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スタートアップ経理担当者必見!事業成長を支える必須スキルと有利な資格

2025-09-08
目次

スタートアップの成長フェーズにおいて、経理部門は単なる記帳や精算業務に留まらず、経営の根幹を支える重要な役割を担います。急成長する組織の中で、資金繰りの管理、財務戦略の立案、そして将来のIPO(株式公開)までを見据えた体制構築が求められます。本記事では、スタートアップの経理担当者として活躍するために必要な実務スキルと、キャリアアップに繋がる有利な資格を網羅的に解説いたします。

スタートアップ経理の役割と業務内容

スタートアップにおける経理は、大企業の経理部門とは異なり、少数精鋭で幅広い業務をカバーする必要があります。日々のルーティン業務から経営判断に直結する戦略的な業務まで、その役割は多岐にわたります。企業の成長ステージに応じて、求められる役割も変化していくのが特徴です。

日常的な経理業務

企業の財務活動の基礎となる、正確かつ迅速な処理が求められる業務です。これらのデータが、後の財務分析や意思決定の土台となります。

  • 請求書の発行・管理、売掛金の回収管理
  • 取引先への支払い業務、買掛金の管理
  • 従業員の経費精算処理
  • 会計ソフトへの仕訳入力、月次・四半期・年次決算業務
  • 現金・預金の出納管理

財務戦略と資金繰り管理

スタートアップの生命線であるキャッシュフローを管理し、事業の継続と成長を支える極めて重要な業務です。資金がショートしないよう、常に将来を見越した管理が求められます。

  • キャッシュフロー計算書の作成と分析
  • 資金繰り表の作成と将来予測
  • 金融機関との折衝、融資(デットファイナンス)の準備
  • 投資家向け資料作成のサポート、増資(エクイティファイナンス)関連業務

経営層へのレポーティング

作成した財務データを基に、経営陣が的確な意思決定を行えるよう、分かりやすく報告する役割を担います。単なる数字の報告ではなく、その背景にある要因分析や改善提案まで行うことが期待されます。

  • 月次決算報告書の作成と経営会議での報告
  • 予算と実績の差異を分析する予実管理
  • 事業部ごとのKPI(重要業績評価指標)と財務データの連携分析
  • 財務状況に基づいた経営課題の抽出と提言

スタートアップ経理に求められる実務スキル

目まぐるしく状況が変化するスタートアップ環境で活躍するためには、会計の知識だけでなく、柔軟な対応力と幅広いスキルセットが不可欠です。

簿記・会計の基礎知識

すべての経理業務の根幹をなすスキルです。企業会計原則に則った正確な会計処理が、企業の信頼性の基礎となります。特に「企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない」(第一 一般原則 一)という真実性の原則は、スタートアップであっても遵守すべき最も重要な原則です。

予実管理と財務分析能力

過去の数値をまとめるだけでなく、未来を予測し、計画と実績のギャップを分析する能力が重要です。なぜ予算を達成できなかったのか、あるいは上回ったのかを分析し、次のアクションプランに繋げることで、事業の成長を加速させることができます。

収益認識に関する会計基準の理解

特にSaaS(Software as a Service)ビジネスなど、月額課金モデルを採用するスタートアップが増えている現代において、収益認識に関する会計基準の深い理解は必須です。この基準では、「約束した財又はサービスを顧客に移転することによって履行義務を充足する時に又は充足するにつれて、収益を認識する」(企業会計基準第29号 第16項)と定められており、いつ、いくらを売上として計上すべきかを正しく判断するスキルが求められます。

ITツール・会計システムの活用能力

スタートアップでは、業務効率化のためにクラウド会計ソフトや経費精算システム、ERP(統合基幹業務システム)などを積極的に導入します。これらのITツールを最大限に活用し、手作業を減らして生産性を高めるスキルは、少数精鋭の組織において極めて重要です。

スタートアップ経理で有利になる資格

実務経験が最も重要ですが、資格は自身のスキルを客観的に証明し、信頼性を高める上で非常に有効です。特に専門性が高い業務やIPO準備フェーズでは、有資格者が高く評価されます。

資格名 概要とスタートアップにおける有用性
日商簿記検定2級以上 企業の財務諸表を理解し、作成できるレベルの知識を証明します。スタートアップの経理担当者としては、最低限2級の取得が望ましいとされています。
日商簿記検定1級 会計基準や会社法、財務諸表等規則などの法規にもとづく高度な会計知識を証明します。連結決算や複雑な会計処理が求められるフェーズで非常に役立ちます。
税理士 / 税理士試験科目合格 税務の専門家であり、法人税申告書の作成や税務調査対応、節税対策などで専門性を発揮します。特に「簿記論」「財務諸表論」の科目合格は、会計知識の高さを証明します。
公認会計士(CPA) 会計・監査の最高峰の国家資格です。特にIPO(株式公開)を目指す企業において、監査法人との折衝や内部統制の構築で中心的な役割を担うことができます。
FASS検定 経理・財務分野における実務知識とスキルのレベルを客観的に測定する検定です。自身のスキルレベルを把握し、キャリアプランを考える上で参考になります。

IPO(株式公開)準備で必要となる専門スキル

スタートアップがIPOを目指す段階になると、経理担当者には通常業務に加えて、より高度で専門的なスキルが求められます。

内部統制(J-SOX)の構築・運用

企業の不正を防ぎ、財務報告の信頼性を確保するための社内体制を構築・運用するスキルです。業務プロセスの文書化(フローチャート、業務記述書、リスクコントロールマトリクス(RCM)の作成)や、内部監査・監査法人への対応などが主な業務となります。

開示書類の作成能力

金融商品取引法に基づき、投資家保護のために提出が義務付けられる書類を作成する能力です。具体的には、上場申請書類である「Ⅰの部」「Ⅱの部」や、上場後の「有価証券報告書」「決算短信」などが含まれ、会計基準に準拠した正確な情報開示が求められます。

スタートアップ経理のキャリアパス

スタートアップでの経理経験は、多様なキャリアパスに繋がる貴重な財産となります。幅広い業務を経験することで、自身の市場価値を大きく高めることが可能です。

経理マネージャーからCFOへ

実務経験を積み、チームをまとめる経理マネージャー、さらには企業の財務戦略全体を統括するCFO(最高財務責任者)へとキャリアアップする道筋が最も一般的です。CFOは経営陣の一員として、資金調達やM&A、IR戦略など、企業の成長に直接コミットします。

IPO経験を活かした転職

IPOを達成した経験は、非常に価値の高いスキルセットとして評価されます。その専門知識を活かし、これからIPOを目指す別のスタートアップへ、より高いポジションで転職するというキャリアも考えられます。

独立・コンサルタント

スタートアップの立ち上げから成長、IPOまでの一連のプロセスを経験することで、財務・会計に関する高い専門性が身につきます。その知見を活かし、複数のスタートアップを支援するフリーランスの経理コンサルタントやCFOとして独立するキャリアも選択肢の一つです。

まとめ

スタートアップの経理は、単なる事務処理担当者ではなく、企業の成長を財務面から支える戦略的パートナーです。日々の正確な業務遂行能力に加え、財務分析、資金繰り管理、そして将来を見据えた体制構築など、多岐にわたるスキルが求められます。厳しい環境ではありますが、経営陣と近い距離で企業の成長にダイレクトに貢献できることは、何物にも代えがたいやりがいとなるでしょう。本記事で紹介したスキルと資格を参考に、ご自身のキャリアプランを描いてみてはいかがでしょうか。

参考文献

本記事を作成するにあたり、以下の公的機関が発行する会計基準を参照いたしました。

スタートアップ経理のスキルと資格に関するよくある質問まとめ

Q. スタートアップの経理に未経験でもなれますか?

A. 可能性はありますが、会計の基礎知識は必須です。日商簿記2級程度の知識があると有利でしょう。経理だけでなく、幅広い業務に対応できる柔軟性や学習意欲が重視される傾向にあります。

Q. スタートアップ経理に必須の資格はありますか?

A. 必須の資格はありませんが、日商簿記2級以上が実務レベルの知識の証明として推奨されます。会社の成長フェーズによっては、税理士や公認会計士などの専門資格が有利になることもあります。

Q. 簿記以外に持っていると有利なスキルは何ですか?

A. Excelスキル(関数、ピボットテーブルなど)は必須です。加えて、クラウド会計ソフトの利用経験、資金調達や予実管理の知識、労務や法務に関する基本的な理解があると高く評価されます。

Q. スタートアップの経理は、一般的な会社の経理と何が違いますか?

A. 業務範囲の広さが大きな違いです。月次・年次決算といった定型業務だけでなく、資金繰り管理、請求・支払い業務、労務手続きなど、管理部門全体の業務を少人数で担当することが多いです。

Q. スタートアップ経理のキャリアパスはどのようなものがありますか?

A. 経理担当から経験を積み、CFO(最高財務責任者)を目指すキャリアパスが一般的です。また、IPO(株式公開)の経験を活かして他のスタートアップへ転職したり、財務や経営企画の専門家として活躍する道もあります。

Q. スタートアップ経理になるために、まず何を勉強すれば良いですか?

A. まずは日商簿記3級・2級の取得を目指し、会計の基礎を固めることをおすすめします。並行してExcelスキルを磨いたり、主要なクラウド会計ソフトの概要を調べておくと実務に役立ちます。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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