監査役の報酬相場の決まり方【一覧表】常勤・社外の違いと387条の手続
目次
- 監査役の報酬の決め方【一覧表】会社法387条の3段階
- 総額は定款または株主総会決議で決める
- 各監査役への配分は監査役の協議で決める
- 株主総会での意見陳述権
- 取締役・監査等委員・会計参与との決定手続の比較
- 監査役の報酬水準を左右する要素【一覧表】
- 事業報告の開示から他社の水準を確かめる方法
- 監査役の報酬の税務上の取扱い(法人税法34条)
- 監査役の報酬を改定する手順
- 監査役の報酬で起きやすい誤り
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 監査役の報酬は取締役会で決められますか。
- 監査役の報酬の相場はどのように調べればよいですか。
- 監査役の報酬を増やすには毎回株主総会の決議が必要ですか。
- 監査役の報酬は損金に算入できますか。
- 監査の費用は報酬に含まれますか。
監査役の報酬は、取締役の報酬とは別の枠で決めます。会社法は、定款に額の定めがなければ株主総会の決議で決め、監査役が2人以上いて個別の額が決まっていないときは、その範囲内で監査役の協議によって配分すると定めています(会社法 第387条第1項・第2項)。取締役会が監査役の個別の額を決める仕組みにはなっていません。
「相場」を知りたいという相談も多くいただきますが、監査役の報酬は常勤か非常勤か、社外監査役か、会社の規模や機関設計、監査の範囲によって大きく変わります。本記事は法令と公的機関の資料だけを根拠にしているため、特定の金額を相場として示すことはしません。その代わりに、水準を左右する要素と会社法387条の決定手続、事業報告の開示、税務上の取扱いを一覧表で整理し、公開情報から自社の水準を確かめる手順まで解説します。
監査役の報酬の決め方【一覧表】会社法387条の3段階
会社法387条は、①報酬等の総額などを定款か株主総会で決める、②各監査役への配分を監査役の協議で決める、③監査役が株主総会で意見を述べる、という3つの規定で組み立てられています。ここでいう「報酬等」は、報酬・賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益をいいます(会社法 第361条第1項)。
| 報酬等の額 | 定款に額の定めがなければ株主総会の決議で定める(会社法 第387条第1項) |
|---|---|
| 各監査役への配分 | 定款・株主総会で個別の額を定めていなければ、総額の範囲内で監査役の協議により定める(会社法 第387条第2項) |
| 監査役の意見 | 監査役は株主総会で監査役の報酬等について意見を述べることができる(会社法 第387条第3項) |
| 監査費用 | 報酬とは別に、職務に必要な費用の前払・償還を会社に請求できる(会社法 第388条) |
総額は定款または株主総会決議で決める
報酬等の額を定款に書き込む会社は多くないため、実務では株主総会の決議で監査役全員分の総額の上限を定める形が一般的です(会社法 第387条第1項)。取締役の報酬枠とは別に、監査役の枠を設けて決議します。
取締役が監査役の報酬等に関する議案を株主総会に提出するときは、株主総会参考書類に次の事項を記載します(会社法施行規則 第84条第1項)。
| 算定の基準 | 会社法387条1項に規定する事項(報酬等の額)の算定の基準 |
|---|---|
| 変更の理由 | 既に定められている額を変更する議案であるときは、その理由 |
| 監査役の員数 | 2人以上の監査役についての定めであるときは、その員数 |
| 退職慰労金の場合 | 退職する各監査役の略歴 |
| 監査役の意見 | 会社法387条3項による意見があるときは、その内容の概要 |
退職慰労金の額を一定の基準に従って決めることを第三者に一任する議案では、その基準の内容も記載します。ただし、各株主が基準を知ることができる適切な措置を講じている場合は除かれます(会社法施行規則 第84条第2項)。
各監査役への配分は監査役の協議で決める
株主総会で決めるのが総額の上限だけで、各監査役の個別の額を定めていない場合、その配分は総額の範囲内で監査役の協議によって決めます(会社法 第387条第2項)。
実務で誤解が多いのは、取締役の報酬と同じように「個別の額は取締役会に一任する」と決議してしまうケースです。監査役は取締役の職務の執行を監査する立場にあるため、監査される側が監査役の報酬を決める形にすると、独立性が損なわれます。株主総会で上限額を決める議案を作る段階で、配分は監査役の協議に委ねる前提で文案を確認しておくことをおすすめします。協議の結果は、後から説明できるように書面で残しておくのが実務上の通例です。
株主総会での意見陳述権
監査役は、株主総会において監査役の報酬等について意見を述べることができます(会社法 第387条第3項)。報酬の水準が職務の負担に見合わないと考える場合に、監査役自身が株主に直接訴えることができる仕組みです。意見があるときは、その概要が株主総会参考書類にも記載されます(会社法施行規則 第84条第1項第5号)。
関連コラム監査役監査と会計監査人監査の違い|相当性判断のチェックリスト▸
取締役・監査等委員・会計参与との決定手続の比較
監査役の報酬の決め方は、他の役員と並べると特徴がはっきりします。監査をする役員ほど、業務を執行する取締役から切り離して決める仕組みになっています。
| 監査役 | 定款または株主総会で額を定め、個別の配分は監査役の協議(会社法 第387条) |
|---|---|
| 取締役 (監査等委員を除く) |
定款または株主総会で額・算定方法・内容を定める。議案を提出した取締役は相当とする理由を説明する(会社法 第361条第1項・第4項) |
| 監査等委員である取締役 | 他の取締役と区別して定め、個別の配分は監査等委員である取締役の協議(会社法 第361条第2項・第3項) |
| 指名委員会等設置会社の 取締役・執行役 |
報酬委員会が個人別の報酬等の内容を決定する(会社法 第404条第3項) |
| 会計参与 | 定款または株主総会で額を定め、個別の配分は会計参与の協議(会社法 第379条) |
監査等委員である取締役も、監査役と同じく株主総会で報酬等について意見を述べることができます(会社法 第361条第5項)。一方、会計監査人の報酬等は取締役が定め、監査役(監査役会設置会社では監査役会)の同意を得る仕組みで(会社法 第399条第1項・第2項)、監査役の報酬とは手続が異なります。
関連コラム会計監査人の報酬と監査役会の同意|手続と事業報告の開示▸
監査役の報酬水準を左右する要素【一覧表】
監査役の報酬に一律の相場があるわけではありません。同じ「監査役」でも、勤務の形態や求められる職務の範囲が会社ごとに違うためです。水準を検討するときに押さえておきたい要素を、根拠となる条文とあわせて整理します。
| 常勤か非常勤か | 監査役会設置会社は監査役の中から常勤の監査役を選定する必要がある(会社法 第390条第3項)。勤務日数と職務時間の差が報酬設計の出発点になる |
|---|---|
| 社外監査役か | 就任前10年間に当該会社・子会社の取締役や使用人でなかったこと等が要件(会社法 第2条第16号)。監査役会設置会社では半数以上が社外監査役(会社法 第335条第3項) |
| 会社の規模 | 大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)に該当するかで機関設計が変わる(会社法 第2条第6号) |
| 機関設計 | 公開会社である大会社(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)は監査役会と会計監査人の設置が必要(会社法 第328条第1項)。監査役会の運営や会計監査人との連携の負担が加わる |
| 監査の範囲 | 監査役会設置会社・会計監査人設置会社を除く非公開会社は、監査の範囲を会計に限定できる(会社法 第389条第1項)。業務監査を含むかで職務量が大きく異なる |
| 兼任の制限 | 会社・子会社の取締役や使用人を兼ねることができない(会社法 第335条第2項)。使用人分の給与と合わせて支給する形はとれない |
| 任期 | 原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。非公開会社は定款で10年まで伸長できる(会社法 第336条第1項・第2項) |
実務では、まず常勤・非常勤と社内・社外の組み合わせで区分を分け、そのうえで会社の規模と機関設計、監査範囲の広さで水準を調整するのが考えやすい順序です。たとえば、会計監査人を置く監査役会設置会社の常勤監査役は、業務監査に加えて監査役会の運営や会計監査人との連携も担うため、監査の範囲を会計に限定した監査役と同じ物差しでは比べられません。
関連コラム監査役会の設置義務チェックリスト|大会社の要件と機関設計▸
事業報告の開示から他社の水準を確かめる方法
一般的な相場の数字を探すよりも、同業・同規模の会社が実際に開示している数値を見るほうが、自社の判断材料としては確かです。公開会社は、事業報告に会社役員に関する事項を記載する必要があります(会社法施行規則 第119条第2号)。そこには監査役の報酬等も含まれます。
| 区分ごとの総額と員数 | 取締役・会計参与・監査役・執行役ごとの報酬等の総額と員数(会社法施行規則 第121条第4号イ)。役員ごとの額を個別に記載する方法も認められている(同号ロ・ハ) |
|---|---|
| 報酬の内訳 | 業績連動報酬等・非金銭報酬等を含む場合は、それぞれの総額とそれ以外の総額(会社法施行規則 第121条第4号イ) |
| 定款・総会決議の内容 | 定款の定めを設けた日または株主総会の決議の日、定めの内容の概要、対象となる役員の員数(会社法施行規則 第121条第5号の4) |
| 社外役員の報酬 | 社外役員の報酬等の総額と員数(会社法施行規則 第124条第5号) |
開示された数値から、監査役1人当たりの平均額は次のように計算できます。
この平均値を比べるときは、次の点を補正して読む必要があります。
- 期中の就任・退任: 開示の対象は当該事業年度に係る報酬等なので(会社法施行規則 第121条第4号)、事業年度の途中で就任・退任した監査役が員数に含まれていると、平均は低く見えることがあります。
- 常勤と非常勤の混在: 監査役の区分の総額は常勤・非常勤の合計なので、平均値はその中間の数字になります。
- 社外役員の区分: 社外役員の総額には社外取締役も含まれるため、社外監査役だけの金額を切り出せない場合があります。
- 決議された上限との差: 第121条第5号の4で開示される総会決議の上限額は「枠」であり、実際の支給額とは別物です。
比較対象は、業種と売上規模に加えて、監査役会設置の有無や会計監査人の有無まで揃えると、上の一覧表の要素をそろえた比較になります。
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監査役の報酬の税務上の取扱い(法人税法34条)
監査役も法人税法上の役員にあたるため(法人税法 第2条第15号)、報酬が損金に算入されるかは役員給与の規定で判断します。定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与のいずれにも該当しない給与は、損金の額に算入されません(法人税法 第34条第1項)。
| 定期同額給与 | 1か月以下の一定期間ごとに支給し、事業年度内の各支給額が同額である給与(法人税法 第34条第1項第1号) |
|---|---|
| 額の改定時期 | 原則として事業年度開始の日から3か月を経過する日までに改定したものが対象(法人税法施行令 第69条第1項第1号イ) |
| 事前確定届出給与 | 所定の時期に確定額を支給する定めに基づく給与。原則として税務署長への届出が必要(法人税法 第34条第1項第2号) |
| 不相当に高額な部分 | 職務の内容、収益、使用人給与の状況、同種同規模法人の役員給与の状況等に照らした相当額を超える部分(実質基準)と、定款・株主総会で定めた限度額を超える部分(形式基準)のうち、いずれか多い金額が損金不算入(法人税法 第34条第2項、法人税法施行令 第70条第1号) |
| 使用人兼務役員 | 監査役は使用人兼務役員とされない役員に含まれる(法人税法施行令 第71条第1項第4号) |
税務の面からも「相場」が問題になるのは、不相当に高額かどうかの判断に同種同規模法人の役員給与の状況が考慮されるためです(法人税法施行令 第70条第1号イ)。また、株主総会で決めた監査役の報酬枠を超えて支給すると、形式基準により、少なくとも超過部分は損金に算入されません(法人税法施行令 第70条第1号ロ)。報酬を引き上げるときは、総会決議の枠と改定時期の両方を確認しておく必要があります。
関連コラム役員報酬の決定方法と変更時の注意点|損金算入のルールを解説▸
監査役の報酬を改定する手順
常勤監査役の新任や監査役会の設置などで報酬水準を見直すときは、次の順序で進めると手続の漏れを防げます。
- 現行の決議内容を確認する: 監査役の報酬枠を決議した株主総会の日付と上限額、対象員数を確認します。事業報告に記載している内容(会社法施行規則 第121条第5号の4)と一致しているかも見ておきます。
- 改定後の水準を検討する: 上の一覧表の要素と、同業・同規模の会社の事業報告の開示を参考に、区分ごとの水準を検討します。
- 枠の変更が必要か判断する: 株主総会で総額の上限だけを定めている場合、改定後の総額がその上限内に収まるなら、監査役の協議で配分を見直すことができます(会社法 第387条第2項)。上限を超える場合や、総会で個別の額まで定めている場合は株主総会の議案にします。
- 議案と参考書類を作る: 算定の基準・変更の理由・員数を記載し、監査役の意見があればその概要も載せます(会社法施行規則 第84条第1項)。
- 監査役の協議で配分を決める: 総会決議の後、総額の範囲内で各監査役の額を協議で決め、協議の結果を書面に残します。
- 支給開始の時期を税務と合わせる: 定期同額給与として損金算入するため、原則として事業年度開始から3か月以内に改定します(法人税法施行令 第69条第1項第1号イ)。3月決算で6月の定時株主総会で決議する会社であれば、この期間内に収まるのが通常です。
監査役の報酬で起きやすい誤り
- 取締役会に配分を一任する決議: 監査役の個別の額は監査役の協議で決めるのが会社法の建付けです(会社法 第387条第2項)。取締役の報酬議案の文言をそのまま流用しないよう注意が必要です。
- 取締役の枠に監査役分を含めてしまう: 監査役の報酬等は第387条により別に定めます。取締役の枠の中から監査役に支給する形は避けます。
- 監査費用を報酬に含めて考える: 監査に必要な費用は報酬とは別に会社へ請求できます(会社法 第388条)。報酬を抑える代わりに費用を自己負担させる運用は適切ではありません。
- 使用人分の給与を合わせて支給する: 監査役は会社の使用人を兼ねることができないため(会社法 第335条第2項)、使用人としての給与を支給する前提の設計はとれません。
まとめ
監査役の報酬は、定款または株主総会の決議で額を定め、個別の配分は監査役の協議で決めます。監査役には株主総会で意見を述べる権利があり、取締役会が配分を決める形にはなっていません(会社法 第387条)。
水準については一律の相場を当てはめるのではなく、常勤・非常勤、社内・社外、会社の規模と機関設計、監査の範囲という要素で区分し、同業・同規模の会社が事業報告で開示している総額と員数から確かめるのが確実です。あわせて、総会決議の枠と改定時期を税務上の取扱いとも整合させておく必要があります。
監査役の報酬設計や機関設計の見直しは、会社ごとの事情によって最適な形が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
会社法監査の無料見積り・ご相談はこちら参考文献
- e-Gov法令検索 会社法
- e-Gov法令検索 会社法施行規則
- e-Gov法令検索 法人税法
- e-Gov法令検索 法人税法施行令
- 国税庁 No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)
よくある質問
監査役の報酬は取締役会で決められますか。
決められません。監査役の報酬等は、定款に額の定めがなければ株主総会の決議で定め、各監査役の個別の額が定められていないときは、その範囲内で監査役の協議によって決めます(会社法 第387条第1項・第2項)。
監査役の報酬の相場はどのように調べればよいですか。
公開会社は事業報告に監査役の報酬等の総額と員数を記載するため(会社法施行規則 第121条第4号)、同業・同規模の会社の開示から1人当たりの平均を計算する方法があります。常勤・非常勤の混在や期中の就任・退任があるため、平均値は補正して読む必要があります。
監査役の報酬を増やすには毎回株主総会の決議が必要ですか。
株主総会で総額の上限だけを決議している場合、その範囲内で配分を見直すだけなら、監査役の協議で決めることができます(会社法 第387条第2項)。総額の上限を超える場合は、株主総会の決議で額を改める必要があります(会社法 第387条第1項)。
監査役の報酬は損金に算入できますか。
定期同額給与などの要件を満たす給与は損金に算入できます(法人税法 第34条第1項)。ただし、不相当に高額な部分や、株主総会で定めた限度額を超える部分は損金に算入されません(法人税法 第34条第2項、法人税法施行令 第70条第1号)。
監査の費用は報酬に含まれますか。
含まれません。監査役は職務の執行に必要な費用の前払や償還を会社に請求でき、会社は職務に必要でないことを証明しない限り拒めません(会社法 第388条)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



