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財務会計

その他有価証券評価差額金の仕訳【仕訳例】期末評価・翌期洗替・税効果の3パターン

目次
  1. その他有価証券評価差額金の仕訳3パターン一覧
  2. 評価差額金が生じる「その他有価証券」の範囲
  3. 数値例の前提
  4. パターン1:期末評価の仕訳
  5. パターン2:翌期首の洗替仕訳
  6. 2期目に売却と再評価が重なった場合
  7. パターン3:税効果を含めた仕訳(決算の完成形)
  8. 残高の検算と翌期首の洗替
  9. 税効果の相手勘定の早見表
  10. 部分純資産直入法を採用している場合の仕訳
  11. その他有価証券評価差額金の表示(個別・株主資本等変動計算書・連結)
  12. 評価差損の税効果が付かない・限定される場合
  13. 評価差額金が生じないケースと減損処理
  14. 評価差額をPLに入れない理由と適用時期
  15. 決算で確かめたい5つのポイント
  16. まとめ
  17. 参考文献
  18. よくある質問
  19. その他有価証券評価差額金は損益計算書に影響しますか。
  20. 期末評価の仕訳はどう書きますか。
  21. 翌期首の洗替仕訳を入れないとどうなりますか。
  22. 税効果の相手勘定は法人税等調整額ですか。
  23. 税効果を適用しない処理は認められますか。
  24. その他有価証券評価差額金はどこに表示しますか。
  25. 時価が著しく下落した場合も評価差額金に計上しますか。
  26. その他有価証券評価差額金がマイナスになることはありますか。
  27. その他有価証券を売却したとき、評価差額金はどうなりますか。

その他有価証券評価差額金は、その他有価証券を期末に時価評価したときの評価差額を純資産の部(評価・換算差額等)に計上する勘定で、損益計算書(PL)を通りません。評価差額は洗い替え方式で処理し、原則として評価差益と評価差損の合計額を純資産の部に計上します(金融商品に関する会計基準 第18項(1))。そのため当期純利益は動かず、貸借対照表の純資産だけが増減します。

実務でこの勘定を扱う場面は、①期末評価、②翌期首の洗替、③税効果の3つに集約されます。本記事では、同じ数値例を使って3パターンの仕訳を順に組み立て、2期目に売却と再評価が重なったときの動きまで追いかけます。全部純資産直入法と部分純資産直入法の比較や減損の判定を計算例で詳しく見たい方は、関連コラムもあわせてご覧ください。

その他有価証券評価差額金の仕訳3パターン一覧

まず全体像です。3つのパターンはいずれも純資産の部の中で完結し、PLには出てきません。例外は、部分純資産直入法で評価差損を損失処理する場合と、時価が著しく下落して減損処理する場合の2つです。

パターン1
期末評価
銘柄ごとに期末時価と取得原価を比べ、評価差益は投資有価証券を増やしてその他有価証券評価差額金を貸方に、評価差損は借方に計上します(金融商品に関する会計基準 第18項(1)、第79項)
パターン2
翌期首の洗替
翌期首に期末の仕訳を逆に起こし、取得原価に基づく帳簿価額へ戻します。翌期末は改めて取得原価と時価を比べます(金融商品に関する会計基準 第18項、第79項)
パターン3
税効果
評価差益には繰延税金負債、評価差損には繰延税金資産を計上して評価差額から控除し、残りの純額をその他有価証券評価差額金とします。適用は強制です(金融商品に関する会計基準 第18項、金融商品会計に関する実務指針 第73項)
例外1
部分純資産直入法
評価差損の銘柄だけ投資有価証券評価損として当期の損失に計上し、税効果の相手勘定も法人税等調整額になります(金融商品に関する会計基準 第18項(2)、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第9項)
例外2
減損処理
時価が著しく下落し回復の見込みがあると認められない場合は、評価差額を当期の損失とし、その時価を翌期首の取得原価とします。洗替は行いません(金融商品に関する会計基準 第20項、第22項)

以下、パターン1から順に仕訳を見ていきます。決算で実際に使うのは税効果まで入れたパターン3の形ですが、勘定の動きを追いやすくするため、パターン1・2は税効果を入れる前の形で示します。

関連コラムその他有価証券の評価差額【計算例】全部・部分純資産直入法と洗替えの仕訳▸

評価差額金が生じる「その他有価証券」の範囲

仕訳に入る前に、どの有価証券からこの勘定が生じるのかを確認します。その他有価証券とは、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいいます(金融商品に関する会計基準 第18項)。長期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有するものや、業務提携等の目的で保有するものが含まれ、長期的には売却が想定される有価証券と位置付けられています(金融商品会計に関する実務指針 第72項)。政策保有株式や取引先との持合株式が典型例です。

売買目的有価証券 時価で評価し、評価差額は当期の損益(金融商品に関する会計基準 第15項)
満期保有目的の債券 取得原価(差額が金利の調整と認められるときは償却原価法)で評価し、評価差額は生じない(金融商品に関する会計基準 第16項)
子会社株式及び
関連会社株式
取得原価で評価し、評価差額は生じない(金融商品に関する会計基準 第17項)
その他有価証券 時価で評価し、評価差額は洗い替え方式で純資産の部へ。ここで生じるのがその他有価証券評価差額金(金融商品に関する会計基準 第18項)

貸借対照表では、その他有価証券は原則として投資その他の資産の区分に属し(金融商品に関する会計基準 第23項)、「投資有価証券」の科目で表示されるのが一般的です。「その他有価証券」は保有目的による区分の名称、「投資有価証券」は表示科目、「その他有価証券評価差額金」は純資産の部の科目、という3つの関係を押さえておくと、仕訳の科目選びで迷いません。

数値例の前提

本記事では次の自社作例を使います(単位:千円)。会社は全部純資産直入法を採用し、法定実効税率は30%、繰延税金資産の回収可能性に問題はないものとします。

A社株式(1期目末) 取得原価50,000、期末時価60,000。評価差益10,000
B社株式(1期目末) 取得原価30,000、期末時価26,000。評価差損4,000
2期目の動き 期中にA社株式を62,000で売却。B社株式の2期目末時価は31,000

評価差額は銘柄ごとに、期末時価と取得原価との比較により算定します(金融商品に関する会計基準 第79項)。比較の相手は前期末の時価ではなく取得原価である点が、3パターンすべての出発点です。なお、過去に減損処理した銘柄では、時価まで評価替えした後の金額がここでいう取得原価になります(金融商品会計に関する実務指針 第73項)。

評価差額 = 期末時価 − 取得原価

パターン1:期末評価の仕訳

その他有価証券は時価をもって貸借対照表価額とし、全部純資産直入法では評価差額の合計額を純資産の部に計上します(金融商品に関する会計基準 第18項(1))。1期目末の評価替えを税効果前の形で示すと、次のとおりです(単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
投資有価証券 10,000 その他有価証券評価差額金 10,000
その他有価証券評価差額金 4,000 投資有価証券 4,000

A社株式は時価60,000、B社株式は時価26,000で貸借対照表に載り、その他有価証券評価差額金は貸方10,000と借方4,000の差し引きで貸方残高6,000になります。評価差損が評価差益を上回る期は、この勘定が借方残高(マイナス)となり、純資産を減らす形で表示されます。

ここで押さえておきたいのは、評価差損も評価差益と相殺したうえで純資産に置くという点です。投資有価証券評価損というPL科目は使いません。PL科目が出てくるのは、部分純資産直入法を採用している場合と減損処理の場合に限られます。

混同されやすいのが、損益計算書の投資有価証券評価損(益)との違いです。同じ時価評価から生じる金額でも、その他有価証券評価差額金は純資産の部の科目で当期純利益に影響せず、投資有価証券評価損は当期の損失として計上される損益項目です。決算整理で「評価損」の科目を使っていたら、採用している方法と減損の要否を確かめる合図と考えてください。

簿記の学習ではこの税効果前の形で説明されることが多いのですが、純資産の部に計上されるその他有価証券の評価差額には税効果会計を適用しなければなりません(金融商品に関する会計基準 第18項)。決算ではパターン3の形に組み直します。

パターン2:翌期首の洗替仕訳

評価差額は洗い替え方式で処理するため、翌期首にはパターン1の仕訳をそのまま逆に起こします(金融商品に関する会計基準 第18項)。借方「その他有価証券評価差額金10,000/貸方 投資有価証券10,000」と、借方「投資有価証券4,000/貸方 その他有価証券評価差額金4,000」の2本です。振戻し後は、A社株式が50,000、B社株式が30,000の取得原価に戻り、その他有価証券評価差額金の残高はゼロになります。

洗い替えとする理由は、評価差額を毎期末の時価と取得原価との比較により算定するからです(金融商品に関する会計基準 第79項)。期末の時価評価は、その時点の情報を貸借対照表に映すための手続きであって、取得原価そのものを書き換える処理ではありません。

2期目に売却と再評価が重なった場合

洗替を正しく入れているかどうかは、2期目の仕訳で差が出ます。前提どおり、期中にA社株式を62,000で売却し、期末にB社株式(時価31,000)を再評価する場合の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。

その他有価証券は洗替方式で処理されるため、売却したときは売却前の取得原価に基づく売却原価と売却価額との差額を、当期の売却損益とします(金融商品に関する会計基準 第79項、金融商品会計に関する実務指針 第76項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 62,000 投資有価証券 50,000
投資有価証券売却益 12,000
投資有価証券 1,000 その他有価証券評価差額金 1,000

1行目と2行目が売却、3行目がB社株式の期末評価です。売却益は前期末時価60,000との差額2,000ではなく、取得原価50,000との差額12,000になります。前期末に純資産へ置いていた含み益10,000は、洗替でいったん消えたうえで、売却時にPLの売却益として初めて実現する、という流れです。

B社株式は、1期目末には評価差損4,000でしたが、2期目末は取得原価30,000に対して時価31,000なので評価差益1,000になります。前期末時価26,000と比べて5,000と計上してしまうのは、期首の洗替を入れ忘れたときに起きる典型的な誤りです。税効果を入れると、この1,000は繰延税金負債300とその他有価証券評価差額金700に分かれます。

実務では、期首に振り戻さず、期末に前期末残高との差額だけを計上して同じ残高に合わせる会社もあります。その場合でも、売却原価と期末の評価差額の基準はあくまで取得原価です。有価証券の管理台帳では「取得原価」と「前期末時価」を別の欄で持っておくと、こうした取り違えを防げます。

パターン3:税効果を含めた仕訳(決算の完成形)

会計上は時価で評価しても、税務上は原則として取得原価のまま据え置かれます。評価差額が直接純資産の部に計上され、かつ課税所得の計算に含まれていない場合、評価替えの対象となった有価証券の簿価修正額は税効果会計上の一時差異に該当します(税効果会計に係る会計基準 第二 一 2(1)②、金融商品会計に関する実務指針 第73項)。そのため税効果会計の適用が強制されています(金融商品に関する会計基準 第18項)。

評価差益に係る税効果は繰延税金負債に、評価差損に係る税効果は繰延税金資産に計上し、いずれも評価差額から控除します(金融商品会計に関する実務指針 第73項、税効果会計に係る会計基準 第二 二 3)。相手勘定は法人税等調整額ではなく、純資産の部の評価・換算差額等です(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第9項(1)、第11項)。1期目末の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
投資有価証券 10,000 繰延税金負債 3,000
その他有価証券評価差額金 7,000
繰延税金資産 1,200 投資有価証券 4,000
その他有価証券評価差額金 2,800

その他有価証券評価差額金は貸方7,000と借方2,800の純額で4,200です。税効果前のパターン1(6,000)との差額1,800は、将来売却したときに課税される見込額にあたり、税効果を入れることで純資産から外れます。PLに出てくる科目は1つもありません。

税効果を入れる意味は、純資産に含める金額を「税引後の含み損益」にそろえることにあります。税効果を付けないと、将来の売却時に課税される分まで純資産に含めてしまい、株主に帰属する価値を大きく見せてしまいます。評価差額を純資産の部に記載する際に、法人税等及び税効果を調整することとされているのはこのためです(金融商品に関する会計基準 第79項)。

残高の検算と翌期首の洗替

決算では、次の式で残高を検算しておくと、銘柄が増えても仕訳の漏れに気づけます。全部純資産直入法では、この金額は評価差益部分と評価差損部分の純額です(金融商品会計に関する実務指針 第73項)。

繰延税金負債 = 評価差益 × 法定実効税率 = 10,000 × 30% = 3,000
繰延税金資産 = 評価差損 × 法定実効税率 = 4,000 × 30% = 1,200
その他有価証券評価差額金 = (10,000 − 4,000) × (1 − 30%) = 4,200

翌期首の洗替は、上の仕訳の貸借をそのまま入れ替えます。繰延税金負債3,000と繰延税金資産1,200も一緒に取り崩されるので、振戻し後は評価差額金・繰延税金資産・繰延税金負債の残高がすべてゼロになります。税効果を入れた場合でも、パターン2の考え方はそのまま当てはまります。

税効果の相手勘定の早見表

相手勘定は、評価差額の符号と、その評価差額を純資産に置くか損益に落とすかで決まります(金融商品会計に関する実務指針 第73項、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第9項、第11項)。

評価差益が生じた銘柄 繰延税金負債を計上し、相手勘定はその他有価証券評価差額金
評価差損が生じた銘柄
(全部純資産直入法)
繰延税金資産を計上し、相手勘定はその他有価証券評価差額金
評価差損が生じた銘柄
(部分純資産直入法)
繰延税金資産を計上し、相手勘定は損益項目である法人税等調整額

貸借対照表では、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に、繰延税金負債は固定負債の区分に表示し、同一納税主体のものは相殺して表示します(税効果会計に係る会計基準の一部改正 第2項)。なお、評価差額に課される当事業年度の課税対象利益を基礎とする税金がある場合は、法人税等に関する会計基準 第5項から第5-5項の処理を行います(金融商品に関する会計基準 第18項)。

関連コラム税効果会計の注記記載例|発生原因別内訳と評価性引当額のひな形▸

部分純資産直入法を採用している場合の仕訳

部分純資産直入法は、時価が取得原価を上回る銘柄の評価差額を純資産の部に計上し、下回る銘柄の評価差額を当期の損失として処理する方法です(金融商品に関する会計基準 第18項(2))。原則は全部純資産直入法で、継続適用を条件に部分純資産直入法も選べます。株式・債券等の種類ごとに両方法を区分して適用することも認められています(金融商品会計に関する実務指針 第73項)。同じ数値例の1期目末は次のとおりです(単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
投資有価証券 10,000 繰延税金負債 3,000
その他有価証券評価差額金 7,000
投資有価証券評価損 4,000 投資有価証券 4,000
繰延税金資産 1,200 法人税等調整額 1,200

評価差益の側は全部純資産直入法と同じで、その他有価証券評価差額金は7,000になります。評価差損の側は損失計上したため、繰延税金資産の相手勘定は法人税等調整額です(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第9項)。当期純利益は2,800減りますが、純資産合計の増加額は4,200で、全部純資産直入法と一致します。

損益計算書に計上した損失も、評価差額を毎期末の時価と取得原価との比較で算定することとの整合性から、洗い替え方式によります(金融商品に関する会計基準 第80項)。翌期首は投資有価証券評価損と法人税等調整額も逆仕訳するため、翌期のPLに戻入れの効果が出ます。なお、全部純資産直入法と部分純資産直入法の間の変更は会計方針の変更に該当し、会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準に従って処理します(金融商品会計に関する実務指針 第81項)。両方法の比較を計算例で確かめたい場合は、冒頭で紹介した関連コラムが詳しく扱っています。

その他有価証券評価差額金の表示(個別・株主資本等変動計算書・連結)

仕訳で動かした評価差額金がどこに並ぶのかを確認します。PLを通らない勘定なので、置き場所は純資産の部と、その変動を示す計算書です。

個別貸借対照表 株主資本以外の項目である評価・換算差額等に、その他有価証券評価差額金として表示します(貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 第7項(1)、第8項)
株主資本等
変動計算書
当期首残高・当期変動額・当期末残高に区分し、当期変動額は純額で表示します。主な変動事由ごとの表示や注記も可能です(株主資本等変動計算書に関する会計基準 第8項)
連結財務諸表 評価・換算差額等をその他の包括利益累計額と読み替えます(包括利益の表示に関する会計基準 第16項)

貸借対照表に計上する金額は評価差額そのものではなく、法人税等及び繰延税金資産又は繰延税金負債の額を控除した後の金額です(貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 第8項)。パターン3で検算した4,200が、そのまま評価・換算差額等に載ることになります。

株主資本等変動計算書では、洗替による振戻しと期末の再評価を相殺した純額を1行で示す形が一般的です。2期目の例でいえば、期首の振戻しでマイナス4,200、期末のB社株式の再評価でプラス700となり、当期変動額は純額のマイナス3,500として表示されます。

連結では、その他の包括利益の内訳項目としてその他有価証券評価差額金を区分表示し(包括利益の表示に関する会計基準 第7項)、内訳項目別の税効果の金額を注記します(包括利益の表示に関する会計基準 第8項)。2期目にA社株式を売却した例のように、過去にその他の包括利益に含めていた部分が当期純利益に振り替わったときは、組替調整額として内訳項目ごとに注記します(包括利益の表示に関する会計基準 第9項)。

関連コラム純資産の部の表示|貸借対照表の区分と株主資本の実務▸

評価差損の税効果が付かない・限定される場合

パターン3では回収可能性に問題がない前提を置きましたが、実務ではここで判断が分かれます。その他有価証券の評価差額に係る一時差異は、回収可能性の一般的な判断ではなく専用の定めに従って計上します(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第11項)。

原則は個々の銘柄ごとにスケジューリングを行い、評価差損は回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を、評価差益は繰延税金負債を計上します。一括して計上する方法も認められており、スケジューリング可能な場合は評価差損と評価差益の銘柄ごとの合計額で、スケジューリング不能な場合は相殺後の純額で判断します(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第38項)。

純額で評価差損となる場合、その将来減算一時差異は原則として回収可能性がないものとされますが、その他有価証券は随時売却が可能で長期的には売却が想定されることから、会社の分類に応じて次のように取り扱うことができます(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第39項(2))。部分純資産直入法を採用している場合も、これらの定めに準じて処理します(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第41項)。

(分類1)・(分類2)
に該当する企業
純額の評価差損に係る繰延税金資産の回収可能性があるものとします(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第39項(2)①)
(分類3)
に該当する企業
将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)の一時差異等加減算前課税所得の見積額にスケジューリング可能な一時差異の解消額を加減した額に基づき見積る場合、回収可能性があるものとします(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第39項(2)②)

個々の銘柄でスケジューリングを行う場合の回収可能性は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得、将来加算一時差異の3つに基づいて判断し、税金負担額を軽減できると認められる範囲内で繰延税金資産を計上します(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第6項、第7項)。数値例のB社株式でいえば、評価差損4,000に対する繰延税金資産1,200の全額が計上できるとは限りません。

回収可能性が認められない部分には繰延税金資産が計上されず、評価差損の全額がその他有価証券評価差額金のマイナスとして残ります。また、回収可能性を見直して差額が生じた場合、評価差額を直接純資産の部に計上していれば、その差額は法人税等調整額ではなく見直しを行った年度の評価・換算差額等に直接計上します(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第10項(2))。純額の評価差益に係る将来加算一時差異は、その他有価証券以外の将来減算一時差異とは相殺できない点にも注意が必要です(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第39項(1))。上場準備の過程では、評価差損に機械的に繰延税金資産を立てていないかが監査で確認されやすい論点です。

評価差額金が生じないケースと減損処理

その他有価証券に区分されていても、評価差額金が生じないものがあります。市場価格のない株式等は取得原価をもって貸借対照表価額とするため、時価評価の対象外で、一時差異も生じません(金融商品に関する会計基準 第19項)。非上場の政策保有株式が中心の会社では、その他有価証券評価差額金がほとんど計上されないこともあります。

また、市場価格のない株式等以外のその他有価証券について時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、評価差額を当期の損失として処理し、その時価を翌期首の取得原価とします(金融商品に関する会計基準 第20項、第22項)。時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合は、合理的な反証がない限り減損処理が必要です(金融商品会計に関する実務指針 第91項)。全部純資産直入法を採用していても、減損に該当する下落は評価差額金ではなくPLに計上し、洗替もしない点が、本記事の3パターンとの決定的な違いです。市場価格のない株式等も、実質価額が著しく低下したときは相当の減額を行います(金融商品に関する会計基準 第21項)。

関連コラム有価証券の減損処理とは?時価の著しい下落と判定基準を解説▸

評価差額をPLに入れない理由と適用時期

その他有価証券は、売買目的有価証券と子会社株式及び関連会社株式との中間的な性格を持つものとして一括して捉えられ(金融商品に関する会計基準 第75項)、投資情報としての有用性から時価で貸借対照表に載せることとされました(金融商品に関する会計基準 第76項)。一方で、事業遂行上の必要性から直ちに売買・換金することに制約を伴う面もあるため、評価差額を直ちに当期の損益とするのは適切でないと考えられました(金融商品に関する会計基準 第77項)。国際的にも、この種の評価差額は当期の損益とせず純資産の部に計上する方法が採用されています(金融商品に関する会計基準 第78項)。その結果、評価差額を損益とせず、税効果を調整のうえ純資産の部に記載する考え方が採用されています(金融商品に関する会計基準 第79項)。部分純資産直入法は、保守主義の観点から含み損だけを損益に計上する方法も認めたものです(金融商品に関する会計基準 第80項)。

この枠組みは1999年公表の会計基準に始まり、その他有価証券の財務諸表における時価評価は2001年4月1日以後開始する事業年度から実施することが適当とされました(金融商品に関する会計基準 第41項(1))。時価の定義を見直した2019年改正は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています(金融商品に関する会計基準 第41項(5))。

直近では2026年に改正が行われ、金融資産の譲渡で譲受人が特別目的会社である場合の取扱いが明確化されました。2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後に実施される金融資産の譲渡から適用され、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後の譲渡から早期適用できます(金融商品に関する会計基準 第41項(7)、(8))。その他有価証券評価差額金の3パターンの仕訳そのものに変更はありません。

決算で確かめたい5つのポイント

最後に、3パターンの仕訳を入れ終えたあとに確かめておきたい点を並べます。いずれも数値例で取り上げた論点の裏返しで、監査で質問を受けやすい箇所でもあります。

  • 期首の洗替が入っているか。投資有価証券の期首残高が取得原価の合計と一致しているかで確かめられます。
  • 評価差額の基準が取得原価になっているか。前期末時価と比べていないか、減損した銘柄は修正後の取得原価を使っているかを見ます。
  • 税効果の相手勘定が正しいか。全部純資産直入法で法人税等調整額を使っていないかを確認します。
  • 残高が検算式と合うか。評価差額の純額×(1−法定実効税率)と、その他有価証券評価差額金の残高を突き合わせます。回収可能性がない部分がある場合は、その分だけ差が出るのが正しい状態です。
  • 売却損益が取得原価基準か。期中売却の損益が、前期末時価ではなく取得原価との差額で計算されているかを確かめます。

まとめ

その他有価証券評価差額金は純資産の部の評価・換算差額等に計上する勘定で、PLを通りません。仕訳は、①銘柄ごとに取得原価と期末時価を比べる期末評価、②翌期首に逆仕訳して取得原価へ戻す洗替、③評価差額から繰延税金負債・繰延税金資産を控除する税効果、の3パターンで組み立てます。数値例では、評価差益10,000・評価差損4,000・法定実効税率30%で、その他有価証券評価差額金は4,200になりました。

実務で誤りが起きやすいのは、洗替の入れ忘れと税効果の相手勘定です。2期目の売却益と再評価は、どちらも前期末時価ではなく取得原価を基準に計算します。PL科目が登場するのは、部分純資産直入法で評価差損を損失処理する場合と、減損処理の場合だけです。評価差損に対する繰延税金資産の回収可能性や、全部・部分の方法の選択は、会社の状況によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

その他有価証券評価差額金は損益計算書に影響しますか。

影響しません。全部純資産直入法では、評価差益と評価差損の合計額を純資産の部に計上するため、当期純利益は変動しません(金融商品に関する会計基準 第18項(1))。損益計算書に影響が出るのは、部分純資産直入法で評価差損を損失処理する場合と、減損処理の場合です。

期末評価の仕訳はどう書きますか。

評価差益は「投資有価証券/その他有価証券評価差額金」、評価差損は「その他有価証券評価差額金/投資有価証券」です。評価差額は銘柄ごとに期末時価と取得原価を比べて算定します(金融商品に関する会計基準 第79項)。決算では、これに税効果を加えた形で計上します(金融商品に関する会計基準 第18項)。

翌期首の洗替仕訳を入れないとどうなりますか。

帳簿価額が前期末の時価のまま残るため、売却損益や翌期末の評価差額を取得原価から計算できなくなります。評価差額は毎期末の時価と取得原価との比較により算定し、期中に売却した場合は取得原価と売却価額との差額が売買損益になります(金融商品に関する会計基準 第79項、金融商品会計に関する実務指針 第76項)。

税効果の相手勘定は法人税等調整額ですか。

全部純資産直入法では法人税等調整額ではなく、純資産の部の評価・換算差額等(その他有価証券評価差額金)です(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第9項(1)、第11項)。部分純資産直入法で評価差損を損失計上した場合に限り、その評価差損に係る繰延税金資産の相手勘定は法人税等調整額になります(税効果会計に係る会計基準の適用指針 第9項)。

税効果を適用しない処理は認められますか。

認められません。純資産の部に計上されるその他有価証券の評価差額には、税効果会計を適用しなければなりません(金融商品に関する会計基準 第18項)。ただし、評価差損に係る繰延税金資産の回収可能性が認められない場合には、結果として税効果が付かないことがあります(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第39項(2))。

その他有価証券評価差額金はどこに表示しますか。

個別貸借対照表では純資産の部の評価・換算差額等に表示します(貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準 第7項(1)、第8項)。株主資本等変動計算書では当期変動額を純額で表示し(株主資本等変動計算書に関する会計基準 第8項)、連結財務諸表ではその他の包括利益累計額と読み替えます(包括利益の表示に関する会計基準 第16項)。

時価が著しく下落した場合も評価差額金に計上しますか。

計上しません。時価が著しく下落し回復する見込みがあると認められない場合は、評価差額を当期の損失として処理し、その時価を翌期首の取得原価とします。洗替は行いません(金融商品に関する会計基準 第20項、第22項)。

その他有価証券評価差額金がマイナスになることはありますか。

あります。全部純資産直入法では評価差益と評価差損の合計額を純資産の部に計上するため(金融商品に関する会計基準 第18項(1))、評価差損が評価差益を上回る期は借方残高となり、評価・換算差額等のマイナスとして純資産を減らす形で表示されます。回収可能性が認められず繰延税金資産を計上できない部分は、税効果を控除しないままマイナスに残ります。

その他有価証券を売却したとき、評価差額金はどうなりますか。

翌期首の洗替で評価差額金はいったんゼロに戻っているため、売却時の仕訳には評価差額金は出てきません。売却損益は、取得原価に基づく売却原価と売却価額との差額で計算します(金融商品会計に関する実務指針 第76項)。前期末に純資産へ置いていた含み益は、売却時に売却益としてPLに実現します。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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