公認会計士事務所プライムパートナーズ
お問い合わせ

減損処理後の減価償却と戻入れ禁止ルールを徹底解説

2026-02-11
目次

減損会計における減損処理後の会計処理は、実務上多くの企業が直面する重要なテーマです。本記事では、提供された「固定資産の減損に係る会計基準」等に基づき、減損処理後の減価償却のルールや、業績回復時における減損損失の戻入れ禁止の背景について、具体的な事例や表を交えて詳細に解説いたします。

減損処理後の減価償却の基本原則

減損処理を行った固定資産のその後の取扱いについて、基本的な減価償却の考え方を解説いたします。

減価償却の継続と帳簿価額の算定

減損処理を行った固定資産についても、引き続き適正に原価配分を行うため、毎期計画的かつ規則的に減価償却を実施します。減損損失を控除した後の帳簿価額(例:取得原価1,000万円、減損損失600万円の場合、差引400万円)をベースとし、残存耐用年数(例:5年)にわたって償却を行います(減損会計基準 三 1.、減損会計意見書 四 3.(1))。

基本要素 内容
償却ベース 減損損失控除後の帳簿価額
償却期間 見積もられた残存耐用年数

期中減損時の減価償却対応

減損処理は期末に限らず、投資額の回収が見込めなくなった期中においても行われる場合があります。いずれの場合も、企業が採用する減価償却方法に従い、「減損損失控除後の帳簿価額」から「残存価額」を差し引いた金額を規則的に配分します。この未償却残高が各期の貸借対照表価額となります(適用指針 第55項、第134項、第135項)。

タイミング 処理のポイント
期末減損 期末の帳簿価額から減損損失を控除し、翌期から新たなベースで償却
期中減損 期中減損時点の帳簿価額から減損損失を控除し、その時点から新たなベースで償却

残存価額の取扱いと定率法の特例

減価償却計算において重要となる残存価額の見積りルールと、定率法を採用している場合の特例処理について解説いたします。

残存価額の見積りと現在価値化の禁止

減損処理後の減価償却計算で用いる残存価額は、耐用年数到来時(使用終了時)に予想される正味売却価額となります。ここで重要なのは、将来の処分時の価値であっても、減価償却費の計算上は「現在時点まで割り引かない(現在価値化しない)」という点です(適用指針 第135項)。

項目 規定内容
残存価額の定義 耐用年数到来時に予想される正味売却価額
割引計算の要否 減価償却費の計算上は現在価値化しない

定率法採用時の残存価額ゼロの特例処理

耐用年数到来時の正味売却価額がなく「残存価額がゼロ」と見積もられた場合、定率法では計算構造上、償却率が算定できません。そのため、「残存価額を10パーセントとして定率法の償却率を計算する方法」は採用不可とされています。代替処理として、残存価額10パーセントで計算した減価償却費に「簡便的に9分の10を乗じた額」を各期の減価償却費として計上することが認められています(適用指針 第135項)。

定率法の処理 具体的な計算方法
原則的な禁止事項 残存価額を10パーセントとして償却率を計算することは不可
容認される代替処理 残存価額10パーセントで計算した減価償却費 × 9/10 を計上

資産の保有目的に応じた減価償却の特例

減損処理後の資産の保有目的(処分、販売、遊休)に応じた、減価償却の特例的な取扱いについて解説いたします。

処分予定資産および販売目的への振替

処分が「すぐに予定されている資産」は、減損処理後の帳簿価額と残存価額が一致するため以後の減価償却費は発生しません。しかし、減損処理から「1年後など一定期間経過後」に処分予定の資産は、処分時まで残存価額に至るよう減価償却を行います(適用指針 第55項、第137項)。また、自社使用から「販売目的」へ変更した場合は、固定資産から流動資産(販売用不動産など)へ振り替え、以後の固定資産としての減価償却は行いません(適用指針 第55項、第136項)。

保有目的の変更 減価償却の要否
一定期間経過後の処分予定 処分されるまでの期間、残存価額に至るまで減価償却を実施
販売目的への振替 流動資産へ振替後、固定資産としての減価償却は行わない

遊休資産の減価償却費の表示区分

稼働を停止した遊休資産であっても、残存価額に達するまでは減価償却を継続します。ただし、遊休資産に係る減価償却費は営業活動に貢献していないため、損益計算書上は原則として「営業外費用」に計上する必要があります(適用指針 第56項、第138項)。

遊休資産の取扱い 処理方法
減価償却の継続 稼働停止後も残存価額に達するまで償却を継続
損益計算書上の表示 原則として「営業外費用」として計上

減損損失の戻入れ禁止とその背景

一度計上した減損損失の戻入れを行わないという、日本基準における厳格なルールとその背景にある理由を解説いたします。

日本基準における戻入れ禁止の原則

一度計上された減損損失は、その後の事業年度で市況が好転し、回収可能価額が帳簿価額を上回る水準まで回復した場合であっても、減損損失の戻入れは一切行わないと厳格に規定されています(減損会計基準 三 2.、適用指針 第55項)。

状況 会計処理
回収可能価額が回復した場合 減損損失の戻入れ(特別利益等の計上)は行わない
回復後の減価償却 切り下がった帳簿価額をベースに減価償却を継続

戻入れを禁止する2つの明確な理由

日本の減損会計基準が戻入れを禁止する理由は2つあります。第一に、減損損失の認識要件において「減損の存在が相当程度確実な場合」に限って測定するという高いハードルを設けており、一度確定した損失を頻繁に戻し入れる必要性が乏しいためです。第二に、戻入れを容認すると、毎期末に全減損処理済資産の回収可能価額を再計算する必要が生じ、企業の事務的負担が著しく増大するためです(減損会計意見書 四 3.(2))。

戻入れ禁止の理由 詳細な背景
保守的な認識要件 減損の存在が相当程度確実な場合にのみ損失を計上するため
実務負担の軽減 毎期末の回収可能価額の再計算による事務的負担の増大を防ぐため

実務ケーススタディ:業績回復時の会計処理

減損処理後に業績が急回復した場合の具体的な数値を用いたケーススタディを通じて、実務上の影響を解説いたします。

減損処理から業績回復までの具体例

取得原価1,000百万円の機械装置に対し、600百万円の減損損失を計上し、帳簿価額が400百万円となったケースを想定します。経済的残存使用年数を5年、残存価額をゼロと見積もった場合、定額法により毎年80百万円の減価償却費を計上します。数年後に稼働率が急上昇し、莫大なキャッシュ・フローを生み出して回収可能価額が回復したとしても、過去の減損損失600百万円を取り消す処理は行いません(減損会計基準 三 1.、適用指針 第55項、第135項)。

項目 金額・年数
減損処理後の帳簿価額 400百万円
毎年の減価償却費 80百万円(400百万円 ÷ 5年)

戻入れ禁止が損益計算書に与える影響

業績回復後であっても、減損損失の戻入れが禁止されているため、切り下がった帳簿価額をベースとした年80百万円の減価償却が淡々と継続されます。その結果、損益計算書上は売上の急増に対して減価償却費が低く抑えられるため、通常よりも高い営業利益が計上されるという財務的な影響が生じます(減損会計意見書 四 3.(2))。

損益計算書への影響 影響内容
減価償却費の負担 減損処理により切り下がった金額(年80百万円)で低く抑えられる
営業利益への波及 売上増加と低い償却費により、回復期には高い営業利益が計上される

参考文献

企業会計審議会 固定資産の減損に係る会計基準

企業会計基準第35号 「固定資産の減損に係る会計基準」の一部改正

企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

まとめ

減損処理後の会計処理において、減価償却の継続と減損損失の戻入れ禁止は、実務上極めて重要なルールです。減損損失控除後の帳簿価額をベースに、残存価額や保有目的に応じた適切な減価償却を実施する必要があります。また、業績回復時においても戻入れを行わないという日本特有の基準の背景を理解することで、より正確な財務報告が可能となります。

減損処理後の会計処理に関するよくある質問まとめ

Q.減損処理後の減価償却はどのように計算しますか?

A.減損損失控除後の帳簿価額から残存価額を差し引き、残存耐用年数にわたって規則的に配分します(適用指針 第134項)。

Q.減損処理後の残存価額は現在価値に割り引く必要がありますか?

A.将来の処分時の価値であっても、減価償却費の計算上は現在時点まで割り引かない(現在価値化しない)こととされています(適用指針 第135項)。

Q.定率法を採用しており残存価額がゼロの場合、どのような処理が認められますか?

A.残存価額を10パーセントとして計算した減価償却費に、簡便的に9分の10を乗じた額を計上する方法が認められます(適用指針 第135項)。

Q.遊休資産の減価償却費は損益計算書上どこに表示すべきですか?

A.稼働を停止した遊休資産の減価償却費は、営業活動に貢献していないため、原則として営業外費用として処理します(適用指針 第138項)。

Q.業績が回復して回収可能価額が上昇した場合、減損損失の戻入れはできますか?

A.日本の会計基準では、事業環境が好転して回収可能価額が回復した場合であっても、減損損失の戻入れは一切行いません(減損会計基準 三 2.)。

Q.減損損失の戻入れが禁止されている主な理由は何ですか?

A.減損の認識要件が高く頻繁な戻入れの必要性が乏しいことと、毎期末の再計算による企業の事務的負担の増大を避けるためです(減損会計意見書 四 3.(2))。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

士業の先生向け専門家AI
士業AI【会計】
▼▼▼ まずは専門家に相談 ▼▼▼