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リース資産と再評価土地の減損処理:実務ケース解説

2026-02-15
目次

本記事では、固定資産の減損に係る会計基準および適用指針に基づき、実務上特有の論点となる「リースにより使用している資産」および「再評価を行った土地」の減損処理について詳細に解説いたします。特に、賃貸借処理を継続している旧基準のリース資産におけるみなし計算や負債計上、土地再評価差額金の取崩しルールについて、具体的なケーススタディを交えてわかりやすく説明します。

リース資産を含む資産グループの減損処理

資産グループにリース資産が含まれる場合、原則としてリース資産(使用権資産)も有形固定資産と同様に減損処理の対象となります。しかし、旧リース会計基準の適用初年度開始前等から継続して通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理(賃貸借処理)を行っている所有権移転外ファイナンス・リース取引については、特有の減損処理が求められます(減損会計基準 注解(注12)1.、適用指針 第60項)。

帳簿価額のみなし計算と将来キャッシュ・フロー

賃貸借処理を行っているリース資産は、貸借対照表上に資産として計上されていません。そのため、当該リース資産に係る未経過リース料の現在価値等を、当該リース資産の帳簿価額とみなして資産グループ全体の合計帳簿価額を算定します(減損会計基準 注解(注12)1.、適用指針 第60項)。また、減損損失を認識するかどうかの判定において割引前将来キャッシュ・フローを見積もる際、当該リースに係る将来の支払リース料は、すでに未経過リース料の現在価値として帳簿価額に算入されているため、二重計上を防ぐ目的でキャッシュ・アウト・フローには含めずに計算します(適用指針 第61項)。

項目 取扱い
リース資産の帳簿価額 未経過リース料の現在価値等を帳簿価額とみなして計算
将来キャッシュ・フロー 将来の支払リース料はキャッシュ・アウト・フローに含めない

正味売却価額を考慮した構成資産への配分

算定された減損損失の総額は、資産グループの各構成資産(みなし帳簿価額を持つリース資産を含む)に対して、それぞれの帳簿価額の割合に応じて比例配分されます。この際、土地など特定の資産について正味売却価額が把握されている場合には、当該資産の配分後の帳簿価額が正味売却価額を下回る結果とならないように配分額を制限しなければなりません。配分しきれなかった超過額については、リース資産を含む他の構成資産に対して再度比例配分を行うという厳密な調整が求められます(適用指針 第105項)。

リース資産に配分された減損損失の負債計上

賃貸借処理を継続しているリース資産には、帳簿上に減額すべき資産本体が存在しません。そのため、当該リース資産に配分された減損損失は、例外的に負債として貸借対照表に計上されます。計上された負債は、その後のリース契約の残存期間にわたり規則的に取り崩され、各事業年度に費用として計上される支払リース料と相殺する会計処理が行われます(減損会計基準 注解(注12)2.、適用指針 第60項)。この処理により、使用権資産を計上して減価償却費を減額させる通常の処理と同様の効果を持たせることができ、経済的実態を最も適切に表現できるとされています(適用指針 第143項、第144項)。

再評価を行った土地の減損処理と差額金

「土地の再評価に関する法律」に基づき、過去に事業用土地の再評価(帳簿価額の増額または減額)を行っている企業が当該土地について減損処理を行う場合、まず再評価後の帳簿価額を基礎として回収可能価額との差額を算定し、減損損失を測定します(適用指針 第64項)。

減損処理後の帳簿価額と取崩しパターン

減損処理が行われた場合、過去の再評価時に純資産の部に計上された土地再評価差額金を取り崩し、損益計算書(当期損益)を経由させずに、剰余金修正を通じて直接繰越利益剰余金に振り入れる会計処理を行います(適用指針 第64項、第146項)。この際、同時に計上されている再評価に係る繰延税金負債や繰延税金資産も併せて取り崩しや振替が行われます。土地再評価差額金を取り崩す金額の算定ルールは、減損処理後の帳簿価額と再評価直前の帳簿価額との関係によって以下の3つのパターンに分類されます(適用指針 第146項(1)、第146項(2))。

減損処理後の帳簿価額の状況 取崩す土地再評価差額金の金額(税効果控除後)
再評価直前の帳簿価額以上 減損処理した金額に対応する金額を按分計算して取崩す
再評価直前の帳簿価額に満たない、または過去に減額再評価 計上されている土地再評価差額金の全額を取崩す

再評価差額金の取崩しと剰余金修正の根拠

減損処理は予測できない価値の下落により帳簿価額を減額させる処理であるため、法的に計上されていた再評価差額金はその下落分につき取り崩されるべきと解されています(適用指針 第146項)。また、取り崩した差額金を特別利益などの当期損益とせず、純資産内の剰余金修正(繰越利益剰余金への振替)とした背景には、この差額金が法律に基づく1回限りの例外的な性質を持つことが挙げられます。実務上すでに自己株式の消却財源等に用いられているケースもあることから、土地の実際の売却時に行われる差額金の振替処理と同様の考え方を採ることが、会計慣行上最も適当であると判断されました(適用指針 第146項)。

実務ケーススタディ:減損処理の具体例

これらの規定が実際のビジネスや会計実務においてどのように適用されるか、2つの具体的なケーススタディを通じて解説します。

小売店舗におけるリース資産の減損配分

小売業を営む企業が、減損の兆候がある店舗の判定を行うケースです。当該店舗は自社所有の土地(帳簿価額300万円、正味売却価額300万円)と建物(500万円)に加え、賃貸借処理を継続している旧基準のリース什器備品で構成されています。企業は什器備品の未経過リース料の現在価値220万円をみなし帳簿価額として加算し、合計帳簿価額を1,020万円と算定しました(減損会計基準 注解(注12)1.、適用指針 第60項)。今後の支払リース料を含めずに見積もった割引前将来キャッシュ・フローが900万円であったため減損を認識し、回収可能価額640万円との差額である380万円を減損損失として測定しました。この380万円を構成資産に配分しますが、土地の帳簿価額300万円をこれ以上減らすと正味売却価額300万円を下回ってしまうため、土地への配分はゼロとします(適用指針 第105項)。その結果、380万円の減損損失は建物と什器備品(みなし220万円)のみで比例配分されます。什器備品に配分された減損損失116万円について、貸借対照表に負債(減損損失累計額等)として計上し、翌期以降の什器備品のリース料支払い時にこの負債を取り崩して費用を減額する会計処理を行います(減損会計基準 注解(注12)2.、適用指針 第60項)。

製造業における再評価土地の減損と差額金取崩し

製造業を営む企業が、過去に取得原価100億円の工場用地を法律に基づき再評価し、帳簿価額を180億円に増額していたケースです。この際、税効果(実効税率40%)を控除した後の再評価差額分48億円を純資産に土地再評価差額金として計上しています。当期末、地価の下落によりこの土地の回収可能価額が80億円となったため、企業は帳簿価額180億円との差額100億円を減損損失として特別損失に計上しました(適用指針 第64項)。減損処理後の帳簿価額80億円は、再評価直前の取得原価100億円を下回っています。このため、企業は純資産に計上されている土地再評価差額金の全額(48億円)を取り崩し、損益計算書を通さずに直接繰越利益剰余金に振り入れる仕訳を計上します。同時に、再評価に係る繰延税金負債等の税効果の取崩しも適切に実施し、純資産の修正を完了させます(適用指針 第64項、第146項(2))。

まとめ

本記事では、賃貸借処理を継続するリース資産と再評価土地の減損処理について解説しました。リース資産については、未経過リース料の現在価値を用いたみなし計算と、減損損失の負債計上という特有の処理が求められます。また、再評価土地については、減損後の帳簿価額に応じた土地再評価差額金の取崩しと、当期損益を経由しない繰越利益剰余金への振替が重要となります。実務においては、これらの特殊な規定を正確に理解し、適切な会計処理を行うことが不可欠です。

参考文献

企業会計審議会 固定資産の減損に係る会計基準

企業会計基準第35号 「固定資産の減損に係る会計基準」の一部改正

企業会計基準適用指針第6号 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

減損処理の実務特有ケースに関するよくある質問まとめ

Q.リース資産も減損処理の対象になりますか?

A.原則としてリース資産(使用権資産)も減損処理の対象となります。賃貸借処理を継続している場合は、未経過リース料の現在価値等を帳簿価額とみなして計算します(適用指針 第60項)。

Q.賃貸借処理のリース資産に配分された減損損失はどう処理しますか?

A.貸借対照表に資産が計上されていないため、例外的に負債として計上し、その後の支払リース料と相殺して取り崩します(減損会計基準 注解(注12)2.)。

Q.リース資産を含む将来キャッシュ・フローの算定での注意点は?

A.将来の支払リース料は、すでにみなし帳簿価額に算入されているため、二重計上を防ぐ目的でキャッシュ・アウト・フローには含めずに計算します(適用指針 第61項)。

Q.再評価を行った土地を減損した場合、土地再評価差額金はどうなりますか?

A.減損処理が行われた場合、純資産に計上された土地再評価差額金を取り崩し、当期損益を経由させずに直接繰越利益剰余金に振り入れます(適用指針 第146項)。

Q.土地再評価差額金の全額を取り崩すのはどのような場合ですか?

A.減損処理後の帳簿価額が再評価直前の帳簿価額に満たない場合や、過去に減額再評価した土地を減損処理する場合に、全額を取り崩します(適用指針 第146項(2))。

Q.減損損失の配分時に正味売却価額はどう影響しますか?

A.特定の資産の正味売却価額が把握されている場合、配分後の帳簿価額が正味売却価額を下回らないように配分額を制限し、超過額は他の資産に再配分します(適用指針 第105項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

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