監査役の設置義務【判定表】取締役会・会計参与の例外と置かない選択
目次
- 監査役の設置義務の判定表
- 設置義務が生じる3つの条文
- 取締役会設置会社の監査役(第327条第2項)
- 会計監査人設置会社の監査役(第327条第3項)
- 大会社の監査役会・会計監査人(第328条)
- 会計参与を置く例外の要件
- 監査の範囲を会計に限定する選択
- 監査役を置かない場合の選択肢
- 設置義務を満たしていない場合の扱い
- 判定でつまずきやすい論点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 取締役会を置いていない非公開会社に監査役は必要ですか。
- 会計参与を置けば、どの会社でも監査役を置かなくてよいですか。
- 監査役は何人置けばよいですか。
- 監査役の監査範囲を会計に限定できるのはどのような会社ですか。
- 監査等委員会設置会社に移行した場合、監査役はどうなりますか。
監査役の設置義務は、取締役会を置いているかと会計監査人を置いているかの2点でほぼ決まります。取締役会設置会社と会計監査人設置会社は、監査等委員会・指名委員会等を置く会社を除き、監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第2項・第3項)。
ただし、全株式に譲渡制限を付けた非公開会社で、取締役会のほかに会計参与を置いている場合は、監査役を置かない選択ができます。この記事では、監査役会(3人以上)ではなく単独の監査役が必要かどうかに絞り、会社の類型ごとの判定表と、置かない場合の選択肢を条文に沿って整理します。
監査役の設置義務の判定表
まず、自社がどの行に当たるかを確認してください。上の行ほど優先して当てはめます(委員会型の機関設計を採用していれば、他の条件にかかわらず1行目の扱いになります)。
| 監査等委員会設置会社 指名委員会等設置会社 |
監査役を置いてはならない(会社法 第327条第4項) |
|---|---|
| 公開会社かつ大会社 | 監査役会が必要=監査役3人以上・半数以上が社外監査役(会社法 第328条第1項、第335条第3項) |
| 非公開会社かつ大会社 | 会計監査人が必要になるため、監査役も必要。会計参与による例外は使えない(会社法 第328条第2項、第327条第3項) |
| 公開会社(大会社以外) | 取締役会が必要になるため、監査役も必要(会社法 第327条第1項第1号・第2項) |
| 会計監査人を任意に 置いている会社 |
監査役が必要(会社法 第327条第3項) |
| 非公開会社・取締役会あり ・会計参与なし |
監査役が必要(会社法 第327条第2項本文) |
| 非公開会社・取締役会あり ・会計参与あり |
監査役を置かなくてよい(会社法 第327条第2項ただし書) |
| 非公開会社・取締役会なし | 監査役の設置は任意(会社法 第326条第2項) |
判定に使う用語の定義は次のとおりです。公開会社とは、発行する株式の全部または一部について、譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない会社をいいます(会社法 第2条第5号)。一部の種類の株式だけでも譲渡制限が付いていなければ公開会社に当たる点は、見落とされやすいところです。大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表の資本金が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上の会社をいいます(会社法 第2条第6号)。
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設置義務が生じる3つの条文
判定表の根拠は、会社法第327条と第328条に集約されています。実務で迷いが生じるのは、ある機関を置くと別の機関が連動して必要になる「玉突き」の構造があるためです。条文ごとに入口を分けて確認します。
取締役会設置会社の監査役(第327条第2項)
取締役会設置会社は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第2項本文)。ここでいう取締役会設置会社には、任意に取締役会を置く会社だけでなく、会社法の規定により取締役会を置かなければならない会社も含まれます(会社法 第2条第7号)。
公開会社は取締役会の設置が義務づけられているため(会社法 第327条第1項第1号)、公開会社であれば規模にかかわらずこの入口から監査役が必要になります。取締役会は取締役3人以上で構成するため(会社法 第331条第5項)、取締役会設置会社では、取締役3人と監査役1人の最低4人の役員を確保する計算になります。
会計監査人設置会社の監査役(第327条第3項)
会計監査人設置会社も、委員会型を除き監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第3項)。この規定は取締役会の有無を問わないため、取締役会を置かない会社が任意に会計監査人を置いた場合でも、監査役が必要になります。
また、第327条第2項ただし書(会計参与による例外)は同条第3項には及びません。会計監査人を置いている会社は、会計参与を置いていても監査役を省略できない点に注意が必要です。
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大会社の監査役会・会計監査人(第328条)
公開会社である大会社(委員会型を除く)は、監査役会と会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項)。監査役会設置会社では、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません(会社法 第335条第3項)。
一方、非公開の大会社に義務づけられるのは会計監査人だけです(会社法 第328条第2項)。監査役会までは求められませんが、会計監査人を置くことで第327条第3項の入口に入り、監査役は1人以上必要になります。非公開会社であっても、大会社になった時点で会計参与による例外は使えなくなるという点が、判定表の3行目の意味です。
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会計参与を置く例外の要件
第327条第2項ただし書の例外は、公開会社でない会計参与設置会社に限って認められます(会社法 第327条第2項ただし書)。会計参与設置会社とは、会計参与を置く株式会社をいいます(会社法 第2条第8号)。例外を使うための条件を整理すると、次の3つをすべて満たす必要があります。
- 全株式に譲渡制限が付いている(非公開会社である)
- 会計参与を置いている
- 会計監査人を置いておらず、大会社にも当たらない(第327条第3項・第328条第2項の入口に入らない)
会計参与と監査役は、名前は似ていても役割が異なります。会計参与は取締役と共同して計算書類を作成する機関であり(会社法 第374条第1項)、監査役は取締役の職務の執行を監査する機関です(会社法 第381条第1項)。代替として選ぶ前に、違いを比べておくと判断しやすくなります。
| 会計参与 | 監査役 |
|---|---|
| 取締役と共同して計算書類等を作成し、会計参与報告を作成する(会社法 第374条第1項) | 取締役の職務の執行を監査し、監査報告を作成する(会社法 第381条第1項) |
| 公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人に限られる(会社法 第333条第1項) | 専門資格は求められず、欠格事由は取締役の規定が準用される(会社法 第335条第1項) |
| 会社・子会社の取締役、監査役、使用人等はなれない(会社法 第333条第3項第1号) | 会社・子会社の取締役、使用人等を兼ねることができない(会社法 第335条第2項) |
実務では、顧問税理士や公認会計士に会計参与を依頼するケースが考えられますが、会計参与は計算書類の作成に関与する立場であり、業務監査を担う機関ではありません。取締役の業務執行に対するチェックを社内体制でどう補うかも、あわせて検討しておく必要があります。
監査の範囲を会計に限定する選択
監査役を置く場合でも、一定の会社は監査の範囲を会計に関するものに限定できます。対象は、公開会社でない株式会社のうち、監査役会設置会社と会計監査人設置会社を除いた会社で、定款に定めることで限定します(会社法 第389条第1項)。
限定した場合、監査役の権限は会計に関する調査・報告に絞られ、業務監査に関する規定(第381条から第386条まで)は適用されません(会社法 第389条第7項)。このため、取締役会への出席義務(会社法 第383条第1項)も課されません。なお、会社法上の「監査役設置会社」の定義では、監査の範囲を会計に限定する定款の定めがある会社を「監査役を置く株式会社」から除いています(会社法 第2条第9号)。条文で「監査役設置会社」とある規定が適用されるかは、個別に確認が必要です。
登記にも反映が必要です。監査役設置会社である旨と監査役の氏名に加え、監査の範囲を会計に限定する定款の定めがある場合はその旨も登記事項となります(会社法 第911条第3項第17号)。さらに、会計限定の定めを廃止したときや、譲渡制限の定めを廃止して公開会社になったときは、その定款変更の効力発生時に監査役の任期が満了します(会社法 第336条第4項第3号・第4号)。
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監査役を置かない場合の選択肢
「監査役になってくれる人材が見つからない」「役員の数を減らしたい」という相談は少なくありません。会社法上、監査役を置かずに済む機関設計は、大きく次の3つです。いずれも他の機関とのセットで成り立つため、選ぶ前に連動して必要になるものを確認します。
| 選択肢 | 前提条件と連動して必要な機関 |
|---|---|
| 取締役会を置かない | 非公開会社に限られる(会社法 第327条第1項第1号)。会計監査人を置いていないことも必要(会社法 第327条第3項) |
| 会計参与を置く | 非公開会社で取締役会を置く場合の例外(会社法 第327条第2項ただし書)。会計監査人設置会社・大会社では使えない |
| 監査等委員会設置会社へ移行する | 取締役会と会計監査人が必要(会社法 第327条第1項第3号・第5項)。監査等委員である取締役は3人以上で過半数が社外取締役(会社法 第331条第6項) |
取締役会を廃止すると、株主総会の招集や意思決定の方法など、運営面の手続も変わります。会計参与を選ぶ場合は専門家への報酬が、監査等委員会設置会社を選ぶ場合は会計監査人の監査報酬と社外取締役の確保が、それぞれ新たな負担になります。監査役1人を置くコストと比べて判断するのが現実的です。
また、監査役を置く旨の定款の定めを廃止する定款変更や、監査等委員会を置く旨の定款変更をした場合、現任の監査役の任期はその効力発生時に満了します(会社法 第336条第4項第1号・第2号)。機関設計を変更するときは、任期の終了と登記の時期をあわせて段取りします。
設置義務を満たしていない場合の扱い
監査役が法律や定款で定めた員数を欠くこととなった場合に、その選任の手続をすることを怠ったときは、取締役等が100万円以下の過料に処されることがあります(会社法 第976条第22号)。
任期の満了や辞任で監査役が退任し員数を欠いたときは、新たな監査役が就任するまで、退任した監査役がなお監査役としての権利義務を有します(会社法 第346条第1項)。必要があるときは、利害関係人の申立てにより、裁判所が一時監査役の職務を行うべき者を選任することもできます(会社法 第346条第2項)。ただし、これらは後任選任までのつなぎの措置であり、選任手続を進める義務が解消されるわけではありません。
監査役の就任・退任など登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければなりません(会社法 第915条第1項)。
判定でつまずきやすい論点
実務で判断を誤りやすいのは、次のような場面です。判定表に当てはめる前に、前提となる事実を確認してください。
- 種類株式の一部に譲渡制限がない: 一部でも譲渡制限の無い株式を発行できる定款であれば公開会社に当たり、取締役会と監査役が必要になります(会社法 第2条第5号、第327条第1項第1号・第2項)。
- 大会社の判定時点: 大会社かどうかは最終事業年度に係る貸借対照表の資本金・負債で判定します(会社法 第2条第6号)。増資や負債の増加があっても、期中に直ちに大会社となるわけではありません。
- 会計監査人の任意設置: 金融機関や取引先の要請で会計監査人を任意に置くと、非公開・取締役会なしの会社でも監査役が必要になります(会社法 第327条第3項)。会計監査人を置いた会社は監査範囲の会計限定もできません(会社法 第389条第1項)。
- 監査役の兼任: 監査役は、会社または子会社の取締役・使用人等を兼ねることができません(会社法 第335条第2項)。経理担当の従業員を監査役に充てることはできない点に注意が必要です。
監査役の要否は機関設計全体と連動するため、個別の事情によって結論が変わることがあります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
まとめ
- 取締役会設置会社と会計監査人設置会社は、委員会型を除き監査役が必要(会社法 第327条第2項・第3項)
- 非公開の取締役会設置会社は、会計参与を置けば監査役を省略できる(会社法 第327条第2項ただし書)
- 非公開でも大会社は会計監査人が必要になり、会計参与の例外は使えない(会社法 第328条第2項)
- 非公開で監査役会・会計監査人を置かない会社は、監査の範囲を会計に限定できる(会社法 第389条第1項)
- 員数を欠いたまま選任手続を怠ると100万円以下の過料の対象になりうる(会社法 第976条第22号)
公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングでは、会計監査人の設置が必要になる大会社化の局面や、会計監査人の任意設置を検討している会社の会社法監査を支援しています。機関設計の見直しとあわせてご検討ください。
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よくある質問
取締役会を置いていない非公開会社に監査役は必要ですか。
会計監査人を置いていなければ、監査役の設置は任意です(会社法 第326条第2項)。ただし会計監査人を置いた場合は、取締役会の有無にかかわらず監査役が必要になります(会社法 第327条第3項)。
会計参与を置けば、どの会社でも監査役を置かなくてよいですか。
いいえ。例外は公開会社でない取締役会設置会社に限られます(会社法 第327条第2項ただし書)。会計監査人設置会社には監査役の設置義務が別に定められているため、非公開の大会社や会計監査人を任意に置く会社では使えません(会社法 第327条第3項、第328条第2項)。
監査役は何人置けばよいですか。
監査役会を置かない会社では1人以上で足ります。公開会社である大会社など監査役会設置会社では、3人以上で半数以上を社外監査役とする必要があります(会社法 第335条第3項)。
監査役の監査範囲を会計に限定できるのはどのような会社ですか。
公開会社でない株式会社のうち、監査役会設置会社と会計監査人設置会社を除いた会社が、定款で定めることにより限定できます(会社法 第389条第1項)。限定した旨は登記事項です(会社法 第911条第3項第17号)。
監査等委員会設置会社に移行した場合、監査役はどうなりますか。
監査等委員会設置会社は監査役を置くことができません(会社法 第327条第4項)。監査等委員会を置く旨の定款変更の効力発生時に、現任の監査役の任期は満了します(会社法 第336条第4項第2号)。
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