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IFRS第3号の企業結合:段階取得と対価移転なしの会計実務

2025-02-17
目次

IFRS第3号「企業結合」において、特定の類型の企業結合に取得法を適用するための追加的な指針が第41項から第44項に規定されています。本記事では、すでに一部の持分を保有している状態から支配を獲得する「段階的に達成される企業結合(段階取得)」と、株式の交換や現金の支払いがない「対価の移転なしに達成される企業結合」の2つの類型について、背景となる結論の根拠や具体的なケーススタディを交えて詳細に解説いたします。

段階的に達成される企業結合(段階取得)の会計処理

段階取得の定義と要件

取得企業は、被取得企業に対する支配を獲得する日(取得日)の直前に、すでに被取得企業の資本持分を保有している場合があります。例えば、すでに35%の持分を保有している企業が、追加で40%の持分を購入し、合計75%の議決権を有して支配を獲得するようなケースです。本基準書では、このような取引を段階的に達成される企業結合または段階取得と定義しています(第41項)。

取引の段階 持分比率と支配の状況
支配獲得前 35%保有(重要な影響力等を有する状態)
支配獲得時(取得日) 追加で40%取得し、合計75%で支配を獲得

従来保有持分の再測定と純損益の認識

段階取得が行われた場合、取得企業は、従来保有していた被取得企業に対する資本持分を取得日の公正価値で再測定しなければなりません(第42項)。この再測定によって生じた利得又は損失は、原則として当期の純損益に認識いたします。ただし、過去の報告期間において、当該資本持分の価値変動をその他の包括利益(OCI)に認識していた場合(IFRS第9号による選択など)には、そのOCIに認識された金額は、当該資本持分を直接処分したならば要求されたであろう基礎と同じ基礎で認識(例えば利益剰余金への振替え等)する必要があります。

従来保有持分の評価方法 会計処理(第42項)
取得日における評価 取得日公正価値で再測定
再測定差額の処理 原則として当期の純損益に認識(OCI選択時は要件に従う)

共同支配事業から支配獲得への移行

共同支配の取決めの当事者が、共同支配事業に対する支配を獲得する場合も、段階的に達成される企業結合に該当いたします。この際、取得企業は、共同支配事業に関して従来保有していた持分の全体を取得日公正価値で再測定しなければなりません(第42A項)。これにより、持分の性質の著しい変化が財務諸表に適切に反映されることとなります。

段階取得に関する結論の根拠(背景)

原価累積アプローチの廃止と実質の重視

過去の基準(IAS第22号等)では、段階取得において各取引段階での原価を累積し、資産や負債の過去の帳簿価額と現在の公正価値を混合して配分する手法(原価累積アプローチ)が採用されていました。しかし、この手法は財務諸表の利用者にとって理解困難で不整合な情報をもたらすと批判されておりました(BC199項)。IASBは、企業に対する非支配投資の保有から支配の獲得への変化は、投資の性質及び経済的環境の重大な変更であると結論付け、過去の帳簿価額を引き継ぐのではなく公正価値で再測定することが適切であると判断いたしました(BC384項)。

のれん算定の簡素化と利得認識の妥当性

一部の関係者からは、購入取引によって利得を認識することへの懸念が示されました。しかしIASBは、これは購入によって利得が生じたのではなく、投資資産が公正価値で測定されていなかったために内在していた経済的な利得又は損失を遅れて認識した結果にすぎないと整理いたしました(BC387項)。さらに、過去の各段階の原価と公正価値を遡って比較する複雑なプロセスを廃止し、取得日という一度の測定のみでのれんを算定できるようにしたことで、会計処理の複雑性と実務コストを大幅に削減しております(BC328項)。

対価の移転なしに達成される企業結合の会計処理

対価の移転がない企業結合の3つの状況

取得企業が対価を移転することなく支配を取得する場合があり、このような企業結合にも取得法が適用されます(第43項)。対価を移転することなく支配が取得される状況としては、主に以下の3つのケースが規定されています。

状況の類型 具体的なケース(第43項)
自己株式の買い戻し 被取得企業が自己株式を買い戻した結果、既存投資家が支配を獲得した場合
拒否権の消滅 少数株主の拒否権が消滅し、過半数議決権保有者が支配を獲得した場合
契約のみによる結合 ステープリング契約や二重上場企業の設立など、契約のみで事業を結合した場合

非支配持分の取扱いとのれんの測定

契約のみで達成される企業結合においては、取得企業は被取得企業の純資産の金額を被取得企業の所有者に帰属させなければなりません。取得企業以外の当事者が保有する被取得企業の資本持分は、たとえそれが100%であっても、結合後の財務諸表では非支配持分として扱われます(第44項)。また、対価の移転がないため、のれんの測定にあたっては、移転された対価の取得日公正価値の代わりに、被取得企業に対する取得企業の持分の取得日公正価値を使用しなければなりません(第33項)。

対価移転なしに関する結論の根拠(背景)

契約のみによる結合の適用範囲への包摂

旧基準では、株式の交換や現金の支払いがなく契約締結のみで支配を獲得するケースは適用範囲から除外されておりました。しかし、IASBは、相互会社同士の結合と同様に、契約のみによる結合も経済的動機や実質において他の企業結合と類似しているため、IFRS第3号の範囲に含め、取得法を適用すべきであると結論付けました(BC78項)。

取得企業の識別と公正価値測定の正当化

契約のみによる結合では、対価の支払いがなく取得企業の識別が困難な場合があります。しかし、取得企業の識別が困難であることは、フレッシュ・スタート法など異なる会計処理方法を正当化する理由にはならないと判断されました(BC79項)。また、移転される対価がない状況でののれんの算定において、持分の公正価値を直接測定することはコストがかかる可能性がありますが、改善された財務情報の便益がそのコストを上回ると結論付けられています(BC332項)。

具体的なケーススタディ:ステープリング契約

ステープリング契約における取得企業の識別

別個の企業や事業を、所有持分及び議決権持分の統一によって結合するステープリング契約が結ばれたケースを想定いたします。この契約では株式の取得等はなく、どの結合企業も他方に対する直接的な支配を獲得しないように見えます。しかし、IFRIC(解釈指針委員会)は、このような対等合併的な取引であってもIFRS第3号の企業結合の定義を満たすと判断いたしました。したがって、結合後企業における相対的な議決権の大きさ等を評価し、結合企業のうちの1社を必ず取得企業として識別しなければなりません。

評価項目 実務上の対応(E7)
企業結合の該当性 対等合併的なステープリング契約も企業結合の定義を満たす
取得企業の識別 相対的な議決権等を評価し、必ず1社を取得企業として識別する

結合後企業の連結財務諸表における会計処理

識別された取得企業は、対価を移転していなくても、IFRS第10号に従って結合後企業の連結財務諸表を作成し、被取得企業の純資産を取り込む必要があります。この際、被取得企業の所有者の持分は、全額が非支配持分として表示されることになります(第44項)。これにより、契約のみによる結合であっても、経済的実質を反映した透明性の高い財務報告が可能となります。

まとめ

IFRS第3号における段階取得および対価の移転なしに達成される企業結合は、いずれも経済的実質を重視し、取得日における公正価値測定と取得法の適用を求めています。段階取得では従来保有持分の再測定による適切な損益認識が求められ、対価の移転がない結合においては、非支配持分の厳格な識別と持分の公正価値を用いたのれんの測定が不可欠です。実務においては、これらの要件を正しく理解し、複雑な企業結合取引に対しても適切な会計処理を適用することが重要となります。

IFRS第3号「企業結合」のよくある質問まとめ

Q. 段階取得とはどのような企業結合ですか?

A. 取得企業が支配を獲得する直前に、すでに被取得企業の資本持分を保有している企業結合です(第41項)。

Q. 段階取得における従来保有持分はどのように処理しますか?

A. 取得日の公正価値で再測定し、生じた利得又は損失を原則として当期の純損益に認識します(第42項)。

Q. 従来保有持分の価値変動をOCIに認識していた場合はどうなりますか?

A. 当該資本持分を直接処分した場合と同じ基礎で処理し、純損益や利益剰余金へ振り替えます(第42項)。

Q. 対価の移転なしに達成される企業結合とは何ですか?

A. 株式の取得や現金の支払いがなく、自己株式の買い戻しや契約のみで支配を獲得するケースです(第43項)。

Q. 契約のみで結合した場合、被取得企業の純資産はどのように扱われますか?

A. 取得企業以外の当事者が保有する資本持分は、100%であっても取得企業の連結財務諸表で非支配持分として扱われます(第44項)。

Q. 対価の移転がない場合、のれんはどのように測定しますか?

A. 移転された対価の代わりに、被取得企業に対する取得企業の持分の取得日公正価値を使用して算定します(第33項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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