減損会計を適用するにあたり、対象となる資産をどのように束ねるかという「資産のグルーピング」は、減損損失の認識および測定において極めて重要なプロセスです。本記事では、提供された「固定資産の減損に係る会計基準」「同 設定に関する意見書」および「同 適用指針」に基づき、資産のグルーピングの基本原則から実務上の決定プロセス、例外的な取り扱いまでを詳細に解説いたします。
資産のグルーピングの基本原則と最小単位
グルーピングの必要性と最小単位の考え方
減損損失を認識するかどうかの判定や測定を行う際、原則として個々の資産単独ではなく、対象となる資産を束ねる資産のグルーピングを行う必要があります。この単位は、「他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位」で行わなければならないと規定されています〔減損会計基準 二 6.(1)〕。企業は多様な事業を展開しているため、経営の実態を適切に反映するよう配慮して決定することが求められます〔適用指針 第7項〕。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| グルーピングの単位 | 概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位〔減損会計基準 二 6.(1)〕 |
| 上限の目安 | 事業の種類別セグメント情報の基礎となる事業区分を超えない〔適用指針 第73項〕 |
継続性の原則と開示対象セグメントとの関係
資産のグルーピング単位は、一般的に開示対象セグメントの基礎となる事業区分よりも大きくなることはありません〔適用指針 第73項〕。さらに、一度決定した資産のグルーピングは、事業の再編などの事実関係に変更が生じない限り、原則として翌期以降の会計期間においても継続して同じ方法で行う必要があります。これを継続性の原則と呼びます〔適用指針 第9項、第74項〕。
実務上の決定プロセス
管理会計上の区分と継続的な収支の把握
グルーピングの単位を決定する際、企業はまず資産と対応して継続的に収支の把握がなされている単位を識別します〔適用指針 第7項(1)、第70項(1)〕。実務上は、事業別、製品別、地域別、店舗別などの管理会計上の区分や予算管理の単位が基礎となります。収支の把握は現金基準に限らず、発生基準に基づく損益の把握でも問題ありません。また、外部との直接的なキャッシュ・フローが生じていなくても、合理的な内部振替額や共通費の配分額を用いて収支を把握している部門は、グルーピングの基礎となり得ます。
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| 収支の基準 | 現金基準(入出金)だけでなく発生基準(損益)でも可〔適用指針 第70項(1)〕 |
| 内部取引の扱い | 合理的な内部振替額や共通費の配分額を用いた収支把握も対象〔適用指針 第7項(1)①〕 |
投資の意思決定を考慮したグルーピング
上記の管理会計上の区分に加えて、資産の処分や事業の廃止といった投資の意思決定を行う際の単位等も総合的に考慮し、最終的なグルーピングの方法を定めます〔減損会計意見書 四 2.(6)①、適用指針 第7項、第71項〕。これにより、企業の経済的実態に即した適切な減損判定が可能となります。
特殊な状況における例外的な取扱い
キャッシュ・フローの相互補完性に基づく統合
継続的な収支が把握されている単位であっても、製品やサービスの性質、市場の類似性などにより、他の単位から生ずるキャッシュ・イン・フローと相互補完的である場合があります。ある単位を切り離した際に他の単位のキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼす場合は、実質的に独立しているとは言えません。そのため、当該他の単位と合わせて一つのグルーピングとして統合する必要があります〔適用指針 第7項(2)、第70項(2)〕。
一つの資産(物理的単位)と遊休資産の切り離し
賃貸不動産のように、同じ仕様の建物が複数の区画に分割され継続的に収支が把握されている場合でも、物理的な一つの資産を細分化することは通常行わず、一つの資産全体をグルーピング単位とします〔適用指針 第7項(1)③、第70項(1)〕。一方で、取締役会等で事業の廃止や資産の処分が決定され、代替的な投資も予定されていない資産や、将来の使用が見込まれない遊休資産は、元のグループから切り離して独立した単一の資産として個別に取り扱います〔適用指針 第8項、第72項〕。
| 状況 | 対応方法 |
|---|---|
| 物理的に一つの資産(雑居ビル等) | 細分化せず「一つの資産全体」を単位とする〔適用指針 第7項(1)③〕 |
| 遊休資産・処分予定資産 | グループから切り離し「単一の資産」として個別評価〔適用指針 第8項〕 |
連結財務諸表におけるグルーピングの見直し
連結の見地からの統合と個別財務諸表との差異
個別財務諸表においては、他の企業の全部または一部を統合してグルーピングすることは認められません。しかし、連結財務諸表を作成するにあたっては、連結の見地から資産のグルーピング単位が見直される場合があります〔減損会計意見書 四 2.(6)①、適用指針 第10項、第75項〕。例えば、親会社の製造工場と子会社の販売部門が一体となって製品群のキャッシュ・フローを生み出している場合、別々の会社であっても連結上は「概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位」として一つのグループに統合して減損判定等を行います。
背景と結論の根拠(BC)
独立した最小単位と管理会計を基礎とする理由
事業用の固定資産は、複数の機械や建物が一体となって製品等を製造・販売し、キャッシュ・フローを生み出しています。個別の機械設備ごとに減損損失を認識しようとすると、キャッシュ・フローの恣意的な配分が生じ、合理的な判定が困難になります。そのため、合理的な範囲で資産を束ねて評価することが結論付けられました〔減損会計意見書 四 2.(6)①、適用指針 第70項〕。また、企業に対して外部基準で一律の単位を強制することは実態から乖離する恐れがあるため、日常的に業績を評価し投資の意思決定を行っている管理会計上の区分を基礎とすることが最も適切であるとされています。
実務ケーススタディ
製造業における内部振替と相互補完性の判定
自動車部品メーカーが、部品を製造する第1工場と、それを独占的に仕入れて完成品として外部販売する第2工場を有しているとします。管理会計上は工場ごとに収支が把握されていますが、第1工場を閉鎖すれば第2工場の生産ラインも停止し、外部からのキャッシュ・イン・フローに多大な悪影響を及ぼします。両工場のキャッシュ・フローは極めて相互補完的であるため、減損会計の実務においては両工場を統合した「製造事業全体」をグルーピングの最小単位として決定します〔適用指針 第7項(2)、第70項(2)〕。
小売業における店舗単位のグルーピングと遊休資産
全国にスーパーマーケットを展開する企業が、各店舗を一つの利益センターとして毎月の収支を厳密に把握している場合、各店舗の商圏が独立していれば、グルーピングの最小単位は「各店舗」となります〔適用指針 第7項(1)②、第70項(1)〕。しかし、慢性的な赤字が続く特定の店舗を閉店し、建物を売却する意思決定が取締役会で行われた場合、その店舗建物は遊休資産となります。この決定時点で全社的な事業のキャッシュ・フローから切り離されるため、処分に係る正味売却価額等に基づく厳密な個別の減損処理の対象となります〔適用指針 第8項、第72項〕。
まとめ
資産のグルーピングは、減損会計において経営の実態を財務諸表に適切に反映するための根幹となるプロセスです。管理会計上の区分や投資の意思決定を基礎としつつ、キャッシュ・フローの相互補完性や遊休資産の切り離し、さらには連結の見地からの見直しなど、多角的な視点から慎重に単位を決定する必要があります。原則として一度決定したグルーピング方法は継続して適用されるため、初期の設計段階で経済的実態に即した合理的な判断を行うことが強く求められます。
参考文献
企業会計基準第35号 「固定資産の減損に係る会計基準」の一部改正
企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
資産のグルーピングに関するよくある質問まとめ
Q.資産のグルーピングの最小単位はどのように決定しますか?
A.他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で決定します〔減損会計基準 二 6.(1)〕。実務上は継続的に収支の把握がなされている管理会計上の区分を基礎とします〔適用指針 第7項(1)〕。
Q.グルーピングの単位は毎年変更してもよいですか?
A.事業の再編などの事実関係の変更が生じない限り、原則として翌期以降の会計期間においても継続して同じ方法で行わなければなりません(継続性の原則)〔適用指針 第9項、第74項〕。
Q.外部との直接的な入出金がない部門でもグルーピングの基礎になりますか?
A.はい、合理的な内部振替額や共通費の配分額を用いて収支を把握している部門や単位であっても、グルーピングの単位を決定する基礎となり得ます〔適用指針 第7項(1)①、第70項(1)〕。
Q.複数の事業単位でキャッシュ・フローが相互補完的な場合はどうなりますか?
A.ある単位を切り離したときに他の単位のキャッシュ・イン・フローに大きな影響を及ぼす場合、実質的に独立しているとは言えないため、合わせて一つのグルーピングを行わなければなりません〔適用指針 第7項(2)、第70項(2)〕。
Q.事業廃止が決定した遊休資産のグルーピングはどうなりますか?
A.将来の使用が見込まれていない遊休資産は、元のグループから切り離し、独立したキャッシュ・フローを生み出す単一の資産として個別に取り扱います〔適用指針 第8項、第72項〕。
Q.連結財務諸表を作成する際、個別財務諸表と同じグルーピングでよいですか?
A.連結財務諸表においては、連結の見地からグルーピングの単位が見直される場合があります。親会社と子会社の資産が一体となってキャッシュ・フローを生み出している場合、一つのグループに統合して判定を行います〔適用指針 第10項、第75項〕。