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減損会計の重要用語を徹底解説!回収可能価額や使用価値の定義

2026-02-01
目次

減損会計を適切に適用するためには、その基礎となる重要な概念を正確に理解することが不可欠です。本記事では、「固定資産の減損に係る会計基準」「同意見書」および「適用指針」に基づき、実務上重要となる用語の定義や背景について詳細に解説いたします。

減損会計における用語定義の全体像と重要性

減損会計基準においては、減損損失の測定や認識判定の前提となる重要な用語が厳密に定義されています。特に回収可能価額正味売却価額時価使用価値共用資産などは、実務において頻出する概念です。なお、適用指針において用いられる用語の定義は、原則として減損会計基準における用語の定義と同様とされています(適用指針 第4項)。これらの定義を正しく把握することが、適正な財務諸表作成の第一歩となります。

回収可能価額の定義と算定の背景

回収可能価額とは、資産又は資産グループの「正味売却価額」と「使用価値」のいずれか高い方の金額を指します(減損会計基準 注1 1.)。減損損失の測定においては、対象となる資産等の帳簿価額をこの回収可能価額まで減額し、その減少額を減損損失として計上します(減損会計基準 二 3.)。このアプローチが採用された背景には、企業が合理的な経済的行動をとるという前提があります。すなわち、企業は対象資産を「事業で継続使用する」か「売却等により処分する」かのうち、より有利な(金額が高い)選択肢を選ぶと考えられるため、両者を比較して高い方を投資の回収額の客観的な基準とすることが最も論理的であると結論付けられています(減損会計意見書 四 1(3))。

用語 定義の概要
回収可能価額 正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額(減損会計基準 注1 1.)

正味売却価額と時価の定義と実務上の取扱い

正味売却価額は、資産又は資産グループの「時価」から、処分費用見込額を控除して算定される金額です(減損会計基準 注1 2.)。企業が当該資産を現時点で市場にて売却・処分した場合に、手元に残る正味のキャッシュ・フローを表します。基礎となる時価は公正な評価額を意味し、通常は観察可能な市場価格を指しますが、市場価格が観察できない場合には合理的に算定された価額を用います(減損会計基準 注1 3.)。固定資産は活発な市場が存在しないことも多いため、不動産鑑定評価基準に基づく鑑定評価額や、類似資産の取引事例に基づく合理的な見積額を時価として代替することが許容されています(適用指針第6号第28項(2))。また、控除される「処分費用見込額」は、仲介手数料など資産の処分に直接かかる費用の合理的な見込額となります(適用指針第6号第28項(3))。

用語 定義と算定方法
正味売却価額 時価から処分費用見込額を控除した金額(減損会計基準 注1 2.)
時価 公正な評価額。市場価格または合理的に算定された価額(減損会計基準 注1 3.)

使用価値の定義と将来キャッシュ・フローの現在価値

使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの「現在価値」をいいます(減損会計基準 注1 4.)。資産を売却せずに事業の用に供し続けた場合に、将来にわたって企業にもたらされる経済的便益の総額を評価する概念です。将来獲得されるキャッシュ・フローは将来時点の価値であり、現在の価値と等価ではありません。そのため、使用価値の算定にあたっては、将来キャッシュ・フローの見積額に対して、貨幣の時間的価値や見積りから乖離するリスクを反映した「割引率」を用いて現在価値に割り引く計算プロセスが必須となります(減損会計意見書 四 2(5))。

用語 評価のポイント
使用価値 継続的使用と処分による将来キャッシュ・フローの現在価値(減損会計基準 注1 4.)
割引率 貨幣の時間的価値やリスクを反映し現在価値に割り引くための率(減損会計意見書 四 2(5))

資産の分類に関する用語定義

減損会計においては、対象となる資産の性質や役割に応じて分類を行い、それぞれに適切な会計処理を適用します。ここでは「共用資産」と「主要な資産」の定義について解説します。

共用資産の定義とのれんの除外

共用資産とは、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産をいいます(減損会計基準 注1 5.)。例えば、本社ビルや全社的な試験研究施設のように、単独では独立したキャッシュ・フローを生み出さないものの、複数の事業部門の収益獲得を間接的に支えている資産が該当します(減損会計意見書 四 2(7)①)。なお、「のれん」も複数の事業に寄与しますが、物的な実体を持たず独立したキャッシュ・フローを生まない等の特有の性質があるため、共用資産の定義からは明確に除外されており、別途の会計処理が定められています(減損会計意見書 四 2(8)②、減損会計基準 注1 5.)。

用語 具体例と取扱い
共用資産 本社ビル等。のれんは除外される(減損会計基準 注1 5.)

主要な資産の定義と見積期間の決定

主要な資産とは、資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって、最も重要な構成資産をいいます(減損会計基準 注3)。減損損失の認識判定において将来キャッシュ・フローを見積る期間は、原則として「資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数」と「20年」のいずれか短い方と規定されています(減損会計基準 二 2(2))。そのため、見積期間を決定するための基準として、グループ内で最も重要な資産を「主要な資産」として特定することが求められます(減損会計意見書 四 2(2)②)。

用語 役割と影響
主要な資産 将来キャッシュ・フローの見積期間(最大20年)の決定基準となる(減損会計基準 注3)

実務ケーススタディ:製造業における減損測定

定義された用語が実際の会計実務においてどのように適用されるか、製造業における専用工場の減損測定を例に解説します。ある製品を製造する専用工場(帳簿価額10億円)において減損の兆候が認められ、割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回ったため、減損損失の測定へと進むケースを想定します。

正味売却価額と使用価値の具体的な算定プロセス

まず、回収可能価額を算定するために2つのアプローチで評価を行います。1つ目は正味売却価額の算定です。工場用の土地建物に活発な市場価格が観察できないため、外部の不動産鑑定士による鑑定評価額「6億円」を合理的な「時価」とします(減損会計基準 注1 3.、適用指針 第28項(2)①)。この時価から仲介手数料や解体費用の見込額「0.5億円」を控除し、正味売却価額を5.5億円と算定します(減損会計基準 注1 2.)。2つ目は使用価値の算定です。工場の「主要な資産」である製造設備の残存耐用年数(15年)にわたり生み出される将来キャッシュ・フローを予測し(減損会計基準 注3)、割引率(5%)を適用して現在価値に割り引いた結果、使用価値を7億円と算定します(減損会計基準 注1 4.)。両者を比較し、高い方である7億円を回収可能価額として決定します(減損会計基準 注1 1.)。結果として、帳簿価額10億円との差額3億円を減損損失として計上します。

算定項目 具体的な金額と内容
正味売却価額 時価6億円 - 処分費用見込額0.5億円 = 5.5億円
使用価値 残存耐用年数15年の将来CFを5%で割り引いた現在価値 = 7億円

まとめ

減損会計の適切な実務適用には、「回収可能価額」「正味売却価額」「時価」「使用価値」「共用資産」「主要な資産」といった重要用語の正確な理解が不可欠です。これらの定義は、企業が合理的な経済行動をとるという前提や、将来の不確実性を現在価値に反映させるという会計上の要請に基づいています。各用語の定義と背景にある考え方を踏まえ、客観的かつ合理的な減損処理を実施することが求められます。

減損会計の用語定義に関するよくある質問まとめ

Q.回収可能価額とは何ですか?

A.資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいいます(減損会計基準 注1 1.)。

Q.正味売却価額はどのように算定しますか?

A.資産又は資産グループの時価から、処分費用見込額を控除して算定されます(減損会計基準 注1 2.)。

Q.減損会計における時価とは何ですか?

A.公正な評価額をいい、通常は観察可能な市場価格ですが、観察できない場合は不動産鑑定評価額など合理的に算定された価額を用います(減損会計基準 注1 3.)。

Q.使用価値とはどのような概念ですか?

A.資産の継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローを、適切な割引率を用いて現在価値に割り引いた金額をいいます(減損会計基準 注1 4.)。

Q.共用資産にのれんは含まれますか?

A.共用資産は複数の資産の将来キャッシュ・フロー生成に寄与する資産ですが、のれんは特有の性質があるため明確に除外されています(減損会計基準 注1 5.)。

Q.主要な資産を特定する理由は何ですか?

A.減損損失の認識判定において、将来キャッシュ・フローを見積る期間(原則として主要な資産の経済的残存使用年数と20年の短い方)を決定するための基準となるためです(減損会計基準 注3)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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