労働者派遣事業を運営されている皆様、またはこれから始めようと考えている皆様、こんにちは!
労働者派遣事業には、許可の取得や更新の際に「監査」が必要になるケースがあることをご存知でしょうか?
「監査って何をするの?」「費用はどれくらいかかるの?」など、疑問に思うことも多いですよね。
この記事では、労働者派遣事業の監査について、わかりやすく解説していきます。
監査が必要なケースや注意点、費用の目安などを詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
労働者派遣事業の監査とは?
労働者派遣事業の監査とは、簡単に言うと、派遣元事業主(派遣会社)が労働者派遣法などの法令を遵守し、適切な事業運営を行っているかをチェックすることです。
具体的には、公認会計士や監査法人が、派遣会社の財務状況や労務管理などを確認します。
なぜ監査が必要なの?
労働者派遣事業は、労働者の雇用や労働条件に関わる重要な事業です。
そのため、労働者の保護や派遣先企業の安心を確保するため、一定の基準を満たしているかを確認する必要があるのです。
監査は、その確認手段の一つとして、法律で定められています。
どんな時に監査が必要になるの?
労働者派遣事業の許可を新規で取得する場合や、許可の有効期間を更新する際に、監査が必要になることがあります。
具体的には、直近の決算書で、以下の「資産要件」をすべて満たしていない場合に、監査が必要となります。
- 基準資産額: 2,000万円 × 事業所数 以上
- 負債比率: 基準資産額 ≧ (負債総額 × 1/7)
- 現金預金額: 1,500万円 × 事業所数 以上
これらの要件を直近の年度決算書で満たしていれば、税務署に提出した決算書を申請書類として労働局に提出すればよく、公認会計士による監査は不要です。
しかし、年度決算書では要件を満たしていなくても、その後の中間決算や月次決算で要件を満たし、公認会計士による監査証明を添付して労働局の審査を受けることで、派遣事業の許可を得ることができます。
監査の種類は?
労働者派遣事業の監査には、主に以下の2つの種類があります。
- 監査証明:
新規許可申請の際に必要となることがあります。
公認会計士が、派遣会社の財務諸表全体が適正に表示されているかについて意見を表明します。 - 合意された手続(AUP):
許可更新申請の際に必要となることがあります。
派遣会社と公認会計士が事前に合意した特定の手続き(例えば、資産要件の確認など)のみを実施し、その結果を報告します。
監査証明よりも手続きが限定的で、費用も比較的安価です。
労働者派遣事業の監査の流れ
監査は、以下のような流れで進められます。
監査の依頼
まずは、公認会計士や監査法人に監査を依頼します。
労働者派遣事業の監査に詳しい専門家を選ぶことが重要です。
依頼の際には、会社の状況や決算書などを詳しく説明しましょう。
事前準備
監査に必要な書類を準備します。
一般的には、以下のような書類が必要になります。
- 対象となる中間決算書または月次決算書
- 直近事業年度の決算書及び法人税申告書
- 対象となる中間決算書または月次決算書の預金残高に関する通帳または残高証明書
- 対象となる中間決算書または月次決算書の期間における総勘定元帳
- 履歴事項全部証明書(原本)
- その他、公認会計士が必要と判断した資料(請求書、領収書、契約書など)
監査の実施
公認会計士が、提出された書類や会社の状況に基づいて監査を実施します。
必要に応じて、追加の資料提出や質問への回答を求められることがあります。
監査報告書の発行
監査が完了すると、公認会計士から監査報告書(または合意された手続実施結果報告書)が発行されます。
この報告書を、労働局への申請書類に添付します。
労働者派遣事業の監査の注意点
労働者派遣事業の監査を依頼する際には、以下の点に注意しましょう。
監査は誰でもできるわけではない
労働者派遣事業の監査は、公認会計士または監査法人しか行うことができません。
税理士や、資格を持たないコンサルタントなどには依頼できないので注意が必要です。
また、会社の顧問税理士である公認会計士や、会社役員に就任している公認会計士など、会社と利害関係がある公認会計士には、監査を依頼することはできません。
監査の実績や専門性を確認する
労働者派遣事業の監査は専門的な知識が必要となるため、実績や専門性のある公認会計士や監査法人を選ぶことが重要です。
依頼前に、労働者派遣事業の監査経験や実績を確認しましょう。
また、労働者派遣法や関連法規に精通しているかどうかも確認しましょう。
監査報告書が必ずもらえるわけではない
監査の結果、財務諸表に不備が見つかった場合や、資産要件を満たしていないことが判明した場合は、監査報告書が発行されないことがあります。
監査を依頼する前に、会社の状況をしっかりと把握し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けましょう。
労働者派遣事業の監査費用
監査費用は、監査の種類(監査証明か合意された手続か)、会社の規模、事業所の数、監査にかかる時間などによって異なります。
監査費用の目安
一般的な目安としては、以下のようになります。
- 監査証明: 15万円~50万円程度
- 合意された手続: 10万円~30万円程度
ただし、これはあくまで目安であり、具体的な費用は、依頼する公認会計士や監査法人に見積もりを依頼して確認しましょう。
費用を抑えるポイント
監査費用を抑えるためには、以下のポイントに注意しましょう。
- 早めに準備を始める:
監査に必要な書類を事前に整理しておくことで、監査期間を短縮し、費用を抑えることができます。 - 複数の事務所に見積もりを依頼する:
複数の公認会計士や監査法人に見積もりを依頼し、比較検討することで、適正な価格で依頼することができます。 - 合意された手続を検討する:
許可更新の場合は、監査証明よりも費用が安い合意された手続を検討しましょう。
監査を受けるメリット
監査を受けることには、以下のようなメリットがあります。
許可取得・更新の円滑化
監査報告書(または合意された手続実施結果報告書)を提出することで、労働局への許可申請や更新手続きがスムーズに進みます。
経営の健全化
監査を受けることで、自社の財務状況や労務管理の課題が明らかになり、経営改善につなげることができます。
第三者の専門家からの客観的な意見は非常に貴重です。
社会的信用の向上
監査を受けていることは、派遣労働者や派遣先企業からの信頼を高めることにつながります。
コンプライアンスを重視する企業として、社会的な評価も向上します。
まとめ
労働者派遣事業の監査は、許可の取得や更新に必要となるだけでなく、経営の健全化や社会的信用の向上にもつながる重要な手続きです。
監査が必要なケースや注意点、費用などをしっかりと理解し、適切に対応しましょう。
もし、監査について不安なことや疑問点があれば、労働者派遣事業の監査に詳しい公認会計士や監査法人に相談することをおすすめします。
専門家のアドバイスを受けることで、安心して事業運営を進めることができるでしょう。
労働者派遣事業の監査 よくある質問まとめ
Q. 労働者派遣事業の監査って、どんな種類があるの?
A. はい、大きく分けて、厚生労働省(労働局)による監査と、派遣先企業による監査があります。
Q. 厚生労働省(労働局)の監査は、どんな時に行われるの?
A. はい、定期的な監査のほか、労働者からの申告があった場合や、事業報告書の内容に疑義がある場合などに行われます。
Q. 派遣先企業の監査は、何をチェックされるの?
A. はい、主に、派遣契約の内容が守られているか、派遣労働者の労働時間や待遇が適切か、などを確認されます。
Q. 監査で指摘を受けやすいポイントってある?
A. はい、労働時間管理、社会保険・労働保険の加入状況、派遣契約書・就業条件明示書の記載内容などが、よく指摘されるポイントです。
Q. 監査の前に、何か準備しておくことはある?
A. はい、各種書類(派遣契約書、就業条件明示書、タイムシートなど)を整理しておくこと、労働時間管理や社会保険の加入状況などを再確認しておくことが重要です。
Q. もし監査で指摘を受けたら、どうすればいいの?
A. はい、まずは指摘内容を正確に把握し、速やかに改善策を講じる必要があります。必要に応じて、専門家(社会保険労務士など)に相談することも検討しましょう。