公認会計士事務所プライムパートナーズ
お問い合わせ

IFRS第6号「鉱物資源の探査及び評価」認識後の測定と実務対応

2025-04-02
目次

本記事では、IFRS第6号「鉱物資源の探査及び評価」における認識後の測定に関する規定の詳細やその背景、および実務上の具体的なケーススタディを解説いたします。資源開発企業において、取得した探査及び評価資産をどのように測定し、財務諸表に反映させるべきかは、企業の財政状態を正確に開示する上で極めて重要なテーマとなります。

IFRS第6号における認識後の測定の基本

IFRS第6号においては、探査及び評価資産を初期認識した後、後続の測定において適用すべき会計方針が明確に定められています。企業は自社の会計方針として適切な測定モデルを選択し、それを継続して適用する義務があります。

原価モデルと再評価モデルの選択

企業は、探査及び評価資産を認識した後、当該資産に対して原価モデル又は再評価モデルのいずれかを適用して測定しなければなりません(IFRS6.12)。この選択は、企業の財務状況や保有する資産の性質を総合的に考慮して慎重に行う必要があります。

測定モデル 会計処理の概要
原価モデル 取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除して測定する方法
再評価モデル 公正価値からその後の減価償却累計額及び減損損失累計額を控除して測定する方法

どちらのモデルを選択するかによって、期末の貸借対照表価額や包括利益に直接的な影響を与えることになります。

有形資産と無形資産の分類と整合性

企業が再評価モデルを適用することを選択した場合、その適用方法は対象となる探査及び評価資産の分類と完全に整合していなければなりません。具体的には、当該資産が有形固定資産に分類される場合はIAS第16号「有形固定資産」の再評価モデルを適用し(IAS16.31-42)、無形資産に分類される場合はIAS第38号「無形資産」の再評価モデルを適用することになります(IAS38.75-87)。この前提となる資産の分類は、性質に応じた区分に従って決定されます(IFRS6.15)。

再評価モデルの適用要件と背景

認識後の測定において、原価モデルだけでなく再評価モデルの適用も許容されている背景には、既存のIFRS体系との原則的な整合性を維持する意図があります。しかしながら、その適用要件には実務上留意すべき大きな違いが存在します。

IAS第16号とIAS第38号の不整合への懸念

国際会計基準審議会(IASB)は、有形資産に対するIAS第16号と、無形資産に対するIAS第38号の各再評価モデルの間に存在する適用要件の不整合について強い懸念を抱いていました(IFRS6.BC29)。

適用基準 再評価の必須要件
IAS第16号(有形資産) 市場を基にした証拠を用いて公正価値を算定できること
IAS第38号(無形資産) 活発な市場を参照して公正価値を算定できること

このように、無形資産の再評価には活発な市場の存在という極めて厳格な要件が課されています。IASBは、企業がこの適用要件の違いを利用し、より有利な測定結果を達成するために恣意的な資産分類を行ってしまうのではないかと危惧していました。

IASBが再評価モデルを容認した理由

公開草案に対するコメントの中には、探査及び評価資産の測定の信頼性が乏しいことを理由に、再評価を裁量的に禁止する方が望ましいという意見も提出されました。しかし、IASBは、実務上これらの資産を再評価することが幅広く行われているわけではないものの、IAS第16号又はIAS第38号に基づく再測定を選択的に禁止することは会計原則上適切ではないと判断しました(IFRS6.BC30)。結果として、反対意見を退け、再評価モデルの適用を容認する結論が維持されました。

企業結合で取得される資産の取り扱い

探査及び評価資産が企業結合の結果として取得されるケースも存在します。このような場合、企業結合で取得された探査及び評価資産については、IFRSを適用するすべての企業と同様に、IFRS第3号「企業結合」に準拠して適切な会計処理を行うべきであると整理されています(IFRS6.BC31)。

ケーススタディ:資源開発企業の適用事例

ここでは、資源開発企業が新たな鉱区における探査プロジェクトを開始したケースを想定し、実務における測定モデルの適用について具体的に解説します。この企業は、「探査用車両および掘削装置」と「特定の場所を探査・掘削する権利」の2種類の資産を取得しました。

有形資産(探査用車両等)の再評価

企業は取得した資産の性質に基づき、「探査用車両および掘削装置」を有形資産に分類しました。認識後の測定において、これらに対して再評価モデルを選択した場合、IAS第16号のモデルと整合させる必要があります。このケースでは、中古機械市場の取引価格や専門家による鑑定評価など、市場を基にした証拠を用いて公正価値を算定し、再評価を実施することが実務上可能です(IAS16.31)。

無形資産(探査・掘削権)の再評価のハードル

一方で、企業は「特定の場所を探査・掘削する権利」を無形資産に分類しました。これに対しても再評価モデルを適用したいと考えた場合、IAS第38号の厳密な要件を満たす必要があります。無形資産の再評価には活発な市場の存在が不可欠ですが、通常、未開発の特定の探査権が頻繁に取引され、価格情報が常に公開されているような活発な市場は存在しません(IAS38.75)。したがって、企業は実質的にこの探査権について再評価モデルを適用することができず、原価モデルで測定を継続せざるを得なくなります。

まとめ

IFRS第6号第12項が規定する認識後の測定は、単なる会計処理の選択手続きにとどまりません。企業が探査及び評価資産を有形資産とするか無形資産とするかの分類により、再評価モデルを適用するための要件が大きく異なります。実務においては、対象資産の性質を正確に把握し、各基準が求める厳格な要件に照らし合わせて、最も適切な測定モデルを適用することが求められます。

IFRS第6号 認識後の測定に関するよくある質問まとめ

Q. IFRS第6号において、探査及び評価資産の認識後の測定で選択できるモデルは何ですか?

A. 企業は、探査及び評価資産を認識した後、原価モデル又は再評価モデルのいずれかを選択して適用しなければなりません(IFRS6.12)。

Q. 有形資産に分類された探査資産に再評価モデルを適用する場合の要件は何ですか?

A. IAS第16号に準拠し、市場を基にした証拠を用いて公正価値を算定することが求められます(IAS16.31)。

Q. 無形資産に分類された探査資産に再評価モデルを適用する場合の要件は何ですか?

A. IAS第38号に準拠し、活発な市場を参照して公正価値を算定できる場合にのみ再評価モデルの使用が認められます(IAS38.75)。

Q. 探査・掘削権などの無形資産の再評価が実務上困難なのはなぜですか?

A. 無形資産の再評価には活発な市場の存在が不可欠ですが、未開発の特定の探査権が頻繁に取引される活発な市場は通常存在しないためです(IAS38.75)。

Q. IASBはなぜ探査資産の再評価モデルを禁止しなかったのですか?

A. IASBは、既存のIFRS体系(IAS第16号およびIAS第38号)との整合性を重視し、再測定を選択的に禁止することは適切ではないと判断したためです(IFRS6.BC30)。

Q. 企業結合によって取得した探査及び評価資産はどのように測定されますか?

A. 企業結合で取得された探査及び評価資産については、IFRS第3号「企業結合」に準拠して会計処理を行う必要があります(IFRS6.BC31)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

士業の先生向け専門家AI
士業AI【会計】
▼▼▼ まずは専門家に相談 ▼▼▼