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【IAS第16号】有形固定資産の取得原価を徹底解説!認識時点の測定

2024-10-24
目次

本記事では、IFRS(国際財務報告基準)におけるIAS第16号「有形固定資産」の中心的な論点である「認識時点での測定」について、関連する条項を網羅的に解説します。有形固定資産を財務諸表に計上する際の初期測定額、すなわち「取得原価」がどのように決定されるのか、その構成要素から特殊な取引の会計処理まで、実務上のポイントを詳しくご説明します。

IAS第16号における有形固定資産の測定の基本原則

IAS第16号では、資産としての認識規準を満たした有形固定資産は、その取得原価(cost)で測定しなければならないと定められています(第15項)。これは、有形固定資産を最初に財務諸表に計上する際の基本的なルールです。取得原価とは、資産を取得するために支払った対価や、その資産を使用可能な状態にするために直接要した支出の合計額を指します。この取得原価の算定方法が、本基準の核心部分となります。

有形固定資産の「取得原価」に含まれるもの

有形固定資産の取得原価は、単なる購入代金だけではありません。資産を意図した方法で稼働させるために必要な、さまざまなコストが含まれます。具体的には、以下の3つの要素から構成されます(第16項)。

購入価格

取得原価の最も基本的な構成要素は、資産の購入価格そのものです。これには、輸入関税や還付されない消費税などの取得関連税金が含まれます。一方で、取引の過程で発生した値引や割戻しは、購入価格から控除する必要があります(第16項(a))。

項目 説明
含めるもの 購入代金、輸入関税、還付されない取得税
控除するもの 値引、割戻し

直接起因するコスト

購入価格に加えて、その資産を「経営者が意図した方法で稼働可能にするために必要な場所及び状態に置くこと」に直接起因するコストも取得原価に含めなければなりません(第16項(b))。これらは、その支出がなければ資産が稼働できない、という性質を持つコストです。具体的な例は以下の通りです(第17項)。

コストの例 内容
従業員給付費用 資産の建設や取得に直接関わった従業員の人件費。
整地コスト 資産を設置する土地を準備するための費用。
当初の搬入及び取扱コスト 資産を購入場所から設置場所まで運ぶための輸送費や荷役費。
据付及び組立コスト 資産を設置し、組み立てるための費用。
試運転コスト 資産が正常に機能するかどうかをテストするための費用(試運転で生産された物品の売却収益は控除しない)。
専門家報酬 設計や設置に関わる技術者やコンサルタントに支払う報酬。

解体・除去・原状回復コスト

資産を取得した時点、または特定の期間使用した結果として、将来その資産を解体・除去し、設置場所を原状回復する義務を負う場合があります。この将来発生するコストの当初見積額も、有形固定資産の取得原価に含める必要があります(第16項(c))。ただし、棚卸資産を生産するために資産を使用した結果として生じた原状回復義務のコストは、IAS第2号「棚卸資産」に従って処理される点に注意が必要です(第18項)。

有形固定資産の「取得原価」に含まれないコスト

一方で、有形固定資産に関連する支出であっても、取得原価に含めるべきではないコストも明確に規定されています。これらのコストは、資産計上せず、発生時に費用として認識します。

取得原価から除外される費用の具体例

以下のコストは、たとえ有形固定資産の取得や建設に関連して発生したとしても、取得原価には含まれません(第19項)。これらは、資産を稼働可能な状態にするために直接必要とは見なされないためです。

除外されるコストの例 具体例
新しい施設の開設コスト オープニングセレモニーの費用など。
新しい製品・サービスの導入コスト 広告宣伝費、プロモーション活動費。
新たな場所・顧客層での事業コスト 従業員の研修費など。
管理費及びその他の一般間接費 本社部門の人件費や経費など。

コスト認識が終了するタイミング

取得原価へのコストの算入は、資産が「経営者が意図した方法で稼働可能とするために必要な場所及び状態」になった時点で終了します(第20項)。したがって、資産が物理的に完成し、稼働可能な状態になった後に発生するコストは、取得原価には含めません。例えば、稼働可能であるにもかかわらず未使用である期間の維持費や、製品の需要が確立するまでの初期営業損失などは、発生期間の費用として処理されます。

稼働前の収益・費用の取り扱い

資産を稼働可能な状態にする過程で、物品(例:試運転で生産されたサンプル品)が生産され、販売されることがあります。この販売によって得られた収入および当該物品のコストは、有形固定資産の取得原価から控除するのではなく、純損益として認識しなければなりません(第20A項)。これは2020年の基準改訂による重要な変更点であり、試運転活動が黒字になったとしても、その利益を取得原価から減額することは認められません。

特殊なケースにおける取得原価の算定

資産の取得形態は様々であり、特殊なケースにおける取得原価の算定方法も定められています。

自家建設資産及び果実生成型植物

企業が自社で資産を建設(自家建設)する場合、その取得原価は外部から購入した場合と同じ原則で決定されます(第22項)。ただし、社内で発生した内部利益は取得原価から除外し、非効率な生産によって生じた異常な金額の原材料費や労務費なども含めてはなりません。また、一定の要件を満たす場合には、IAS第23号「借入コスト」に基づき、建設期間中の借入コスト(支払利息)を取得原価に算入することが求められます。

支払を繰り延べた場合

資産の代金支払が通常の信用期間を超えて繰り延べられる場合、その取得原価は認識日現在の現金価格相当額となります(第23項)。支払総額と現金価格相当額との差額は、実質的に金融費用であるため、信用期間にわたって利息費用として認識します(IAS第23号に基づき資産化される場合を除く)。

資産交換取引

有形固定資産を他の非貨幣性資産との交換によって取得した場合、原則として受け入れた資産の公正価値で取得原価を測定します(第24項)。ただし、以下のいずれかに該当する場合は例外として、引き渡した資産の帳簿価額で測定します。

例外条件 内容
経済的実質を欠く場合 交換によって企業の将来キャッシュ・フローが大きく変動しないと見込まれる取引。
公正価値が測定不能な場合 受け取った資産と引き渡した資産、いずれの公正価値も信頼性をもって測定できない場合。

なお、受け取った資産と引き渡した資産の双方の公正価値が測定できる場合は、原則として引き渡した資産の公正価値を使用します。ただし、受け取った資産の公正価値の方がより明白である場合は、そちらを優先します(第27項)。

政府補助金を受け取った場合

有形固定資産の取得に関連して政府から補助金を受け取った場合、IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」の定めに従い、その補助金の分だけ資産の帳簿価額を減額する方法が認められています(第28項)。

まとめ

IAS第16号における有形固定資産の「認識時点での測定」は、取得原価を正確に算定することが求められます。取得原価には、購入価格だけでなく、資産を稼働可能な状態にするための直接的なコストや将来の除去費用見積額まで含まれます。一方で、管理費や稼働開始後のコストは費用処理が必要です。資産交換や自家建設など、取引の形態に応じた適切な会計処理を理解し、適用することが、信頼性の高い財務諸表を作成する上で不可欠です。

IAS第16号「有形固定資産」の取得原価に関するよくある質問

Q. IAS第16号における有形固定資産の「取得原価」には、具体的に何が含まれますか?

A. 有形固定資産の取得原価は、主に①購入価格(関税等を含み、値引等を控除)、②資産を意図した状態で稼働させるために直接かかるコスト(整地費用、運送費、据付費、試運転コストなど)、③将来の解体・除去・原状回復コストの当初見積額から構成されます(IAS第16号 第16項)。

Q. 有形固定資産の取得原価に含めることができないコストにはどのようなものがありますか?

A. 新しい施設の開設コスト、新製品の導入コスト(広告宣伝費など)、新たな場所での事業コスト(従業員研修費など)、管理費及びその他の一般間接費は、有形固定資産の取得原価に含めることはできません(IAS第16号 第19項)。

Q. 資産が使えるようになる前の試運転で製品が売れた場合、その売上はどう処理しますか?

A. 2020年の基準改正により、資産が稼働可能になる前に生産された物品(試運転時のサンプル品など)の販売による収入とコストは、取得原価から控除するのではなく、純損益として認識しなければなりません(IAS第16号 第20A項)。

Q. 支払いを分割(繰り延べ)で有形固定資産を購入した場合、取得原価はどう計算しますか?

A. 取得原価は、認識日現在の現金価格相当額で測定します。もし支払いが通常の信用期間を超えて繰り延べられる場合、現金価格相当額と支払総額との差額は、原則として信用期間にわたる利息費用として認識されます(IAS第16号 第23項)。

Q. 他の資産と交換で有形固定資産を取得した場合、取得原価はどのように決定しますか?

A. 原則として、公正価値で測定します。ただし、その交換取引が経済的実質を欠いている場合や、交換に関わる資産の公正価値が信頼性をもって測定できない場合は、引き渡した資産の帳簿価額で測定されます(IAS第16号 第24項)。

Q. 自社で有形固定資産を建設(自家建設)した場合の取得原価の注意点は何ですか?

A. 外部から購入した場合と同じ原則で取得原価を決定しますが、社内での利益(内部利益)は除外しなければなりません。また、異常な金額の仕損原材料費、労務費、その他のコストは取得原価に含めません(IAS第16号 第22項)。

事務所概要
社名
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住所
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03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

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