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【IFRS第2号】株式に基づく報酬の適用範囲を徹底解説

2024-11-12
目次

国際財務報告基準書第2号(IFRS第2号)「株式に基づく報酬」は、企業が株式に基づく報酬取引を行う際の財務報告について定めています。本基準書の主な目的は、従業員に付与されるストック・オプションに関連する費用を含め、株式に基づく報酬取引が企業の純損益および財政状態に与える影響を適切に反映させることにあります。本稿では、専門家の視点から、IFRS第2号の適用範囲について、関連する条項番号を網羅しつつ、明確かつ丁寧に解説いたします。

IFRS第2号の適用対象となる取引

IFRS第2号は、後述する例外規定(第3A項から第6項)を除き、企業が受け取った財またはサービスを具体的に識別できるか否かにかかわらず、原則としてすべての株式に基づく報酬取引に適用されます(第2項)。本基準書が適用される主要な取引は、以下の3つの類型に大別されます。

持分決済型の株式に基づく報酬取引

持分決済型とは、企業が自社の資本性金融商品(株式やストック・オプションなど)を引き渡す対価として、財またはサービスを受け取る取引を指します(第2項(a))。これは、従業員や外部コンサルタントに対して、勤務や役務提供の報酬として自社株やストック・オプションを付与するケースが典型例です。

現金決済型の株式に基づく報酬取引

現金決済型とは、企業が財またはサービスの対価として、自社の資本性金融商品の価格(株価など)に基づいて算定される金額を、現金または他の資産で支払う負債を負う取引です(第2項(b))。代表的な例として、株価連動型現金報酬(SARs: Stock Appreciation Rights)が挙げられます。この場合、企業は資本性金融商品そのものではなく、その価値に連動した現金を支払います。

決済方法に選択権が与えられている取引

これは、財またはサービスを受け取る取引において、契約条件により企業または取引の相手方(財・サービスの供給者)のいずれかが、決済方法を選択できる取引です(第2項(c))。選択権の行使により、持分決済(資本性金融商品の発行)となるか、現金決済(現金等の支払い)となるかが決定されます。どちらが選択権を持つかによって会計処理が異なるため、注意が必要です(第35項から第43項参照)。

グループ企業間における株式に基づく報酬取引

株式に基づく報酬は、必ずしも財・サービスを受け取る企業自身が決済するとは限りません。親会社や他のグループ会社が決済義務を負うケースも多く見られます。このようなグループ企業間の取引についても、IFRS第2号は適用されます(第3A項)。

取引の当事者 IFRS第2号の適用
財またはサービスを受け取る企業 同一グループ内の他の企業(またはその株主)が決済義務を負っている場合でも、本基準書を適用します(第3A項(a))。
決済義務を有する企業 同一グループ内の他の企業が財またはサービスを受け取る場合において、決済義務を負う企業は本基準書を適用します(第3A項(b))。

ただし、これらの取引が、財・サービスへの対価の支払い以外の目的(例:グループ内での出資など)で明らかに実施された場合は、適用対象外となります。

IFRS第2号の適用範囲から除外される取引(例外規定)

IFRS第2号は広範な取引に適用されますが、特定の状況下では適用されない例外規定が設けられています(第3A項から第6項)。

資本性金融商品の保有者としての取引

企業の従業員やその他の者が、「従業員として」ではなく「資本性金融商品の保有者(株主)として」の立場で参加する取引は、本基準書の適用範囲に含まれません(第4項)。例えば、企業が特定のクラスの株主全員に対して、市場価格よりも有利な条件で新株を取得する権利(ライツ・イシューなど)を付与し、従業員がそのクラスの株主であったために当該権利を得た場合、その権利の付与や行使はIFRS第2号の対象外となります。

企業結合等における特定の財の取得

企業が財(棚卸資産、有形固定資産、無形資産など)を取得する取引であっても、IFRS第3号「企業結合」で定義される企業結合の対価として発行される資本性金融商品には、本基準書は適用されません(第5項)。しかし、ここで重要な区別があります。

  • 適用対象外:企業結合において、被取得企業の支配を獲得するための対価として発行される資本性金融商品。
  • 適用対象:被取得企業の従業員に対し、従業員としての継続的な勤務を条件として付与される資本性金融商品。これは企業結合の対価ではなく、従業員サービスへの対価と見なされるため、IFRS第2号に従って会計処理されます。

また、企業結合等に伴い既存の株式に基づく報酬契約が取消し、入替え、または条件変更される場合には、本基準書の定め(第26項から第29項)に従った会計処理が必要です。

金融商品会計基準の範囲に含まれる契約

IAS第32号「金融商品:表示」やIFRS第9号「金融商品」といった、他の金融商品関連基準の適用範囲に含まれる契約に従って財またはサービスを取得する取引には、IFRS第2号は適用されません(第6項)。これは、会計基準間の重複適用を避けるための規定です。ただし、企業が自社の購入、売却、使用の必要性に応じて非金融商品(商品など)を売買する目的で締結した契約は、この例外には含まれません。

まとめ

IFRS第2号「株式に基づく報酬」は、原則としてすべての株式に基づく報酬取引に適用される包括的な基準です。持分決済型、現金決済型、選択権付取引の3類型が主な対象となり、グループ企業間の取引も範囲に含まれます。一方で、株主としての取引、企業結合の対価、他の金融商品基準の対象となる契約など、明確な例外規定も存在します。ストック・オプションやその他の株式報酬制度を導入・運用する際には、個々の取引が本基準書の適用対象となるか否かを正確に判断し、適切な会計処理を行うことが極めて重要です。

IFRS第2号「株式に基づく報酬」の適用範囲に関するよくある質問

Q. IFRS第2号「株式に基づく報酬」とは、どのような会計基準ですか?

A. 企業のストック・オプションなど、株式を使った報酬取引の会計処理を定めた国際的な会計基準です。従業員への報酬費用などをきちんと財務諸表(純損益及び財政状態)に反映させることを目的としています。

Q. IFRS第2号が適用される「株式に基づく報酬取引」には、どんな種類がありますか?

A. 主に3つの種類があります。①株式やストック・オプションで支払う「持分決済型」、②株価に連動した現金で支払う「現金決済型」、③どちらで支払うか選択できる「選択権付取引」です。

Q. 従業員以外への支払いもIFRS第2号の対象になりますか?

A. はい、対象になります。従業員だけでなく、商品やサービスの提供者に対して株式やストック・オプションなどで支払いを行う場合も、IFRS第2号の適用対象となります。

Q. グループ会社間でストック・オプションを発行した場合、どの会社がIFRS第2号を適用しますか?

A. サービスを受け取った子会社と、報酬を決済する義務を負う親会社の両方が、それぞれの立場でIFRS第2号を適用する必要があります。

Q. IFRS第2号が適用されない例外的なケースはありますか?

A. はい、あります。例えば、株主としての立場で平等に新株を買う権利を得る場合や、企業結合(M&A)の対価として株式を発行する場合、特定の金融商品に関する取引などは適用対象外です。

Q. 企業結合(M&A)で従業員のストック・オプションを引き継いだ場合、IFRS第2号は適用されますか?

A. 企業結合の対価そのものは対象外ですが、買収した企業の従業員に「継続して勤務してもらうこと」を目的として付与したストック・オプションは、IFRS第2号の適用範囲に含まれます。

事務所概要
社名
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住所
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対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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