企業は関連会社の全株式を来期中に売却する契約を締結し、IFRS第5号に従って関連会社への関与を「売却目的保有」に分類しました。この場合、企業は関連会社を手放す予定ですが、IFRS第12号の適用範囲から完全に除外されるわけではありません。売却が完了するまでは関連会社に関連するリスクを投資家に示す必要があるため、引き続き本基準書に基づく開示を行います(IFRS12.BC8B)。ただし、実務負担への配慮から、関連会社の詳細な要約財務情報の開示については免除されます(IFRS12.5A)。

投資企業が個別財務諸表のみを作成するケース

ベンチャーキャピタルとして活動し、自らを投資企業と判定している企業のケースを想定します。当該企業は数十社のスタートアップ企業(子会社)を保有していますが、IFRS第10号の規定に従いこれらを一切連結せず、すべて純損益を通じて公正価値で測定しています。結果として、IAS第27号に基づく個別財務諸表のみを作成しています。通常、個別財務諸表はIFRS第12号の適用対象外ですが(IFRS12.6(b))、当該企業は投資企業であるため例外規定が適用されます(IFRS12.6(b)(ii))。したがって、この個別財務諸表において、投資企業の地位に関する判断(IFRS12.9A)や、非連結子会社から資金を回収する能力に関する制限の内容(IFRS12.19D)など、特有の開示を行わなければなりません。

まとめ

IFRS第12号「他の企業への関与の開示」は、子会社や関連会社などへの関与から生じるリスクを透明化するための重要な基準です。売却目的保有に分類された場合や、投資企業が個別財務諸表のみを作成する場合など、実務上迷いやすい例外規定が詳細に定められています。企業はこれらの適用範囲(第5項〜第6項)を正確に理解し、投資家にとって有用な情報を適切に開示する体制を整えることが求められます。

IFRS第12号「他の企業への関与の開示」のよくある質問まとめ

Q.IFRS第12号はどのような企業への関与に適用されますか?

A.子会社、共同支配の取決め(共同支配事業または共同支配企業)、関連会社、非連結の組成された企業のいずれかへの関与を有する企業に対して適用されます(IFRS12.5)。

Q.売却目的保有に分類された関与にIFRS第12号は適用されますか?

A.原則として適用されます。売却が完了するまでは関連するリスクが存在するため、投資家への情報開示が求められます(IFRS12.5A、IFRS12.BC8B)。

Q.売却目的保有に分類された場合、すべての開示要件を満たす必要がありますか?

A.いいえ、要約財務情報の開示については免除されるという例外規定が設けられています(IFRS12.5A、IFRS12.B17)。

Q.個別財務諸表を作成する場合、IFRS第12号は適用されますか?

A.IAS第27号が適用される個別財務諸表には原則として適用されません。ただし、投資企業が子会社を公正価値で測定する場合などの例外があります(IFRS12.6(b))。

Q.共同支配を有していない取決めへの関与は適用対象ですか?

A.原則として適用されません。ただし、その関与によって取決めに対して重要な影響力が生じている場合などは適用対象となります(IFRS12.6(c))。

Q.投資企業が個別財務諸表のみを作成する場合、どのような開示が必要ですか?

A.投資企業の地位に関する判断や、非連結子会社からの資金回収能力の制限など、投資企業特有のリスクに関する開示が必要となります(IFRS12.6(b)(ii)、IFRS12.9A)。

事務所概要
社名
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住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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